第十八話「煤と星と、朝のはじまり」④
村の広場に、人が集まり始めていた。
帰ってきた村人たちと、消火を終えた混成隊と、残っていた村の住人たちが、少しずつ顔を合わせていた。泣いている者もいた。笑っている者もいた。そのどちらでもなく、ただぼんやりと村の惨状を眺めている者もいた。
蒼依が広場の端を歩いていると、ジャンヌが近づいてきた。
蒼依はジャンヌを見上げた。白銀の鎧、ブロンドの髪、コバルトブルーの目。グランヴェルドで見てきた中で、最も「この世界の人間」らしいと感じるような出立ちだった。
「星川蒼依さん、ですね」
とジャンヌは言った。
「あ、はい」
と蒼依は言った。
「夜久から聞いていました。青い短い髪の、少し変わった服を着た、という」
「……変わった服」
と蒼依は繰り返した。
「この世界では、珍しい格好です」
とジャンヌは言った。声に笑いの気配があった。
「見た目では分かりませんでしたが、ずいぶん腕が立つと聞きました。砦の頭目を一人で倒したとか」
「ジャンヌさんが知ってるんですか、それ」
「夜久が話してくれました。突きの内側に踏み込んだのが良かった、とも」
蒼依は夜久の方を見た。夜久は少し離れた場所でディルクと話していて、こちらを見ていなかった。
「……あいつ、何を人に話してるんだ」
「良い評価だったと思いますよ」
とジャンヌは言った。
「それはわかってるんですけど」
蒼依は少し複雑な顔をして、それから笑った。ジャンヌも笑った。峰打ちから始まった奇妙な縁が、今この瞬間、別の形でつながっていた。
「お世話になりました」
と蒼依は言った。
「ジャンヌさんが旧砦に向かってくれていたから、私も踏ん張れた気がします」
「それはこちらも同じです」
とジャンヌは言った。
「あなたが村人たちを逃がしてくれたから、砦の中は混乱していた。おかげで夜久が動きやすかったはずです」
蒼依はしばらく黙った。
それから「……そういうことにしておきます」と言った。
「事実です」
二人はしばらく、広場の様子を並んで眺めた。初めて言葉を交わした二人が、同じ方向を向いて立っている。その自然さが、少し不思議だった。




