#9 見つめる
Soraで、
観る小説作ってる時は…
――すごく、楽しかった。
通された部屋には、ランプの淡い灯りと、中央に並んだダブルベッドが一つ。
エメトセルクは黙ってアゼムを抱きかかえ、奥まで運んでベッドの端に腰を下ろす。
「……やれやれ」
小さくつぶやき、もたれかかってくる彼女の肩に視線を落とした。
「おい、いつまでそうしている。……自分で横になれないのか?」
アゼムは小さく息を吐き、かすかに頷いた――が、結局またエメトセルクの腕にもたれたままだった。
彼は目を細め、ほんの一瞬だけ、笑うような、呆れるような表情を浮かべる。
「……厭だ厭だ。まったく、手のかかる奴だ」
その言葉に、アゼムは片目を開き、不敵な笑みを浮かべた。
「…ふふ、さぁどうかしら?」
――寝たフリをしていたのか、それとも本当に寝ていたのか。
そう思った瞬間、アゼムは伸びをして勢いよく立ち上がる。
「うんしょ…シャワー浴びに行ってきます!今の時間ならまだ空いてるだろうし」
肩をすくめながら、エメトセルクは小さくぼやく。
「……やれやれ。振り回されるこっちの身にもなってくれ」
アゼムを見送ったあと、ふと力が抜けたように背中からベッドへ倒れ込む。
――久しぶりに、あれを使ったな。
胸の奥で小さくつぶやく。
疲労と安堵が同時に押し寄せ、まぶたが自然に落ちていく。
重力に引きずられるように、意識は静かに闇へ沈んでいった。
しばらくして。
アゼムが部屋に戻ってきた。
「ただいま〜……」
ベッドで仰向けに眠るエメトセルクの姿を目にし、その無防備な寝顔に思わず胸がじんと熱くなる。
そっと近づき、見つめる。
椅子を引き寄せて腰を下ろし、しばし黙って眺め続けた。
やがて立ち上がり、さらに顔を覗き込んだ時、乾ききっていない髪から雫がこぼれ、頬に落ちた。
エメトセルクがうっすら目を開け、かすれた声で呟く。
「……何だ」
「うおっ! いや〜、寝顔がかわいいなって思って……」
シャワー上がりのアゼムから漂う湯気と香りに、エメトセルクの胸がわずかにざわめく。
理性で押さえ込もうとしながら、視線を逸らす。
「……そんなに見つめられると、困るんだが」
「シャワー浴びると、サッパリして気持ちいいですよ!」
エメトセルクはベッドから身を起こし、ため息まじりに肩をすくめた。
「ああ……そうだな」
言葉を短く残して立ち上がり、アゼムの横を通り過ぎて扉へ歩き出す。
振り向くことなく、ひらりと手を振った。
――あの手の振り方、何だろう。懐かしい気持ちになる……。
小さく首をかしげながら、アゼムはただその背中を見送った。
窓から差し込む月の光が、静かに部屋を満たす。
柔らかな輝きが、二人の間に残る余韻を静かに包み込んでいた。
聴く小説の創作は、
想像以上に難しかったです。




