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第八話「ただいま」

 リーフェル村の門が見えたのは、空がすっかり暮れて星が出始めたころだった。


 夜久が先頭に立って、七人の捕虜たちが続いた。森を抜けて街道に出てからは、足を痛めた男のペースに合わせてゆっくり歩いた。急かすことはしなかった。

 砦から逃げ出した直後こそ全力で走ったが、森を抜けたところで追手の気配は消えていた。今は体力を温存しながら進む方がいい。


 全員、無言だった。

 疲労と安堵と、まだ消えない緊張が入り混じったような、そういう沈黙だった。

 時折、足を痛めた男が呻いた。若い男が黙って肩を貸し続けた。

 リナの母親は夜久の後ろを歩きながら、一度だけ「ありがとう」と小さく言った。夜久は頷いただけで、それ以上は何も言わなかった。


 門が近づいてきた。松明を持った自警団の男が二人立っていた。近づいてくる人影を見て、一人が槍を構えかけた。もう一人が目を細めて、それから大きく息を吸った。


「……帰ってきた。帰ってきたぞ!」


 声が村の中へ飛んでいった。

 門が、開いた。夜の空気の中に、村の明かりが溢れてきた。


 人影が二つ、門の内側から飛び出してきた。ゼータと、蒼依だった。


 蒼依が夜久の姿を見つけた瞬間、速度を上げた。そのまま真っすぐ走ってきて、夜久に抱きついた。勢いのまま、夜久の胸に顔を埋めた。


「よかった」


と蒼依は言った。くぐもった声だった。


「本当に、よかった」


 夜久は少し面食らったが、抵抗しなかった。

 蒼依の肩に手を置いて、短く「ああ」と言った。


 ゼータが隣に立って、夜久を見た。


「無事」


と言った。確認するような、それでいて安堵しているような、短い一言だった。

「ああ」と夜久はもう一度言った。


 蒼依がゆっくりと体を離した。目が赤かった。でも笑っていた。

 そのとき、村の奥から足音が聞こえてきた。

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