第21話 死神
堺田芽衣
山桜やまざくら高校に入学した1年生。クラリネットパート。落ち着いた印象を持たれるが、感情の起伏は人並み。
私とあやめちゃんはいおりんの話を聞きながら、駅に向かっていた。
「藤先生、そんなこと言うんだ。」
「ね、びっくり。というかオーボエ選出0の代があったの、気になりすぎるんだけど。どんな空気だったんだろ」
「私も聞いててびっくりしちゃった〜。藤先生、そういうことしないと思ってた」
確かに、私たちが思い描く藤先生像とは異なる。オーボエを選出しない決断は無慈悲だと思う。これもほんの一例で、他にもあってもおかしくない。考え込む私といおりん。あやめちゃんが口を開いた。
「とにかく平等を徹底してるって感じなのかな。あとは、音楽に関して妥協がない。どんなに優しくても、そこはブレないのが藤先生なんじゃない?」
それを聞いて、私は妙に納得してしまった。
「先輩たちからあまり文句がオーディションに関する出ないのって藤先生への信頼からなのかな。」
「確かに〜。私たちが思ってる以上に先輩方と先生な絆、深いのかも。でもすごい。生徒からしたら死神みたいな存在なのに」
『死神』のような強い表現をする必要はないかもしれないが、運命を握られている存在なのは確かである。死神姿の藤先生を想像したらなかなかシュールだった。優しそうな中年男性の死神コスプレのアンバランスさはすごい。
「情もなしに、誰にでも平等に決断を下してくる死神。逆に怖いね〜。ひとつの失敗が命取りになるじゃん。」
確かに。私たちはこれから3年間、そんな相手と対峙しなければならない。怖さもある。だが私は別のことを思った。
「でも、そんな死神から褒められたら最高だ。」
「芽衣、意外とポジティブだね〜。」
「めいめいの考え方、ちょっとわかる!私、やる気出てきた!」
このオーディションで、藤先生への理解が少し深まった気がする。また、2人と藤先生の話をしている時に気がついたことがある。あやめちゃんが、いつも以上に笑顔なのだ。彼女にとって藤先生は担任の先生でもある。担任だからこそ、楽しそうにしているのか。何を考えているのかさっぱりわからないが、精神が大人で安定しているあやめちゃんが楽しそうなのは嬉しかった。
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