#4 まだ早い
今見ると、
書き直したいっ!て
思いますね…本当に。
リムサ・ロミンサのグランドカンパニー『黒渦団:軍令部』は、喧噪と潮の香りに包まれた活気ある場所だ。
木製の通路を行き交う兵士や冒険者、慌ただしく駆ける荷運びの少年たちの声が響く。
その喧騒の中、モブハントボードの前で討伐依頼をじっと眺めるエメトセルク。
淡い光が差し込む窓際で、彼の肩越しに射す陽光が金色に輝き、まるで討伐の決意を映し出すかのようだ。
そこへ、慌ただしい足音が駆け寄ってくる。
「はぁ、はぁ……置いていくなんて、ひどいじゃないですかぁ!」
息を切らして追いついたアゼムは、紅潮した顔で胸を押さえながらエメトセルクを見上げる。
エメトセルクは肩をすくめ、淡々と答えた。
「お前がぼんやりしていたからだろ」
じとーっと彼を見つめるアゼムの瞳には、ほんの少し怒り混じりの不満と、どこか純粋な好奇心が浮かぶ。
それに気付いたのか、エメトセルクはわずかに顔を逸らし、低く呟く。
「……いや、別に」
気まずさが二人の間に一瞬漂う。
潮風に混じる港の匂い、周囲の人々のざわめきが、その沈黙を際立たせる。
エメトセルクはため息を漏らし、口を開く。
「ところで、お前…グランドカンパニーに用があったんじゃないのか?」
アゼムは周囲を見渡し、少し戸惑いながら答える。
「いいえ…違います。冒険者ギルドに用があっただけです…」
再び静寂が二人を包む。
潮風が柔らかく吹き抜け、木の床を渡る足音や遠くの歓声が微かに届く。
空気はわずかに重く、二人の距離感をそっと意識させる。
思わずエメトセルクが口を開いた。
「…ま、巻き込んで悪かったな。ギルドに戻っていいぞ」
言葉には一抹の諦めと、しかし少しの気遣いも含まれていた。
アゼムは一瞬視線を逸らし、少し小さく頷く。
その仕草に、エメトセルクは肩越しにちらりと目をやり、無言のまま小さくため息をつく。
――まったく…面倒な奴だが、放っておけん。
再びじっとエメトセルクを見つめるアゼムに、彼は眉をひそめる。
「何だ?」
「強いモンスター、倒すんですか?」
アゼムの声は少し弾み、興奮と好奇心が入り混じっているのが分かる。
「そうだが…いや、そうでもないが…お前にはまだ早い!さっさと行け!」
低く鋭い声が響く。
しかし、アゼムはそれでも視線を逸らそうとしない。
「……さっきから、何だ!」
アゼムの視線は、次第にモブハントボードへと移る。
「そのボードが気になって…」
「興味があるのか?」
彼の声には軽い皮肉が混じるが、どこか観察するような温かさもある。
「…あ…はい」
アゼムは小さく頷き、指先でボードをそっと撫でるように触れる。
「初級でもお前にはまだ早い」
警告めいた声だが、どこか見守る余裕も感じられる。
じっと見つめ返すアゼムの瞳には、恐怖や躊躇はなく、ただ純粋な好奇心が光っていた。
「見学させてもらってもいいですか?」
エメトセルクは一瞬、アゼムの真剣な眼差しを見つめ返す。
面倒くさそうに眉をひそめつつも、内心ではその無邪気さと真っ直ぐさにほだされている自分を感じる。
「…仕方ない、少しだけだ。じっと見ているだけなら許す」
そう言うと、肩越しにちらりとアゼムを見遣り、わずかに口端を緩めた。
アゼムは突然、胸に両手をぎゅっと当て、目を輝かせながら叫ぶように言った。
「本物が見たいです!お供させてください!」
エメトセルクは眉間に皺を寄せ、少し苛立ち混じりの声で返す。
「……厭だ厭だ、面倒くさい…お前、わかってんのか」
アゼムは一瞬もひるまず、力強く答えた。
「迷惑はかけません!お願いします!」
エメトセルクは目を細め、問いかける。
「お前…チョコボは」
アゼムは首を横に振り、少し申し訳なげに答える。
「チョコボ…まだです」
それを聞いた瞬間、エメトセルクは大きく息を吐き、両手を広げて威勢よく告げた。
「断る!!」
アゼムの瞳が一瞬たじろぐ。
しかし、すぐに輝きを取り戻す。
「チョコボがあればいいのですか!?」
その純粋な希望に満ちた声に、エメトセルクは後ずさりしながら呟く。
「…厭だ厭だ、そんな目で私を見るな」
一拍
「確かにチョコボがあれば一緒に行動できる。だが!お前…低レベルだろ…敵の的にされるぞ。瀕死になっても助けられないからな」
眉間のしわが深くなる。
言葉には冷静な警告が込められているが、同時に内心では、アゼムのその純粋な熱意に振り回される己を少し楽しんでいる節もあった。
首を傾げるアゼムの瞳には純粋な疑問が浮かぶ。
「あの...エメトセルクさんは、傷を癒したり、蘇生したりできないのですか?」
エメトセルクは絶句し、軽く舌打ちをして皮肉な笑いを浮かべた。
「……お前、まさかと思うが、黒魔道士をヒーラーだと勘違いしているのか?やれやれ…」
「えっ、その杖...黒魔導士のなの?!」
エメトセルクはため息をつき、杖を構えた。
「これのどこがヒーラーに見える!」
一拍
「そもそも黒魔道士はDPSだ。そいつらが使うケアルやレイズは白魔道士の呪文だぞ」
「厭だ厭だ、なんでお前はこうも無防備に間違えるんだ」
アゼムは肩をすくめ、恥ずかしそうに小さく呟く。
「勘違いしていました…すみません」
エメトセルクは赤らんだ彼女の頬を見つめ、再び肩越しにため息をついた。
「お前…そんな状態で一人でやっていけるのか?」
アゼムの瞳が鋭く光り、内側から熱い闘志が湧き上がる。
「わ…私にだってできます!誰にも負けません!」
アゼムは振り返ることなく、軽やかな足取りで一歩を踏み出す。
風を切るように走るその背中に、エメトセルクは思わず声を張り上げた。
「おい、待てっ!」
しかし、アゼムは振り返らず、潮風を切りながら冒険者ギルドの方向へ駆け出す。
その後ろ姿に、エメトセルクはどこか懐かしさを思い出す。
彼は肩を落とし、最後にもう一度、深い溜息をついた。
「……やれやれ。まったく、あいつには困ったものだ。いや、別に……放っておけないけどな」
最後まで、読んで頂き、ありがとうございます。




