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#24 重症

ノクスって…。

……。

いや…何でもない。


本当に、

何でもない。

エメトセルクは、

眠りの中、

再び、

あの夜の闇を、

駆け抜けていた。


視界には夜空、

下には無限に広がる闇。


「くそっ……!ソロル!!」


思わず叫ぶ声も、

夢の中では現実のように響く。


手を伸ばしても、

届かない。


チョコボの足元が、

ふらつき、体は落下する。


胸の奥に渦巻く焦燥、

守りたい想い。

――すべてが夢の中で、鮮やかに蘇る。


「ソロル……!」


心の中で叫んでも、

現実と同じく手は届かない。


体を支えられない。

もどかしい。

守れなかった。

後悔が胸を締め付ける。


あの時、

自分が、

もっと早く、動けていれば。


その、

後悔が、

何度も、

脳裏をよぎる。


目の前のアゼムは、

まるで、

本当に、

そこにいるかのように…。


微かに、

笑みを浮かべる。


声は出せない、

触れられない、

でも確かに存在している。


その存在が、

胸の奥の焦燥に、

わずかな温もりを与える。


「ソロル……」


夢の残像を、

胸に抱きながら、

エメトセルクは、そっと目を開く。


オルフェンは、

目を見開き声を上げる。


「おい!!エメトセルクが意識を取り戻したぞ!!」


驚きと、

安堵が混ざった声に、

皆が一斉に駆け寄る。


オルフェンは、

額に汗を滲ませつつ、

エメトセルクに、手を差し伸べる。


「お前、大丈夫か?」


ルミナは声が震え、

思わず手で顔を覆う。


「数日も眠り続けてて…本当に心配しました」


カリオンは、

眉をひそめ、視線を鋭くする。


「起き上がれるか?」


ルミナは、

言葉を濁し、手元でそっと体を支える。


「む…無理に起こすのも…」


ノクスは、

口調は軽いが、目は真剣そのもの。


「数日、飲み食いしてなかっただろ。餓死しちまうぞ」


体を起こそうとした瞬間、激痛が全身を貫いた。


「ぐっ……!」


息をつくたび、

痛みが刺さり、呼吸が乱れる。


「言ったそばから、まったく…」


アシエルは、

肩をすくめる。


その目は、

痛みの走る、

エメトセルクをしっかり捉えている。


「チョッ…チョコボは?」


顔を歪め、

手で額を押さえながら息を整える。


心臓が早鐘のように打つ。


カリオンは、肩を落とす。

視線を外し、小さく呟く。

声に重みが滲む。


「お前のチョコボ、かなりの重症だ」


ルミナは、

顔色を見て声を荒げた。


「エメトセルクも重症ですよ!」


ダスクランは、眉をひそめる。


少し微笑みを、

交えて安心させるように言う。


「死んでねぇ。冒険者ギルドに預けてあるから安心しろ」


チョコボのことを、

思うだけで、胸が張り裂けそうだ。


――ごめん……守れなかった……。


仲間の手が、

自分を支え、

現実に引き戻してくれる。


優しさと、

焦燥が入り混じる。


エメトセルクは、

再び立ち上がろうとする。


ノクスは、

そっと水差しを差し出しながら、

息を呑んむ。

エメトセルクの反応を待った。


「飲めるか?」


「誰か、軽く食べられそうなものを持ってきてくれ!」


声が、

少し上ずり、

必死さがにじむ。


皆が、

彼を囲むようにして立ち、

目の前の、

小さな動き一つさえ、

敏感になっていた。


その視線には不安と、

失わせまいとする強い想いが宿っている。


――まだ、立ち上がらねば……守るために……。


仲間の、

視線を受けながら、

エメトセルクはゆっくりと体を起こす。


ふと、

周囲を見渡した。


エメトセルクの視線の先に、

メレアスの姿がなかった。


その瞬間、

胸の奥が、

ぎゅっと、

締めつけられるような感覚が走る。


エメトセルクは、

焦る指先で腕をさすり、

やや震える声で問いかけた。


「おい、メレアスは……どこだ?」


その問いに、

仲間たちは一斉に顔を伏せた。


誰も、

視線を合わせようとしない。


唇が、

小さく動くだけ。

はっきりした言葉は出てこない。


沈黙が重い。

垂れ込める。

室内の空気が一層冷たくなる。


エメトセルクは、

わざとらしく肩をすくめた。


小さく、

苦笑を浮かべる。


「…厭だ厭だ。お前らが黙り込むと、本当に困るんだ」


声は、

皮肉めいているが、

その奥には、わずかな焦りがにじんでいた。


「事情があるんだろ?いいから、はっきり話してみろ」


ようやく、

事情を口にした仲間たちの声に、

エメトセルクの瞳は見開かれ、心臓が跳ねるように高鳴った。


「……意識不明の重症だと?!」


カリオンは、

顔をしかめ、

唇を強く噛み締める。


拳を、

膝に叩きつけるように握りしめる。


低く、

絞り出すように言った。


「アイツは……化け物だ。相手にしたら、俺たちじゃ絶対に殺される」


言葉が震え、

悔しさと恐怖がないまぜになって響く。


アシエルは、

その言葉に、

反発しようとするが、声が震える。


「ビビってんじゃないよ!」


ルミナが、

静かに口を開く。


「暁の血盟が、ここへ駆けつけてくれるそうです」


その言葉に、

エメトセルクの眉がぴくりと跳ねる。

唇をかすかに噛む。


「暁……解散したんじゃなかったのか?」


ダスクランが、肩をすくめる。

落ち着いた声で答える。


「わざわざ俺たちのために再結成したらしいぜ」


エメトセルクは、

ゆっくりと呼吸を整える。


拳を、

軽く握り締めた。


「……やれやれ、英雄がここへ来ると?」


彼の瞳は、

微かに揺れ、

決意と不安が交錯する。


ダスクランは、短く頷く。


「らしいな」


周囲に、

静寂が訪れる。


空気は、

緊張で張り詰める。


エメトセルクは、肩をすくめた。

顎を軽く手で押さえ、目を伏せた。


そして、

小さく、

震える声で囁く。


「ソロル……」


拳を、

強く握りしめた。


しばし、

沈黙が場を支配する。


エメトセルクは、

低い声で問いかけた。


「……ところで、どうしてお前たちがここに?」


アシエルは、

肩をすくめ、軽く笑う。


「悪かったかい?」


エメトセルクは、

鋭い視線を向ける。


「出ていけとは言っていない。ただ、ここにいる理由を聞いているだけだ」


短い間が過ぎ、

重い沈黙が部屋を包む。


アシエルは、口を開いた。


「儀式は成功したはずなのだが…何かがおかしい」


オルフェンが、

間を置いて問いかける。


「まった…そういや、聞いてなかったな。その儀式って、何のことだ?」


アシエルは、

ため息をつく。

声を落とした。


「何者かに干渉され――アゼムは本来の姿ではないんだ。それを解放しただけだ」


エメトセルクは眉をひそめる。


「どういうことだ…」


アシエルは、

低くつぶやく。


「干渉していた宿主を失い、暴走していると思われる」


カリオンが、

冷静に言った。


「今のところ、ここ以外被害は出ていないらしい…」


ルミナは息を飲み、

視線を床に落とした。


「操られていた…」


オルフェンが、

小さく呟く。


「止めるには……殺めねばならないのか?」


カリオンが、

呆れた声で返す。


「お前、マジで空気読めよ…」


エメトセルクは、顔をしかめる。

声を震わせた。


「……やめろ」


――ソロルを…そんなこと、許せるはずがない…。


ダスクランは、肩をすくめた。

冷静に提案する。


「まずは接触が先だろ。どうするかはその後にしようぜ」


エメトセルクは、短く頷く。


「協力してくれる、という意味で捉えて構わないか?」


アシエルは、

威勢よく応じる。


「ああ!!」


ノクスも、

小さく笑う。


「可愛いアゼムちゃん、ほっとけないし」


エメトセルクは、

鋭い視線をノクスに向ける。


ノクスは、

ビクッと肩をすくめた。


「あ〜こわ!」


カリオンは、

茶化すように言った。


「今はお前の療養優先!ボロボロじゃ何もできないだろ!」


オルフェンも、力強く続ける。


「あと作戦会議!!」



---



――トントン


扉を叩く音が、

静まり返った室内に響いた。

誰かが訪ねてきたらしい。


ルミナが、

視線を扉に向け、身を乗り出す。


「誰だろう…?」


ノクスは、

くすりと笑い、

軽く意地悪な口調で言った。


「アゼムだったりして」


カリオンたちは、

瞬間的に表情を引き締める。


もし、

本当に、

アゼムなら危険だ。


武器を構え、

部屋の空気が張り詰める。


オルフェンが、一歩踏み出す。


「俺がでる!」


カリオンは、

低く呟く。


背後で体を低く構えた。


「頼んだ…」


指先が、

少し震えるのを感じながら、

オルフェンが扉に手をかける。


扉が開く。


そこにいたのは、

暁の血盟。


アルフィノは、

慎重に、

周囲を見渡しながら、声をかける。


「…突然すまない。噂を聞きつけて駆け付けたのだけど…君たちで間違いないかい?」


アリゼーは、

眉をひそめ、手を軽く武器に添える。


「あなた達、アシエンって…聞いていたけど…」


ノクスが笑う。


「アシエルの聞き間違いじゃなくって?」


アシエルは、

ゆったりと答えるが、視線は鋭い。


「私の名前だが…」


ふとベッドに、

腰掛けるエメトセルクを見て、息をのむ。


「…エメトセルク?」


アリゼーは、

武器を握りしめ、

警戒を崩さない。


カリオンは、

眉をひそめる。


エメトセルクを見つめる。


「お前…なんかしたのか?」


エメトセルクは、

肩をすくめ、短く答える。


「…いや、別に。特に何もしていない」


ヤ・シュトラは、

手を軽く前に出し、

落ち着かせるように声をかけた。


「大丈夫よ、彼は普通の人間よ」


ウリエンジェは、

慎重に言葉を重ねる。


「“星界から転生した”ということですよ…きっと他の方たちも…古代人だった。もしくは、アシエンだった可能性も…」


オルフェンが、首をかしげる。


「なんの話してんだ?」


アシエルは、

少し重みを持たせ、断片的な記憶を口にする。


「確かにそうだが…私らは記憶が欠けてるんだ」


その言葉に、

皆が目を見開き、

体が硬直する。


「え…俺達アシエンなの?」


「やめろよ…第七霊災を起こした奴らと一緒にされたくない」


突然、

ドア付近に立っていた英雄が

エメトセルクに駆け寄る。

強く抱き寄せた。


「なんだ!!」


肩を跳ねらせ、

驚くエメトセルク。


「…厭だ厭だ。私は、男に抱きつかれる趣味はないんだがな…」


肩を揺らして笑う、カリオン。


ルミナは、

楽しそうに、声を上げる。


「英雄さんに抱きつかれるなんて光栄じゃないですか!」


――厭だ厭だ。恥ずかしい…。


カリオンは、

英雄に椅子を近づけ座らせた。

最後まで、読んで頂き、ありがとうございます。

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