第20話 私、棚から牡丹餅ですか?
堀田伊織
ほったいおり
芽衣のクラスメイト。オーボエパート。
ふわふわキラキラ女子。
オーディションをが終わった。私は三宅先輩とともに、Aメンバーに入ることができた。てっきり、落ちるのかと思っていた。実力で三宅先輩が選ばれることは明らかだった。オーボエは私と三宅先輩しかいない。Dの部のことを考えると、私は落ちるのだと心のどこかで思っていたのかも。
練習に手を抜いていたわけではない。自分なりに、一生懸命だった。自分の100%を出すことに、全てを注いだ。それでも、『落ちて当然』と思っていた。それを自覚したのはAメンバーに選ばれてからだった。
なぜ、選ばれたのか。その答えが欲しかった。明日から、前を向くために。私はじっとしていられず、職員室に向かった。
「失礼します。藤先生。オーボエ1年の堀田です。」
「堀田か。どうした?」
「あの、オーディションのことでお伺いしたいことがありまして」
「ほう、なるほど。答えられることであれば。1度聞きましょうか」
「私、なぜAメンバーに選ばれたんでしょうか。オーボエが1人だと少ないから、という理由ですか。正直、三宅先輩より遥かに劣っているのを自覚しています。選ばれた理由が、わかりません。」
止まらなかった。話し出したら、決壊したように溢れた。
「まず、オーボエが2人必要だったのは事実だ。知っての通り三宅は上手だけれどつい最近まで1年生で、先輩についていく立場だった。そんな三宅をいきなり1人にするよりは、堀田がいた方が良い」
やはり、そうだったのか。その役割で選ばれたなら納得ができるかもしれない。
「ただ、堀田。ちょっと勘違いしてるよ」
「え?」
「そういう編成ができるのは、堀田がこちらの考えるラインを超えてきたから。そもそも、実力がなければ選ばない。」
「そ、そういうもんなのですか。」
「そういうもんなのですよ。ある程度のラインを超えなければ、編成以前に選ばない。実際に、オーボエは合格者を出さなかったこともある」
「合格者を出さなかった!?Aの部にオーボエを乗せなかったってことですか!?」
「そういうこと。無理矢理乗せることも出来たんだけどね。でも、他の楽器の人数を増やした方が有意義だ、っていう結論になった。」
藤先生がそこまで思い切ったことをしているとは驚いた。気が良く、優しそうな先生というイメージだった。オーボエが1人も呼ばれなかった時、どんな空気になったのか。想像もできない。したくない。藤先生はものすごい勇気を振り絞ったのだろう。
「改めて。堀田はちゃんと自分自身の力でオーディションに合格した。良い音をしてた。そこは自信持って良い。こう見えて、入部してからの成長とか、短い間だけどちゃんと見てるんだよ。」
藤先生の言葉が真っ直ぐと届き、泣きそうになる。
「ただ、自覚している通りまだまだ改善点は多い。相当大変だと思うけど、頑張ってください。」
「ありがとうございます...!!!」
笑顔の藤先生に、私は深々と一礼した。
「いおりん、こっち。」
「いおりん、おつかれ〜」
いつもの場所で、めいめいとあやめ様が待っていた。2人も、Aメンバーに選ばれていた。藤先生の言葉を聞いて舞い上がっている自分の気持ちと、2人への祝福を込めて、私は2人に飛びついた。
「いおりん??」
「え、なになにいおりん!どうした」
戸惑う2人に、先程の出来事について話し始めた。
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