#13 置いて行かないで
『前書き』
毎度何を、
書けばいいのか…悩むんですよね。
「準備万端です!いつでも出発できます!」
エメトセルクは黙ったまま、じっとアゼムを見つめていた。
――なんでこんなに無言で見てくるんだろう…。
胸の奥がちくりと痛む。
アゼムは少し戸惑い、思わず自分の服装を改めてチェックする。
――寝癖もないし…服も変じゃない…でも…やっぱり何か変かな…?
自分の心臓の速さに気づき、頬が熱くなる。
「お前…いい加減、装備を更新したらどうだ?」
「いや…だ…ダサいんだもん」
深いため息をつき、扉の方へ振り返るエメトセルク。
「……そうか。お前と一緒に行動するのは、やめるべきだな」
その声には苛立ちと、しかしどこか諦めきれない優しさが混ざっていた。
「!? 嫌だ!!ちゃんと装備します!!」
涙をこらえきれず、声が震える。
心の中で叫ぶ、
――行かないでと。
扉に手をかけ、去ろうとした瞬間、後ろから強く抱きしめられ、アゼムの小さな体がぶるぶる震える。
「行っちゃ…嫌だ…」
抱きしめる腕の力に、涙とともに、ほっとする安心も混じる。
心臓がぎゅっとなるほどの近さと、言葉以上の想いが、二人の間に静かに流れた。
胸がぎゅっと痛む。
「…置いていくぞ」
子供のように泣き出すアゼム。
「置いていかないで…」
振り返り、そっと頭を撫でる。
軽くため息をつきながらも、声には優しさが滲む。
「これからウルダハへ行く。ついて来い」
その声に、自分でも気づかぬほど胸の奥が熱くなる。
「あっ、はい!!」
涙顔が一気に輝き、元気を取り戻す。
小さく笑うアゼムの顔を見て、胸の奥がじんわり温かくなる。
この小さな笑顔のためなら、どんな疲労も耐えられる――そう思った。
アゼムの手をそっと取り、握り返す。
力強く、でもぎこちない温もりが伝わってくる。
「ほら、行くぞ」
低く告げる声に、アゼムは小さく頷いた。
窓から差し込む柔らかな朝の光に、二人の足音が床に淡く映る。
ぎこちない歩幅を合わせながら、時折アゼムの指先が触れるたび、胸の奥がじんわり熱くなる。
この距離感も、二人にとって心地よいリズムなのだと、エメトセルクは静かに感じていた。
「……あの、アイデネウス?」
少し不安げに声をかけるアゼム。
「何だ?」
振り返らずに答える。
「一緒にいてくれて、嬉しいです」
小さな声に、ほんのり笑みが零れる。
その言葉に、胸の奥が少しだけ柔らかく緩むのを、エメトセルクは感じた。
「…くだらん。だが、俺も悪くない」
少し照れくさそうに答えながら、握った手をほんの少し強く握り返す。
互いの指先に伝わる温もりが、言葉以上の安心感を与えていた。
朝の光に照らされながら、二人は肩を寄せ合い、少しずつ歩幅を揃えて進む。
未来に何が待っていようとも、今はただこの瞬間の温もりに満たされていた。
互いの存在が、言葉よりも確かに心を満たしていることを、静かに感じながら。
第1章 完




