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王都 フィールドビヨンド①

 ゼンが倒したデビルイール回収しようと魔道車がゼンの所に近づいてくると、王都の方から2台の馬車と馬に乗った騎士が数名こちらに近づいてくるのが見えた。


「お、迎えが来たようだ。」


 ウイリアムはゼンの所に魔道車を止めると車から降りて馬車の方に手を振っていた。


 馬車と騎士達が魔道車の所に来ると騎士たちが全員馬から降りてカール教授の前で臣下の礼をした。


「サイス公爵、お迎えにあがりました。」


「はい、お迎えご苦労さまです。そんな畏まらなくてよいですから、頭を上げてください。」

 

 騎士たちが全員頭を上げるとカール教授は騎の先頭にいる男にウイリアムさんを紹介した。


「ルイス君、こちらがカンバーイ国、ウイリアム・ヘンス伯爵だ。」


「貴方がヘンス伯爵ですか!噂には伺っております。魔道車を発掘して実用化までやってのけたと。素晴らしい功績ですね! あ、すみません申し遅れました、私はゴード国王宮騎士団長を務めておりますルイス・ギルと申します。」 


「ウイリアム・ヘンスだ、よろしく!」


 ルイスは感激しながらウイリアムと握手をしていた。


 その後ルイスはリーナに挨拶をしていた。お互い顔見知りだったのか気さくに話をしている。


「ばあちゃん、カール教授って公爵だったんだ。」


「ああ、そうじゃよ。しかも全王の弟じゃ。」


「それって王族ってことだよね?」


「ああ、そうじゃ。」


「俺って普通に会話してたよね?」


「そうじゃな。」


「これって、いわゆる不敬罪ってやつじゃね?」


「まあ、あの人はそんなことを気にする人じゃないから大丈夫じゃよ。」


「・・・・・・・。」


 ゼンとゼントがそんな会話をしているとルイスがゼント達に近づいてきた。


「失礼ですが、もしかしてエルフの剣聖ゼン様ですか?」


「ああ、儂はゼンじゃ。」


「やっぱりそうですか、申し遅れましたが私は王宮騎士団長のルイス・ギルと申します。お見知りおきを。」


 ルイスは一礼するとゼンに握手を求めてきた。


「ところで、このSランクモンスターはゼン様が討伐されたのですか?」


「討伐なんてそんな・・・・ん?Sランクモンスターじゃと?」


「ええ、デビルイールはSランクモンスターですよ。」


「そう言われてみればコネクトがそんな事を・・・・まあ、捕まえたから良しとするかのう。」


 ゼンはデビルイールをモンスター、しかもSランクであるなどということなど全く頭に無く、ウナギとしか認識していなかったのだ。


「ところでルイス騎士団長とやら、王都周辺にSランクモンスターが出没するなんて異常ではないか?」


「はい、確かに。以前まではBランクモンスターでさえ稀にしか出なかったのですが、最近ではAランクモンスターが頻繁に出没するようになり、このデビルイールみたいにSランクモンスターまで現れるようになってしまったんですよ。」


「ふむ、妙な話じゃな。原因は掴めておるのか?」


「色々調べてみたのですが、全く原因が分かりません。スタンビード(魔物暴走)の前兆ではないかと言う者もいるくらいです。」


「そうか、それは困ったもんじゃな。」


 ゼンは少し考えるとゼントの方を向き。


「ほれ、ゼントこいつを亜空間にしまっとけ。」


「分かったよばあちゃん。収納!」


 デビルイールが一瞬で消えてなくなったのを見てルイスは目を丸くして言った。


「あ、あの大きさのデビルイールを亜空間に収納できるのか???」


「え、ああ何とかできますよ。」


「君はいったい・・・。」


「こいつはゼントって言って儂の弟子で今回の護衛に同行しとるんじゃ。」


「その若さで剣聖の弟子か・・・大したもんだ。将来が楽しみだな。」


「はい、ありがとうございます。」


「ところで、君の後ろにいる美女達も護衛なのか?」


 ルイスはヴェルス達を見て鼻の下を長くしていた。


「彼女たちは俺にパーティの仲間ですよ。」


「ヴェルスと申します。」


「ミュウだよ!」


「私は王都の騎士団長をしているルイス・ギルと言います。二人共本当にお美しいですね。」


 ルイスの言葉にヴェルスもミュウも真っ赤になり照れていた。


「それではゼンさんと護衛の冒険者の方はこちらの馬車に乗ってください。」


 ゼント達がウイリアム達とは別の馬車に乗ると王都に向けて出発した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ゼント、あのウナギは変異魔素でSランクモンスターになったのか。」


「いや、コネクトに調べてもらったけど変異魔素は検出されなかったよ。」


「そうか、ヴェルスさん、運河の中の魔物の様子はどうじゃ?」


「普段の状態が分かりませんが、1km位の範囲にAランクモンスターが5匹ぐらいいますね。他にBランクが20匹ぐらい。あ、Sランクモンスターも一匹いました。」


「そりゃあ、モンスターが多過ぎるじゃろう。」


「ねえ、これってデビルモールの時に似てないか?」


「そうだ、あの時みたいにでっかい魔石がどこかに置いてあるんじゃないか。」


 ゼントの考えにミュウが賛同した。


「ヴェルス、魔素の濃度が濃い所はないか?」


「残念ながらこの近くには見当たらないですね。とりあえず王都に着くまでスキャンを続けましょうか?」


「いや、ずっとスキャンしてたらヴェルスが大変だろう。魔素濃度だけならコネクトに任せるよ。」


『ハイ、任サレマシタ。』


「それじゃあ、コネクトさん頼みますね。」


『ハ、ハイ・・・。』


 ヴェルスの笑顔になぜかコネクトが照れているようだった。


「こんな状態だと王都の入口の結界システムが壊れたら王都の中がパニックになるんじゃないか?」


 ゼントの言葉にゼンが頷いた。


「それが奴らの狙いかもしれんが、余りにも分かりやすいのが気になるのう。まあ、警戒するに越したことは無いがな。後でウイリアムに伝えておこう」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 1時間程で馬車は王都の北門に到着した。門の所で手続きをして入ると、そこは街ではなく広大な田園地帯が広がっていた。


「それにしても凄い広さの畑だなー!」


 ゼントは窓にしがみつき外の景色を見ていた。


「王都の食料を担う穀倉地帯ですからね。それにゴード国は農業の育成に力を入れて輸出までしているのですから広大な農地面積を誇っているのです。」


「それだから綺麗に整備されてるんだな。」


 ヴェルスの説明にゼントは頷いていた。


 馬車は田園地帯を暫らく走ると急に停止した。


「なんだ?」


 ゼントが窓を開けて外を見ると前の馬車の所に数名の農民らしき人達がおりカール教授が馬車から降りて話をしているようだった。



「エリンさん、お久しぶりです。」


「カール教授、ザラス領はいかがでしたか?」


「アーシオ遺跡では、なかなか楽しませてもらいましたよ。こちらは特に変わったことはありませんかな?」


「最近、壁の外のモンスターが増えていてファイアボーア狩りが難しくなってきましたね。それに運河の魔物も増えてるので迂闊に近寄れなくなりましたよ。スタンビードでも起こる前兆じゃあないでしょうか?」


「少し妙な話ですね、スタンビード は大げさだと思いますが、騎士団には原因の調査を依頼してみますよ。」


「そうですか、お願いします。」

「そうだ、忘れるところでした。今朝獲れた農作物を持ってきたんですよ。是非召し上がってください。」


 エリンは従者が引いてきた荷車一杯の野菜をカール教授の前に差し出した。


「これは、いつもすみませんね。はて、この量を持ち運ぶのは、ちと難儀ですね。」


「それなら俺の亜空間にしまいましょうか?」


 カール教授が声の方を見るとゼントが馬車から降りてきていた。


「おお、ゼント君、すまないが頼むよ。」


「それじゃあ、失礼します。」


 ゼントはエリンに軽く頭を下げ農作物を収納しようとしてそのまま凝固した。


「・・・・・・・・。」


「ゼント君、どうしたのかね?」


「こ、これは・・・・キュウリ、キャベツ、ネギ、ナスにズッキーニ、それに・・・これはアラスト(トマト)がある!」


「この野菜は全部この辺で採れるのですか——?」


「・・・・・・。」


 ゼントの勢いに驚いてエリンは無言で硬直していた。


「あ、すいません。オナシティでは見られない野菜だったものでつい・・・。」


「そ、そうなんですか。ええ、この野菜はこの一帯で栽培されているんですよ。」


「そうですか、市場で買えるということですね、良かった!」


「ゼント君、そろそろ出発したいので収納してくれないかね?」


「あ・・・すみません直ぐに収納します。」

 カール教授の言葉にゼントは我に返り農作物を収納して馬車に戻っていった。 


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 エリンと出会った後、30分程馬車で進むと市街地を囲む城壁にたどり着いた。

 ここは、農地と市街地を分離しているだけで高さ3メートル程度の魔物の侵入は考慮されていない簡易な壁である。


 市街地への門をくぐると、そこには農家と思われる家が点在していた。

時間が昼過ぎのためか、人影はまばらで王都と言った感じがしない。

 

 そこから暫らく行くと白壁の家が密集し始め、人々の往来が増えたと思うと一気に街という雰囲気になっていた。


「外の壁から市街地まで結構距離があるんだね。」


ゼントは窓にしがみつくように外を見ていた。


「そうですね。フィールドビヨンドの北側は農地が広がっているので、市街地までは時間がかかりますね。これは農地が魔物が城壁を越えて侵入場合の緩衝地帯も兼ねてるんですね。もちろん農家の方の安全も考えられていて地下に避難場所も設置されているんですよ。」


「ゼント、王都のギルドが見えてきたぞ!」


「あれがギルドか。オナシティと同じ青い外壁なんだ。」


「ゴード国に限らず冒険者ギルドは青色って決まっているらしいんです。」


 ゼントはヴェルスの説明に頷きながら尚も外の景色を見ていた。


「ところで、俺達はどこまで護衛としてついていけばいいんだ?」


「確かに、このままいけば王城じゃな。王と謁見なって事になったら厄介だから、ウイリアムに言って、その辺で降ろしてもらおうかのう。」


「そうか、ばあちゃん有名人だもんな。」


 この後ゼンがウイリアム達と交渉し、王城に着く前に降ろしてもらうことが出来た。カール教授はゼンに王と面会してもらいたかったようだが、カール教授の性格なので無理強いされることは無かった。ただ、リーナだけがゼントに王城までついて来てほしいと最後まで我儘を言っていた・・・。


最近体調が優れないので更新が遅くなっています。

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