ブルーメモリー
「思いだしました!」
宿の部屋に戻るなりヴェルスが大声を張り上げた。
「ヴェルス、一体何を思い出したんだ?」
魔力を使い果たして疲れていたゼントは、ヴェルスの大声に若干不機嫌になった。
「ゼントさんが野盗を倒して助けた商隊の人たちもケイラ商会って言ってました。」
ん?記憶にない、そうか俺気絶していたんだ・・・。ゼントはより気分がブルーになってしまった。
「あの時の男の人がおそらく店主で、あの時の少女と先程会ったシェリーさんが娘さんだと思います。」
「へーそうなんだ・・・・いや、何で同じ日に襲われてるの?」
「私も偶然にしては出来すぎだと思います。」
同じ日に襲われたことより、同じ人間に助けられたことの方が余程出来すぎであることに彼らは気づいていなかった。
「そうじゃな、ケイラ商会がいくら大店だからっと言って、王都の街中で冒険者を4人も用心棒に雇ったんじゃから、何か訳ありなんじゃろうて。まあ、余り首を突っ込まない方が良いじゃろう。」
「それもそうだね。さて、風呂に入って寝るかな。ブルーちょっとそこに・・・あれ、寝ちゃってるよ。」
「あら、珍しいですね。」
「デーモンオークを倒すときに使ったスキルで疲れたんだろう。なんせ小さなブラックホールみたいなやつの軌道を変えたんだから。あの時は本当にブルーがいなければヤバかったよ。」
「左腕までなくしちゃったんですから、無茶しないでくださいよ。本当に。」
ヴェルスが少し怒ったように頬を膨らました。
「ごめん。」
ゼントは両手を合わせてヴェルスに謝ると、タオルを持って風呂場へと直行した。
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「ん・・・・朝か?」
ゼントはカーテンの隙間からの朝日で目を覚ました。
「・・・・・う、動けん。」
ゼントは左側からヴェルスにしがみつかれ、右足にはミュウが絡みついていた。さらに腹の上にはゼンの足が載っているのだ。
何でいつもこうなるんだ?フリーズフレーム(拘束魔法)をかけられないだけマシか・・・。 ゼントはやむをえず皆が起きるのを待ったいた。
全員起きた後、ゼント達は宿の食堂に来ていた。ミュウが宿のおばちゃんの料理が美味いというので、暫らくは自炊をしないつもりなのだ。
ゼント達が食堂に入って行くと、アマンダこと宿のおばちゃんがミュウ達を見つけて元気よく挨拶してきた。
「あ、ミュウさんたちじゃあないですか!おはようございます!何処でも良いので空いてる席に座ってくださいね。」
「「「「おはようございます!」」」」
皆のあいさつに笑顔で答えるとアマンダは忙しそうに厨房に入って行った。
ゼント達が空いている席に着くと、ゼントとゼンには何やら懐かしい匂いがしてきた。
「ばあちゃん、この匂い!」
「ああ、そうじゃ、間違いない!!」
二人共らんらんと眼を輝かせていた。
「ハイ!お待ちどうさま!」
アマンダと給仕の女の子が両手にトレイを持って4人分の朝食を運んできた。
「「やった焼き鮭だ!」」
トレイの中にはどんぶりにてんこ盛りされたご飯とその横には50cmくらいある巨大な切り身の焼き鮭らしきものが乗っていた。さらに一切れ10cm位ありそうな卵焼きが二切れ、更にみそ汁が付いており、それぞれが巨大という以外は正に和食なのである。
ただ一つ、野菜がお新香ではなくトマトを主体としたサラダであることだけが前世昭和一桁生まれのゼンにっとってマイナスポイントであった。
待てよ、白米を食べる習慣あったっけ?オナシティでは米は家畜の餌として使われてはいたが、白米を出す店など全くなかったのだ。ちなみにこの世界では白米はライと呼ばれている。
「あのう、王都ではこのライを食べる習慣があるのですか?」
ゼントは恐る恐るアマンダに聞いた。
「ああ、あんた初めてかい?これって2年くらい前から出回りだしたんだ。そのままだとイマイチなんだけど、魚や肉と一緒に食べると美味いって言うんで、王都ではあっという間に広がったんだよ。栽培もゴード川の湿地で育てることができるので、今では結構いろんなところで出しているよ。」
「あ、でも初めてだと気持ち悪いかい?それなら別の料理に替えようか?」
アマンダは少し申し訳なさそうにゼントを見た。
「いえ、是非食べさせてください!」
ゼントは目をウルウルさせながら両手を合わせてアマンダに懇願するように言った。
「そうかい、それならご飯はお代わり自由だから思う存分食べておくれ!」
アマンダは嬉しそうに厨房に戻っていった。
「この切り身、大きさ以外は鮭そっくりだけど何だと思う?」
ゼントは改めてお盆の上を見て疑問に思った。
「確かにこの世界には鮭はおらなんだな。それにこの切り身のサイズはちとデカすぎるのう。」
(コノ魚、イエ正確ニハ、コノモンスターノ名称ハ『ラックサーモン』デス。成体ノ体長ハ5mを超エルコトモアリマス。)
ゼントの疑問にコネクトが回答してくれた。
「え?モンスターなの?」
(ハイ、成体ニナルト人間ヲオソウコトモアリマス。)
「まあ、サーモンて言うくらいだから鮭の仲間だよね。もう、我慢できない。早く食べよう!」
「のんびりしてたのはゼント達だろ!」
前世が猫のミュウは既に待ちきれなくなっていたのだ。」
「「「「いただきます!」」」」
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ゼント達はギルドに呼ばれている時間までまだ1時間以上あるので、朝食後に部屋でまったりとしていた。
「あー美味かった! あのモンスターの切り身、味は鮭そっくりだったね。」
「そうじゃな―、デカいから大味かと思っとったが、なかなかうまかったわい。」
(本当、美味しかった。)
「そうか、ブルーもか・・・そう言われてみれば話せるようになったんだよね。良かったらブルーの住んでいたところの話を聞かせてよ。」
(いいよ!)
「念話だと聞きにくいから、コネクト、音声を出してよ。」
『了解!』
ゼント達は4人で円陣を組むような感じでベッドの上に座るとブルーが話始めた。
『ぼくの住んでいた場所、宇宙樹という巨大な木あった。』
「宇宙樹ですか?この世界を管理しているユグドラシルも宇宙樹って呼ばれているんですよ。」
ヴェルスが興味深そうに身を乗り出してきた。
『そう、宇宙樹も僕たちの世界を管理してた。」
『僕たちの世界、飢えも争いごとも無い、そう危険なにもない。僕たちはユグドラシルの木の枝で寝て、目覚め、歌を歌い、気が向けば世界を飛び回り他のの宇宙樹に行ったりした。美しい景色、雄大な景色、色々な景色を見た。宇宙樹の枝の上で恋をし子を成し、生活を営んでいた。」
「宇宙樹っていくつもあったのですか?」
『うん、世界中に5個あった。』
「なんか理想郷って感じだね。ところでご飯は何を食べていたの?」
『宇宙樹の実を食べてた。それだけあれば何も必要なかった。』
「ここの天界に似てますね。天界でもユグドラシルの木の実しか食べていませんでしたよ。」
ヴェルスが更に前にでて来た。
あれか・・・。ゼントは以前ユグドラシルの実を誤って食べてしまい石になりかけていたことを思い出し少し陰鬱な気分になっていた。
『宇宙樹の実は美味しい。でもみんな同じ味。こちらの世界いろんな味ある。』
「そうですね。私もゼントさんの料理を食べて初めて色々な味があること知ったんですよ。
一緒ですね!」
『うん、ヴェルスと一緒!』
ブルーが嬉しそうに羽ばたいていた。
「ところで、そんな理想郷のようなところからこの世界に召喚されてしまってブルーは落ち込んでないの?」
『・・・・』
ブルーは頭を下げて黙り込んでしまった。
「ごめん、変なこと聞いちゃった無理に話さなくていいから。」
ゼントは地雷を踏んでしまったのではないかと焦っていた。
『いえ、聞いてほしい。』
ブルーは吹っ切れたように顔を上げて話始めた。
『僕の両親、もういない。』
『向うの世界、子を成し育て上げると生きるのやめる人とても多い。』
「え、なんで?」
『外敵いない、食料困らない、争いない・・・・でも、やることない。』
『生まれて少ししてからは世界を知るために飛び回る。これ、楽しかった。でも直ぐに全てを見終わって飽きてしまった。それから、パートナーを見つけ子供育てる。子供育ってしまえばやることない。世界樹に頼んで生きることを止める。』
『僕パートナー探している最中だった。その時思った。パートナー見つけて子供育てた後、僕も両親と同じことするのか?』
「「「・・・・・・」」」
ゼントは思った。全て管理された社会で種を保存するために生かされているような生活って生きていると言えるのだろうか?
『そんなこと思っていたら、召喚された。召喚されて直ぐ魔素に侵された。死ぬの怖かった。本当に。ゼントに助られたの本当に感謝してる。』
『それからこの世界で色々あった。生きていくの大変。でも生きている実感あった。』
アーシオ遺跡の堕ちた女神、ピラニアドラゴンデザスター、魔人、堕ちた神様・・・・・んこの世界で生きていくのって本当に大変だ。ゼントはしみじみと思っていたが、普通の人はこれ程の災難に会うことないということにゼントは気づいていなかった。
『向うの世界は未練ない。ゼント達と一緒楽しい。』
ブルーのこの言葉を聞いてゼントは安堵していた。




