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王都のギルマス

 ゼント達は昨日ギルマスに言われたように9時頃に王都のギルドに来ていた。


「おい、あの3人組の美女凄くないか?」


「ああ、あの優しそうな子、まるで女神みたいに美しいな。あんな子と一緒にパーティ組めたら最高だろうな。」


「いや俺はあの茶髪の猫耳の子、ボーイッシュでいいな。そういや、夕べ西の通りで暴れていなかったか?」


「いや、俺はあのエルフの姉ちゃん。あの透き通るような肌と整った顔立ち、それとすらりとした肢体。ああ、頼む、そのヒールで俺を・・・。」


「いや、お前そんな趣味があったのか・・・。」


「それにしてもあんな美女3人組のパーティ見たことかるか?」


「いや、俺は無いな、何処からか来たんじゃないか?」


 オナシティでも目立っていたけど、ばあちゃんが加わったから余計目立ってるな。それにしても俺完全に無視されてね? そう、周囲の男たちは美女3人に目を奪われておりゼントを同じパーティの一員とすら見ていないのだ。


 俺は空気か?まあ、妬まれるよりはマシか・・・。


 ゼント達はとりあえず依頼の受付に歩いていった。


「あのう、昨日ギルマスにここに9時に来るように言われたんですけど。」


「そうですか、それでは冒険者カードかパーティカードを見せてください。」


 ゼントはパーティカードを受付嬢に渡した。


「はい、パーティ『白銀の翼』の4名様ですね。ギルマスがお待ちですのでこちらにどうぞ。」


「え? なんだって?あのパーティは4人なのか?いや、あんな男いたか?」


「お、俺も今気が付いた。何だあの貧弱な男は!」


「あれはきっと彼女らの荷物持ちなんだよ。あんな美女達があれを相手にするわけないじゃん。」


「そりゃぁそうだな。うん、うん。」


 えらい言われようだったが、ゼントは外野の声を無視してギルドの奥に入って行った。


 ゼント達が案内された部屋に入ると、昨日のギルマスが正面の机に座り、昨日のシェリーさんと彼女のお爺さんが手前のソファーに座っていた。


 二人はゼント達を見ると立ち上がり深々と礼をして、ゼントに感謝の意を示した。

 

「ゼントさん、おはようございます。昨日は本当にありがとうございました。」


「君がゼント君か、昨日は本当に助すかりました。何とお礼を申し上げてよいか。ああ、申し遅れましたが私は ブライアン・ケイラと申します。」


 ゼントは当たり前の事をしたまでですから気にしないでくださいと二人に言うと、更に感謝感激されてしまい困ってしまっていた。それからゼントは二人にヴェルス達を紹介をした。


「まあ、挨拶はそのぐらいにしてそこに座ってくれないか。」


 ゼント達はシェリーさん達の対面のソファーの腰を下ろすとギルマスが右側の椅子に座って話始めた。


「ケイラさん、昨日は本当に災難だったな。あのモンスターは一体どこから現れたんだ?」


「ああ、あれは我々が商談先からの帰り道に、あの雑貨屋の所に差し掛かった時に突然雑貨屋の前が光輝いたかと思うと、そこにモンスターがいたんじゃよ。」


「水路から出た来たわけじゃあないのか?」


「ええ、お爺様の言う通りです。水路から出てきた感じはありませんでした。」


「確かに、辺りが水で濡れていると言うことは無かったな。」


 ギルマス達も昨日の現場検証で水でぬれていないことを確認していたようだ。


「とすると、何処から転移魔法を使って転移して来たとしか考えられんな。このあんちゃんみたいにな。」


 ギルマスはゼントを鋭い眼光で見据えた。


 ん、俺疑われてるのか?


「このあんちゃんは昨日転移魔法であなた方を助けてくれたんですよね?」


「ええ、そうですが、この人は左手を失ってまで私達を助けてくれたんですよ!」


 シェリーはギルマスの強く抗議した。


「いや、でも今は生えているよな。それにエクストラポーションを持っているから切られたって大丈夫ってことだよな?そもそもBランクの冒険者がSランクのモンスターを倒すこと自体がありえない。だが、モンスターを操っていたのがこいつならそれも可能だよな?」


 ギルマスの眼光が更に厳しくなっていった。


「昨日はそんな事は考えもよらなかったので、お前達を解放してしまったが、良かったよ!今日のこのこと顔を出してくれて。ギルドカードを確認して分かったのだが、前たちがオナシティを出たのが10日前だ。どんなに早い馬を使ってもオナシティからここまでは20日はかかる。それに昨日はうっかりしていたが、エルフの剣聖がこんなBランクパーティに入っているわけないしな・・・お前たち、本当は何者なんだ?」


(部屋ノ周リニハAランククラスノ力ヲ持ッタ者ガ8名潜ンデイマス。ソレト転移ヲ阻ム結界ガ張ラレテイマス。)


 ん———っと俺達本当に疑われてるんだね。オナシティのギルマスも少々疑り深かったけど、王都のギルマスはその上を行くな・・・職業病と言うやつか?とりあえず否定を。


「いや、俺達はただのBランクパーティですよ。」


「そうじゃ、儂を剣聖と行ったのはお前じゃろうが、このボケ!それに本当に単純な推理じゃな、これが王都のギルマスとは聞いてあきれるわい!」


 ゼンは蔑む様な目でギルマスを見下した。


 「何だと―このアマ―!」


 ばあちゃん、煽るのは止めようよ・・・。


 ゼンの言葉にギルマスは顔を真っ赤にして怒り、立ち上がって今にもゼンに掴みかかりそうになったその時。


「ギルマス、緊急の連絡です!」


 先程の受付の女性がノックもせずにギルマスの部屋に入って来た。


「なんだ!絶対に入るなと言っておいたではないか!」


 ギルマスは女性を睨みつけたが、女性はそんな事を気にせず、逆にギルマスを汚物でも見るような目で、諭すような口調で話を始めた。


「ですが、このままこの報告をしないとギルマスの進退に関わるかと思いまして。聞きたくないなら構いませんよ。」


「なっ!ど、どういうことだ?」


 ギルマスは怪我な顔をしながら女性に報告を促した。


「パーティ白銀の翼様がオナシティから王都に来た依頼内容が分かりました。」


「それが分かったからといって俺の進退に何が関わるんだ?」


 ギルマスはさらに怪訝な顔になった。

 

「依頼内容は『特秘Sクラス』になります。」


「えっ?」


 ギルマスの目が一瞬で丸くなった。


「それから出発時刻と到着時刻にも問題はありません。依頼主も同じ時刻出発し、王都へ到着しています。」


 「・・・・・・。」


 ギルマスは目を丸くしたまま、頭の上の方から顔色が赤から青に変わっていった。


 特秘Sって、普通は王族がかかわてるよな・・・しかも・・・本当に一部の人間にしかこの依頼内容が開示されていないという極秘中の極秘で・・・それを依頼されるということは・・・王族に完全に信頼されているという証・・・・・・・あ、詰んだ俺のギルマス生活!


 ギルマスの口を上に向けて一瞬ホケーっとしていた。あたかも口から魂が抜けていくかの様に。


「すまなかった————疑ってしまって!」


 ギルマスは我に返ると、座っていた椅子素早くテーブルの反対側に移動し、流れるように土下座をした。


「ほれ、やっとわかったかい、この脳筋のボケナスが!よくギルマスなんかやってられるな!人を見る目も持っておらのか!ギルマスなんかさっさと辞めちまいな!」


 いや、ばあちゃん、そこまで言わなくても・・・。


 ギルマスは土下座をしたまま、おっしゃる通りですと言い続けていた。


「まあ、分かってくれたなら良いですよ。話の続きをしませんか?」


 ギルマスはゼントにお礼を言い、元の席に戻った。


 それから今度はゼントがシェリー達に質問を投げかけた。


「ところでケイラさん達が見た光とはどんな感じの光でしたか?」


「どんな感じと言うのは?」


「例えば色とか光の大きさとか。」


「そうですね、金色に光る感じで、一点で光っているのではなく丁度モンスターの大きさぐらいで光っていたと思います。」


「そうだすると転移魔法ムーブでは無いですね。ムーブだと一点が少し光るだけでほとんど光は出ないんですよ。」


「そうなんですか、そうすると一体どうやって・・・。」

 

 シェリーが少し不安そうになっていた。


 ゼントは転移の仕方が転移装置に似ていると思ったが、あの近辺に転移装置は見つからなかったのだ。もっとも転移装置だったとしたら、話しても余計混乱を招くだけだ。


「ギルマスよ、あの場所に何か怪しい物や魔法陣とかは無かったのかいのう?」


「あ、はい、探しましたけど、何も見つかりませんでした。」


 ギルマスは先程の横柄な態度から一変していた。


「雑貨屋の中は確認したのかい?」


「はい、あそこは老夫婦が経営している小さな雑貨屋で、念のため中を確認しましたが、あの様な巨体が潜伏できるような場所はありませんでした。もちろん魔法陣のようなものもありませんでした。近所の民家も同様です。」


 その後ギルマスから質問がいくつかあったが、大した内容ではなく、どうやってデーモンオークを倒したかは最後まで聞かれることは無かった。


「ふむ、そうか。まあ、これ以上は何も出てこないようじゃな。ギルマスよ、もう我々は帰ってもよいかのう。」


「あ、はい、お帰りになられて問題ありません。あっと、デーモンオークの討伐報酬を受付で受け取ってください。サリナ君処理をして差し上げなさい。」


「はい分かりました、ギルマス。ゼントさん達どうぞこちらに。」


 サリナはゼント達をギルド受付に案内した。


「ゼントさん達ごめんなさいね。あのギルマスなんですが、悪い人じゃあないのですが、ちょっと思い込みが激しくて・・・たまにこんなことをやらかしてしまうんですよ。」


 サリナは先程ギルマスに対しての態度とは打って変わって柔和な感じになっていた。


「職業柄なんですかね?俺はもう気にしていませんよ。」


「そう良かったわ、あんなのでも今ギルマスを首になると大変なのですよ。」


 女性はくすっと笑うと机の中から取り出した書類を読み始めた。


「今回の報酬ですが、元々依頼対象ではありませんので依頼料はお出しすることはできません。ただデーモンオークはSSランクとなりますので討伐報酬は金貨28枚と小金貨8枚となります。この内デーモンオークの素材としての買取両が小金貨11枚になります。それと2名の人命救助の報奨金として小金貨2枚が支払われることになりますので、合計金貨29枚が支払われます。」


 ざっと290万円か・・・流石SSランク。王都でちょっと贅沢してみようか?思わず顔が綻ぶゼントであった。


「支払いですが、現金でも口座への振り込みでもどちらでも承りますがいかがしますか?」


「口座って?」


 オナシティには銀行なんてなかったぞ?


「あ、そうですね、まだ王都以外には普及していませんので、説明いたします。」


 サリナさんの説明では2年前から王都で銀行が出来他と言うのだ。業務内容は向うの世界とほぼ同じ。きっと転生者か転移者が作ったのだろう・・・つ、2年前と言うことはまだ生きているのか?ゼントはちょっとその人に会ってみたくなっていた。


「まだ王都近辺だとするとオナシティでは使えないので、現金でお願いします。」


「はい、畏まりました。」


 ゼントはお金の入った袋をサリナから受け取りギルドの入口から外に出ていった。


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