#20 バカな
当時、
結構悩んだんですよね。
部屋の、
扉が開く。
入ってきたのは、
メリアスだけだった。
「ア・ゼ・ム〜!ただいまぁ〜!」
微笑む、
メリアス。
アゼムへ、
駆け寄って抱きつく。
「おかえり〜!あれ? エメトセルクさんは?」
アゼムは、
くすぐったそうに体をよじる。
どこか、
不安げな視線。
メリアスは、
視線を逸らす。
少し、
言葉を考え、誤魔化した。
「ああ、飲み物を頼んでくるって!」
「へぇ…そうなんだ…。で?エメトセルクさんとは何話してたの?」
アゼムは
不審に思う。
「な〜いしょ!」
メリアスに
ウィンクされた。
思わず、
アゼムは拗ねる。
「えぇ〜!ずるい!」
アゼムは、
考え事をしながら、
メレアスに背を向けた。
「飲み物かぁ〜…」
――エール飲みたい…追いかけようかな?
静寂。
ほんの数秒、
それだけの間だった。
次の瞬間。
空気が裂ける音。
白く輝く鎖が現れた。
生き物のようにうごめく、
アゼムの体を強烈な力で絡め取る。
「な、なにこれっ!動けないっ!メレアス!助けて!」
必死にもがく。
魔力の鎖は、
逃れられぬ力で、アゼムを捕える。
胸を締め付けられ、
息が詰まる。
動きはままならない。
悲しげな、
眼差しを向けるメレアス。
小さく呟いた。
「ごめんね…」
アゼムの叫びも届かぬまま、
白く輝く鎖に導かれ、
闇の中へと連れ去られていく。
逃れられない、
現実に打ちひしがれ、
アゼムはただ闇の中へ消えていった。
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夜に、
差し掛かる、
夕暮れの廊下。
薄橙の光が差し込む。
舞う埃がきらめく。
エメトセルクは、意識を取り戻す。
宿屋の従業員に支えられながら、ぼんやりと周囲を見渡す。
「お客様!大丈夫ですか!?」
「……ここは……ぅ゙……!」
全身に、
痛みが走る。
拳を、
硬く握る。
――メレアスめ……絶対に許さん……。
だが、
次の瞬間、
瞳が大きく見開かれた。
「――ソロル!!」
痛みなど忘れ、
身体が勝手に動く。
廊下を、
駆け抜け、
扉を開け放つ。
しかし、
そこにいるはずの、
アゼムの姿はもうなかった。
膝から、
崩れ落ち、
床に手をつく。
「そんな……バカな……」
静寂が降りる。
残されたのは、
風に揺れるカーテンと、荒い息だけ。
冷たい孤独だけが、
寄り添うようにそこにあった。
エメトセルクは、
ゆっくりと立ち上がる。
「……ソロル……」
掠れた声が、
虚空に溶けていく。
――落ち着け。冷静になれ……。
深く息を吸い、
胸の奥で、暴れる鼓動を押さえ込む。
目の前の現実を、
受け入れるには、
あまりにも唐突すぎた。
だが、
立ち止まっている暇などない。
この先は、
一人では到底突破できない。
仲間の力が必要だ。
――いや、仲間がいなければ…。
生還の可能性は限りなくゼロだ。
震える指先で、
リンクパールに触れる。
かすかに、
唇を噛みながら、
仲間たちの名を呼んだ。
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日は落ち、
夜の賑わいが満ちる、
酒場『クイックサンド』
人々の笑い声と、
杯の音が交じり合う中、
片隅の席で仲間たちが顔を揃えていた。
ルミナは、
再会の喜びに、
笑顔を弾ませる。
「エメトセルク、お久しぶりですね。アゼムさんって、どんなお方なんです?」
エメトセルクは、
耳を熱くし、視線を逸らした。
「……くだらん」
くすりと、
笑うルミナ。
「ふふっ、相変わらずですね。で、アゼムさんは今どちらに?」
その問いに答える前に、
隣から賑やかな声が飛び込んできた。
「お、お前……様になってんじゃねーか!」
「まあな!……って、お前、いつの間にモンクになったんだよ!」
オルフェンとカリオン。
久々の再会に、
少年のような笑いを交わしている。
ルミナは、
呆れたように頬杖をついた。
「……緊張感のない人たちですね」
エメトセルクは腕を組む。
ため息。
「やれやれ、相変わらずだな」
そう言うと、
彼は椅子を引いて立ち上がった。
「お前たち、いつまでそうしているつもりだ」
カリオンは、
ハッとして慌てて駆け寄る。
「ああ、悪い!」
オルフェンも、
頭を掻きながら笑う。
「ごめん!ごめん!」
二人はようやく、
席に腰を下ろした。
賑わう酒場のざわめきの中
――作戦会議が、静かに始まろうとしていた。
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