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第八話「ただいま」④
村人たちが集まってきた。
捕虜の中にリーフェル村の者が二人いた。
半月前から行方不明になっていた荷運びの男と、リナの母親だ。
二人の顔を見た瞬間、村人たちの間からどよめきが上がった。
男の妻らしき女性が人垣を掻き分けて走ってきて、夫の名前を呼んで抱きついた。
それを見た周りの者たちが、涙をぬぐったり、空を仰いだり、隣の人間と肩を叩き合ったりした。
自警団の男が夜久の前に来て、深く礼をした。背の高い、四十がらみの男だった。
「あんた一人でやったのか」
「褒められた作戦じゃない」
と夜久は言った。
「運が良かっただけだ」
男は夜久の腰の影桜を見た。黒い鞘の刀。それからもう一度、夜久の顔を見た。この少年が一人でやったのか、という顔だった。何かを言いかけて、やめた。言葉では足りないと思ったのかもしれない。
代わりに、もう一度深く頭を下げた。
夜久は短く「気にするな」と返した。それ以上の言葉は出てこなかった。出す必要もないと思った。
村人たちの笑顔が、今夜の答えだった。




