第十九話「三年分の朝」
復興作業が始まって三日が経っていた。
瓦礫を運ぶ。石畳を並べ直す。使える木材と使えない木材を選り分ける。そういう仕事が、朝から日暮れまで続いた。指揮を取るのはディルクで、荷運びで鍛えた段取りの良さが、こういう場面でも働いていた。混成隊の数人が残って手伝いに加わり、村人たちも傷を抱えたまま動ける者は動いた。村は少しずつ、元の形を思い出そうとしていた。
ジャンヌも作業に加わっていた。
白銀の鎧ではなかった。騎士団の紋章を外した、シンプルな作業着に着替えていた。ブロンドの髪を後ろで束ね、焦げた木材を黙々と運ぶ。「ジャンヌちゃんが」と戸惑う村人たちを「今日は私もただの人手です」と笑って制し、さっさと仕事に戻った。
夜久はジャンヌの隣で作業をすることが多かった。
二人とも、無口だった。作業の音だけがある。木材が地面に落ちる音、石が積み重なる音、遠くで子どもの声。その繰り返しの中に、ごく自然に、二人でいた。
その日の午前。瓦礫を選り分けながら、夜久は聞いた。
「ジャンヌは、戦場に出て何年になりますか」
「三年、少し前になります」
とジャンヌは言った。
「十六で村を出て、十七の冬に最初の戦場に立ちました」
夜久は瓦礫を持ち上げながら、その言葉を受け取った。三年。自分と蒼依がこの世界に来てまだ数ヶ月だと思うと、三年という時間の重さが、違う質感を持って届いた。
「聞かせてもらえますか。もし話せるなら」
ジャンヌは手を少し止めた。持っていた木材を、静かに下ろした。
「……ずいぶん長い話になりますが」
「構いません」
ジャンヌは空を見た。雲が一つ、ゆっくりと流れていた。それから夜久を見た。
「……その前に、一つ聞いてもいいですか」
「どうぞ」
「蒼依さんと話すとき、こういう話し方はしませんよね」
夜久は少し考えた。
「……しません」
「でしたら、そちらの口調で構いません。聞きやすいほうで」
「わかった、ありがとう。そのほうが楽だから助かるよ」
と夜久は言った。
「私はこちらのほうが話しやすいので、変えませんが」
言いながら、また木材を持ち上げた。
「では、作業をしながら」
話し始めたのは、それを運び始めてからだった。




