第22話 あなたの言葉は私の背中を押す
青島あやめ
芽衣と同じ1年生。サックスパート。ボーイッシュな見た目をしている。いつもヘラヘラ笑っている。
私は無事、Aの部で活動することになった。中学時代から強豪校で頑張ってきたし、正直選ばれる可能性はあるとは思っていた。いざ選ばれてみると、驚きもあった。ただ、それ以上に怖いと思ってしまった。3年生が2人、2年生が2人。私が選ばれることでAメンバーに入れなかった先輩がいる。その事実に、目を背けるのは難しい。
オーディションが終わったあと、先輩たちが私を見る目が少し変わった気がした。気のせいかもしれない。入部した時のような優しい目ではないように見えた。それとも、自分の不安な気持ちに影響されているのか。
オーディション翌日。その日は祝日ではなく、授業があった。祝日と土日の間の金曜日の平日。せっかくなら休ませてくれよ、なんて考えながら授業を受けた。この後の部活から、本格的にAメンバーとしての活動が始まる。芽衣には受かった側が不安になるのは良くないと話したものの、私は不安でいっぱいである。なんという皮肉。
帰りのホームルームが終わって、部活の支度をしていると藤先生が私の前で立ち止まった。
「青島、どう。今日からの部活は。」
「…正直、不安です。」
「そりゃそうか。」
「3年生、私のこと恨んでないわけがないですよね。我慢してくれてるだけで。」
「まあ、長く頑張ってきた分悔しいだろうね。」
いつも通りにこやかに、先生は話し続けた。
「でも、青島は譲る気もない。でもこの状況は苦しいから、どうにかしたい。」
「それは、そうかもしれません。」
「良いか、青島。問題はその場で解決できればそれが1番良い。でも、お互いの気持ちが両立できないこともある。時間が解決してくれることを待たなきゃいけない。捌くだけが方法じゃない。流れに身を任せることも、賢い生き方のひとつだよ。たとえ待つのが苦しくても、だ。」
時間が解決。確かに今回の場合は、それが最適解だろう。時間が解決するのを待つ間、どう過ごすかは私が決めれば良い。
「オーディションでの青島は、良い音だった。それは保障する。胸張って頑張りなさい。」
「気持ちの整理ができました。ありがとうございます。」
この先生とは波長が合う。言葉にしていない部分も、伝わっているように感じる。何より、生徒を信じてくれる姿勢が、私には心地良い。直感で入部を決めたが、この人と出会えたことは間違いなく収穫だ。地獄のような中学時代を、この人についていけば塗り替えられるかもしれない。
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