#15 お前という奴は
やばい…
書くことが…
思いつかない…
――チラッ
アゼムは、
エーテライトを開放しながら、ザル回廊へ向かった。
マーケットに到着すると、
色とりどりの商店が並ぶ。
活気ある声や香ばしい香りが辺りに満ちていた。
エメトセルクは、
眉間にしわを寄せ、低く呟く。
「エーテライ……」
その言葉は、
アゼムの勢いにかき消される。
「あ、見つけた!!」
彼女は、
駆け出し、足音が石畳に響く。
通行人が、
驚き、振り向くほどだ。
「……やれやれ」
エメトセルクは、
ため息をつく。
呆れた表情で、
マーケットボードの前に立つ。
――本当に落ち着きのないやつだな。
アゼムは、
全速力でエーテライトに駆け寄り、手をかざす。
「不思議だな…力がみなぎる感じ…」
指先から、
広がる淡い光。
クリスタルの、
透き通った表面を柔らかく照らす。
思わず両手を触れ、
ひんやりとした質感に触れた。
リムサで
何度も見てきたはずなのに。
新しいエーテライトを
解放する時は、冒険心をくすぐられる特別な瞬間だった。
胸が高鳴り、
思わずその輝きに見入ってしまう。
エメトセルクは
小さく鼻で笑う。
マーケットボードの前で品定めを始める。
素材の値段を見て眉をひそめる。
すぐに購入し、
手際よく装備の製作に取りかかった。
鉄の匂い。
木材の香り。
革の手触りが混ざり合い。
作業場には
生々しい活気が漂う。
アゼムは、
興味津々で隣に屈み込み、顔をのぞき込む。
「なに作ってるんですか?」
しかし、
エメトセルクは作業に集中しており、反応はない。
アゼムは、
少ししらけた顔で、目を細め呟く。
「……無視ですか」
真剣な横顔のエメトセルクに、
アゼムの胸がじんわり熱くなる。
思わず顔を赤らめ、
照れくさい気持ちが混ざった。
やがて、
エメトセルクは仕立てた装備を次々とアゼムに手渡す。
持ちきれないほどの量だ。
「えっ!?そんなに作ってくれるんですか!?」
エメトセルクは、
静かに、しかし力強く答えた。
「当然だろう。中途半端な装備で戦えると思うな」
その声には、
軽い苛立ちと同時に、
アゼムへの確かな信頼が混ざっていた。
アゼムは渡された装備に戸惑い、
手に取りながら目をぱちぱちさせる。
「あの…これ、どうすれば…」
一通り作り終えた。
エメトセルクは、
立ち上がり、軽くため息をつく。
「とりあえず…所持品に仕舞っておけ」
その声は、
淡々としている。
どこか指示の重みを帯びていた。
エメトセルクは、
元の装備に着替え、身だしなみを整える。
肩の角度を直し、
手首の装具を確認する。
整った姿勢の彼は、
見るからに戦いに向けた準備が整った大人の姿だった。
エメトセルクは、
エーテライトへ歩き出す。
「……やれやれ、次は宿屋だ。置いていくぞ」
振り向かず、
アゼムがついてきていると信じていた。
しかし、
光の中で、
後ろに、
アゼムの姿がないことに気づいた。
その瞬間、
眉をひそめるも、考える間もなく転送が始まった。
――しまった…。
一方。
アゼムは、
置き去りにされたことに気づき、瞬間的に血の気が引く。
「なっ…!ひどーい…!!」
声と足音が石畳に響く。
必死に、
後を追おうとするが、光の奔流が行く手を阻む。
エメトセルクは、
光の中、わずかに体を固くし冷や汗を浮かべる。
考える暇もなく、
次の瞬間を見届けるしかなかった。
――こりゃ怒らせたか…厭だ厭だ。
「宿屋ってどこに飛べばいいのよ!一か八か…冒険者ギルドへ」
アゼムは、
イライラしながらエーテライトに手をかざし、後を追った。
淡い光が、
体を包み込み、視界が一瞬白く光る。
光が消えた瞬間、
目の前には冒険者ギルド前のエーテライトがあった。
「……うわ、早っ!」
まだ、
光の余韻で目を眩ませながら、アゼムは周囲を見渡す。
「あれ……居ない」
――場所間違えた??
慌てと焦りが入り混じり、
思わず口元をへの字に歪める。
一方。
エメトセルクは、
眉間にしわを寄せる。
エーテライトを
じっと見つめたまま深いため息をつく。
――くそっ…いつもの癖でやってしまった…。
焦りが、
心の奥で芽生える。
手早く、
エーテライトに手をかざす。
マーケットへ戻った。
だが、
周囲を見渡してもアゼムの姿はない。
人混みに紛れたのか、
あるいはどこかへ行ってしまったのか。
みるみる、
顔色が青ざめていく。
――あいつ…じっとしてればよかったものを…。
とうとう、
二人ははぐれてしまった。
一方。
アゼムは、
念のため冒険者ギルドへ足を運んだ。
エメトセルクの姿がないか、
周囲をキョロキョロと見渡す。
「お!宿屋発見!」
胸をなで下ろすが、
ふと視線を巡らせると、彼の姿はどこにもない。
――あってたのに…アイデネウスは居ない。どういうこと?
心臓が、
早鐘を打つ。
焦りと不安が入り混じる。
二人の、
心の中で、
それぞれの問いが交錯する。
――探す?
それともこの場に留まる?
――厭だ厭だ。
あいつを探すか?いや、この場に留まるべきか……。
アゼムは、
素早く答えを出した。
「エール一つ!」
その口ぶりには、
焦りながらも楽観的な性格が滲む。
一方。
エメトセルクは、
内心でため息をついた。
――仕方ない……捜索するか。
「ソロル!!どこだー!!」
街中を駆け出す。
石畳を叩く靴音が、
焦りの色を帯びて響いた。
息を切らし、
額に汗が滲む。
「ソロルは居ないか!!」
怒鳴り声が、
ギルドの中に響き渡る。
カウンターの奥。
――呑気にエールを傾けていたアゼムが振り返る。
「あー!エメトセルクさん……遅いですよぉ〜」
その瞬間、
安堵と怒りが同時に、
エメトセルクの胸を突き上げた。
――無事だったか。まったく……いや、そんなことより!!
ドスッ ドスッ
床を踏み鳴らし、
テーブルの前まで詰め寄る。
バンッ!
乾いた音が響き、
ジョッキの中身がわずかに跳ねた。
エメトセルクは、
眉間に皺を寄せ、声を押し殺す。
「……お前という奴は!!」
声が低く震え、
抑えていた感情が溢れ出す。
「探し回ったんだぞ!市場に居ないから、てっきり……!」
途中で言葉が詰まる。
アゼムは、
ムスッとした顔で言い返した。
「アイデネウスが宿屋に行くって言ったんですよ?私を置いていったのは誰ですかぁ?」
エメトセルクは言葉を失う。
アゼムは
不服そうに腕を組み、続ける。
「最初は場所を間違えたと思いましたよ。でもギルドに宿屋があったから、ここから動かない方がいいと思って……」
正論すぎる。
エメトセルクは、
頭を押さえ、深くため息をついた。
「……厭だ厭だ。本気で心配した俺が馬鹿みたいじゃないか」
アゼムは、
エールを飲み干し、口元を軽く拭って立ち上がる。
「宿屋行くんでしょ?置いてくよ」
通りすがりざまに、ニヤリと笑いかけた。
仕返しなのか、
それともただの冗談なのか。
エメトセルクは、
何とも言えない気持ちになる。
肩を落としながら後を追う。
アゼムは、
宿屋のカウンターへ歩み寄る。
後ろ手に腕を組んで声をかけた。
「お部屋一つお願いします!」
宿屋の主が、
顔を上げて尋ねる。
「お一人ですか?」
アゼムは、
にっこり微笑み、迷いなく答える。
「二人です」
宿屋の主は、
柔らかく笑みを返し、さらに問う。
「どのタイプのお部屋にしますか?」
アゼムは、
少し考えて呟いた。
「静かな部屋がいいなぁ」
宿屋の主は、
頷き、台の上に鍵を置く。
「承知いたしました。こちらが鍵になります」
アゼムは、
鍵を受け取り、軽く手を振った。
「ありがとうございます!」
宿屋の主も、
手を振り返しながら微笑む。
「ごゆっくり」
部屋に入ると、
アゼムは荷物を下ろす。
エメトセルクは、
深い息を吐きながら、
ベッドに腰を下ろした。
最後まで、読んで頂き、ありがとうございます。




