表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/12

#5 振り返らない

書いてる時って、

楽しいんですよね。


振り返ると、小っ恥ずかしくなる。

潮風が街角を撫で、二人の距離は自然と少し開いた。

だが、互いの存在は確かに意識されている――そんな微妙な空気がリムサ・ロミンサの賑やかな街に、ひそやかに漂っていた。


エメトセルクのあの一言が、アゼムのプライドをくすぐる。

小さく唇を尖らせ、ムスッとした表情で呟く。


「あんな言い方しなくたって…」


気を取り直すように、アゼムは酒場『溺れた海豚亭』に足を運ぶ。

冒険者ギルド受付のバデロンに向かい、声を弾ませて話しかける。


「依頼を受けに来ました。何かお手伝いできることはありませんか?」


バデロンはにこやかに応じ、やや残念そうな表情で首を振る。


「よう、アゼム。申し訳ねぇ、あいにく今日は依頼はなくてな…そうだな、ギルドリーヴってのはどうだ?」


丁寧に説明されるギルドリーヴの仕組みに、アゼムの目がきらりと光る。


「チャ・モクリさんに話しかければいいのですね。わかりました、ありがとうございます!」


アゼムは軽やかな足取りでギルドリーヴ発行者、チャ・モクリのもとへ向かう。

受付の小さな窓口を前にして、少し緊張しつつも期待に胸を膨らませる。


「傭兵稼業を受注したいのですが、どんな仕事がありますか?」


チャ・モクリは新人を迎えるように微笑み、手元の書類を示す。


「新人さんかい?“索敵任務”・“捜索任務”・“追撃任務”・“懐柔任務”があるよ。どれにする?」


アゼムは一瞬考え、目を輝かせ、胸を張る。

まるで冒険の始まりを予感した子どものようだ。


「ん〜、どれにしようかな〜…決めた!捜索任務!私に任せてください!」


その声には純粋な好奇心と期待がこもり、自然と背筋が伸びる。

小さな胸の中で、冒険のワクワク感が膨らんでいくのを、アゼム自身も感じていた。


酒場を出ようとした。

その瞬間――


「うっうわぁ!!」


アゼムの胸が跳ね、思わず声を上げた。

通路の片隅に、壁にもたれかかる影がある。

目を凝らすと、そこにいたのは…。

――エメトセルクだ。

彼はじっと、冷静に、そして少し挑戦的にこちらを見つめていた。


「なっ…なんですか!」


意地を張るように、アゼムは威勢よく声を上げる。

心臓が少し早鐘のように打つのを感じながらも、負けまいと背筋を伸ばす。


不敵な笑みを浮かべ、エメトセルクは肩を軽くすくめた。


「……いや、別に」


「強いモンスターを討伐するんじゃなかったんですか!」


眉間にわずかなしわを寄せ、冷静ながらもどこか得意げに答えるエメトセルク。


「ああ…そうだな。随分と手強いモンスターでね…」


「私なんか見てないで、チョコボに乗って討伐に行けばいいじゃないですか!」


アゼムの声には、焦りと苛立ちが混ざる。

壁にもたれたまま、口元だけを微かに歪め、不敵な目でアゼムを見つめるエメトセルク。


「……ふん、やれやれ」


その冷ややかな笑みに、アゼムの苛立ちはさらに増す。


「お前…依頼を受けていたようだが、そんな貧弱で本当に大丈夫なのか?」


「あなたには、関係ない!!」


冷たく突き放すように言い放ち、アゼムは素早くその横をすり抜けた。

背中に感じるエメトセルクの視線が、余計に心をもぞもぞとさせる。

――それでも、振り返らずに前へと進むしかなかった。

最後まで、読んで頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ