後始末
「やったな、ブルー。」
(うん、上手くいった。)
ゼントはブルーのスキル”重力を操る者”で次元喰の軌道を変え、デーモンオークにご返却したのだ。
「ゼント、よくやったな!」
ゼンが駆け寄りゼントの肩をたたいた。
「ああ。」
「それにしてもモンスターにはスキルが使えることが分かってよかったのう。」
「あ、そう言われてみれば忘れてた!」
「まあ、そんなもんじゃよ。」
ゼンとゼントが笑い合っているとヴェルスとミュウがムーブで転移して来た。
「ゼント―、凄い魔力だったけど何があったんだ。」
「ゼントさん・・・・つ、どうしたんですか————その左手!」
ヴェルスはゼントの左手が失われているのを見て鬼神の様な顔でゼントに駆け寄ってきた。
心配してくれてるのは分かるけどちょっと怖い。ゼントはヴェルスの勢いにちょっとビビってしまった。
「だ、大丈夫ですか?痛くありませんか?」
ヴェルスが本当に心配そうにゼントの生えかけた左腕をさすっていた。
「ま、まあ、まだちょっと痛いけど、ほっとけば治るから。」
「いえ、大丈夫!直ぐに生えさせますから!」
いや、生えさせるって言い方はちょっと生々しいような。ゼントがそう思っている間にゼントの左腕が光に包まれてにょきにょきと生えてきた。
(ゼント、良かった。腕生えた。)
「え?今の念話は?誰ですか?」
「我にも聞こえたぞ、聞いたことない声だったぞ。」
ヴェルスとミュウが怪訝そうな顔で辺りをきょろきょろと見まわしていた。
「あ、この声はブルーなんだ。」
「「え?」」
「話が出来るようになったのですか?」
(うん、この世界、言葉やっと覚えた。発生器官違うから、今は念話だけ。)
「凄いですね、全く違う言語形態ですよね?」
「そうだよな、俺はウルスに貰った石板のおかげでこの世界の言語を覚えたけど、ブルーは自力で覚えたんだな。」
「本当、凄いぞ。」
(へへ!)
皆に褒められブルーは自慢そうに胸を張っていた。
「ところで、このモンスターは何処から出現したんですか?」
ヴェルスがモンスターを見ながら首を傾げていた。
SSランクのモンスターが王都のど真ん中に近い所に突然出現するなどありえないのだ。
「水路から上がって来たわじゃあないな。」
ゼンが水路の周りをチェックしていたが水でぬれた箇所は見当たらなかった。
「空を飛んできたんじゃないか?」
「ミ、ミュウ、この巨大な豚が飛ぶと思うか?」
ゼントは思わず突っ込みを入れてしまった。
「うん、無理!ちょっと言ってみただけ、てへ。」
『コノ辺ヲスキャンシマシタガ、転送装置ナド怪シイ物体ハ検知デキマセンデシタ。』
「お、コネクト、仕事速いね!」
『エエ、先程土下座マデサレテシマイマシタカラ。」
「「うぐ!」」
ゼンとゼントはバツが悪そうに周囲を探査するふりをしていた。
「あの時襲われていた人達なら知ってるかもしれないね。」
「そうじゃな、何処に避難させたんじゃ?」
「ギルドの前。」
「そうか、それならそろそろ来るころかのう。」
ゼンがそう言いながらギルドがある方向を見ると、数名の冒険者風の男たちが走りながらこちらにやってきた。先頭に立っていた男がゼン達を見つけるとこちらに近づいてきた。
「君達、この辺で巨大なオークが出現したと聞いたんだが、見なかったか?」
男は少し白髪が混じった茶色の短髪で2m近い厳つい男であった。頬には数センチに及ぶ切り傷があり、いかにも歴戦の勇士という趣である。
「ほれ、豚ならそこに倒れているぞ。」
ゼンが指さす方を見た男は愕然とした。
「こ、これはデーモンオークじゃないか! え?こいつ既に・・・。」
デーモンオークは腹に大穴を開けて既に絶命しているのだ。
いや、何でこんな所にSSランクモンスターが? 災害級だぞ! いや、それより何でこいつ死んでるんだ??
男は完全に困惑していた。男の眼の前には3人の若い美女と冒険者になりたての様な頼りなさそうな若い男なのだ。
そうか、こいつを倒した奴は今は何処かに行っていないんだ!男は気を取り直してゼンに聞いた。
「このデーモンオークを倒した奴はどこに行ったんだ?」
「こいつを倒した男なら、ほれ、あそこにおるぞ。」
ゼンが指さした方を見ると美女に挟まれるように立っている優男が一人・・・。
「えっ? あ・・・あいつですか?」
ま、優秀な魔法使いと言うこともあるし、優男だからと言ってデーモンオークを倒せないという分けじゃあないな。
男はゼント達の方に向かって歩いていくと、先にギルドに救援を求めてきた女性がゼントの方に小走りで近寄って行った。
「もしや、貴方は?」
「あ、さっきのお嬢さんじゃあないですか!」
「はい、先程は大変ありがとうございました。」
女性は深々とお辞儀をしてからゼントの方を見て驚いていた。
「左手は?え、え、え、確かに服は血だらけですし・・・何で左手が生えているんですか?」
「あ、これはね・・・。」
迂闊にヴェルスがエクストラヒールが使えるとは言えないのでゼントは答えに困っていた。エクストラヒールが使える人間なんておそらくこの国に一人か二人ぐらいで聖人とか聖女とか言われる類の人たちなのだ。
「これは、そのー、このポーションを使ったんだ。」
ゼントはウエストバックから以前ヴェルスが女神だったころに貰ったポーションを出して見せた。
「腕が生えるポーションって・・・まさかエクストラハイポーションですか?」
「いや、ちゃんとした名前は知らないけど。」
「間違いありません、そんな効力のあるポーションはエクストラハイポーションしかありませんから。一体どちらで入手されたのですか?」
女性はゼントの手ごとポーションを握りしめてまじまじと見ていた。
「えっと、知り合いの伝手で・・・・。」
「あ、すみません、ついいつもの癖で・・・。」
女性は慌てて手を離すと、また深々とお辞儀をしていた。
いつもの癖って、どういう癖なんだ?ゼントは首を傾げていた。
「ポーションの入手先の問題などではありませんでした。是非このポーションの代金と助けていただいたお礼をさせてください。」
「いや、そんな事気にしなくていいよ。」
「いえ、命の恩人に対してお礼をしなかったら、ケイラ商会の沽券にかかわります!」
ん?ケイラ商会?どこかで聞いたような? ヴェルスが首を傾げながら思い出そうとしていた。
「ところで、お礼よりも聞きたいことがあるんだけど、あのモンスター何処から出てきたの?」
「あのモンスターですか・・・・実はよく分からないんですよ。
女性は首を傾げ、人差し指を口元に持ってきながら答えた。
「分からない?」
「ええ、護衛達と一緒に水路沿いを歩いていますと、急に前方が光ったかと思うと巨大なオークが出現したのでびっくりしましたの!」
光った?転移装置に似てるけど転移装置は見つかってないしな。も一度スキャンしてみるか?ゼントが思案していると男の声に遮られた。
「ケイラ商会のシェリーお嬢さん、お取込み中すまないが、そいつと少し話をさせてくれないか?」
女性とゼントが声の方を見ると先程ゼンと話をしていた厳つい男が立っていた。
「このモンスターを倒したはあんちゃんかい?」
「ええ、そうですが何か?」
「そうか、それならあんちゃん、冒険者カードとあるならパーティカードを見せてくれ。」
「カードはありますけど、貴方は誰なんですか?」
ゼントは厳つい男を怪訝そうに見ていた。
「あ、わりぃ、俺は王都のギルマスをしているイヴァンだ。」
「あ、すいません、ギルマスだったんですか。俺、ゼントって言います。」
ギルマスとは知らずにやや強い態度で出てしまったことにゼントは少々焦りながら冒険者カードとパーティカードをギルマスに渡した。
ふむ、冒険者で俺の名前を知らないということは、外から来たばかりか?それにしてもSSランクのモンスターを倒すのだから、Sランクなのは間違いないか。Sランク冒険者なら、王都のギルドに連絡があるはずなんだが、こいつには記憶が無いぞ。イヴァンはゼントの冒険者カードを見て思わず声を出してしまった。
「Bランク冒険者だと———!」
ギルマスはカードを何度も見直していた。確かにBランクだ。普通Bランク冒険者がデーモンオークを倒せる筈が無いのだ。
「パーティが白銀の翼で、仲間が三人で、ミュウ、ヴェルス、ゼンってそちらの3人のお嬢さんたちか?」
え?なんか一人増えてない?ゼントがゼンの方を見るとゼンは明後日の方を見て音が出ない口笛を吹いていた。
「・・・・はい、そうです。」
「え?凄いですね!これって『ハーレムパーティ』じゃあないですか!?」
急にシェリーが会話に割って入って来た。
「『ハーレムパーティ』って何ですか?」
「ハーレムパーティは男一人に3人以上の女性が組んでいるパーティの通称名ですよ!ゼントさん、格好いいです~!・・・・・あ、すみません、気が動転していた名前を名乗るのを忘れていました。私はシェリー・ケイラと申します。以後お見知りおきを!」
「は、はぁ。俺はもうご存じとおもいますがゼントって言います。」
ゼントもギルマスもシェリーの勢いに置いてけぼりを食ってしまっていた。
「ま、まあ、とりあえず今日はここまでとするか。お前さんもあのモンスターの事は知らないようだしな。報奨金の事もあるし明日ギルド来てくれ。」
「ま、まあ俺はいいけどヴェルス達は?」
「私は構わないです。」
「我も良いよ!」
「で、もう一人のパーティメンバーのゼンさんは?」
ゼントはわざと声を強めてゼンに言った。
「儂も構わんよ。」
ん?ゼン・・・・・・銀髪のエルフ・・・・。ギルマスはゼンを見て何かが引っかかっていた。
「あ———————————っ!!エルフの剣聖だ————!」
厳つい男が素っ頓狂な声を上げたので辺りにいる全員が男の方を振り向いた。
イヴァンは全員の注目を集めてしまったため、顔を真っ赤になっていた。
「いや、まあ何でもない。ゴホン、じゃあ明日朝9:00にギルドに来てくれないか?シェリー嬢ちゃんもいいかい?」
「はい、分かりました。」
「ええ、私も構いません。じゃあゼントさん、お礼の話はその時に。」
シェリーは笑顔でゼントに対してお辞儀をした。




