盗賊
ゼント達は王都への向かう途中、亜空間泊を2回して、もう少しで王都という所までやってきた。
「ゼントさん!」
「ああ!」
『ココヨリ南東約1300mノ地点デ馬車ガ盗賊トオモワレル集団ニ襲ワレテイマス。』
「ウイリアムさん、ヴェルスと助けに行ってきます!」
「ああ分かった!頼むぞ!」
「ヴェルス、行こう! ミュウはこちらの護衛を頼む!」
「はい!」「うん!」
ゼント達はムーブで盗賊の襲撃が見下ろせる場所に転移した。
盗賊は商隊を襲っているようで既に何人かが怪我をして動かなくなっていた。
商隊の中には女の子もおり・・・・
「子供が!!」
小さな女の子が盗賊の一人に蹴とばされ、刀で切り付けられた瞬間、ゼントの中で何かが弾けた!
盗賊達の周りの空間が一瞬歪んだ型と思うと、ある者は後方に吹き飛ばされ、ある者はありえない角度で首が曲がり、またある者は胸の部分が陥没して全く動かなくなった。
戦闘は一瞬だった、ゼントはスキル『俊速』を使い盗賊を全て薙ぎ倒していた。
手加減無しに・・・。
「ゼントさん、女の子は無事ですよ!」
「・・・・・つ。」
ゼントはヴェルスに話しかけられるまで呆然として立ち尽くしていた。
ゼントの手には木刀が盗賊達の頭蓋骨を砕き、あばら骨から脊椎まで砕きつくす感触が残っており、盗賊の首がありえない角度で曲がっていくのが目に焼き付いてた。
俺、確実に人を・・・・。
この世界に来てから覚悟はしていたのだが、盗賊とはいえ人を殺めたのは初めてだったのだ。
盗賊だから罪にはならない、こんな奴ら生きている価値などない、そう考えてもゼントの心に人を殺めたという事実が重く圧し掛かってきた。
「うっ・・・・・。」
ゼントは眩暈を感じ、顔に手を当てるとそのまま地面に突っ伏してしまった。
「ゼントさん!」
ヴェルスはゼントに駆け寄りゼントを抱き起こした。
(主ニ体ノ損傷ハアリマセン。精神的ニショックヲ受ケタモノト思ワレマス。)
コネクトの念話がヴェルスの頭に響いていた。
ヴェルスは羽織っていたケープを脱いで地面に置き、ゼントを寝かせると直ぐに他の負傷者の治療にあたった。
ヴェルスは全てに人の治療が終わると、ゼントに駆け寄りゼントを抱き起こした。
(コネクト、ゼントさんの意識にアクセスさせて。)
(現在ノ主ハ精神ヲ閉ザシテイル為アクセスデキマセン。)
「あのー。」
商隊の長と思われる男がヴェルスがヴェルスに話しかけてきた。男はやや小太りでくせ毛の茶髪
「あ、はい何でしょうか?」
「お取込み中の所すみません。私はフィールドビヨンド商売を営んでおりますラウス・ケイラと申します。助けていただき本当にありがとうございました。お連れさんは大丈夫でしょうか?」
「あーはい、大丈夫だと思います。ちょっと無理をしたので魔力が枯渇した状態になってしまったようなんです。申し遅れましたが、私はヴェルスと申します。」
「そうですか、それなら良かった。」
「助けていただいたお礼をしたいのですが、何分今は持ち合わせがありません。私達と一緒に王都に来ていただけないでしょうか?」
「私達は護衛の依頼をこなしている最中ですので、同行するのは難しいですね。お礼の事はお気になさらないでください。連れの状態も気になりますので、私達はこれで失礼させていただきます。」
ヴェルスは早くウイリアム達の所に戻りたくて少し焦っていた。
「いや、そう言う分けにもいきません。私は王都でケイラ商会というものを営んでおりますので、王都に行かれましたら店の方に来ていただけないでしょうか?」
ラウスは懐から名刺を取り出すとヴェルスに渡した。
「分かりました。ご丁寧にありがとうございます。」
「よう、姉ちゃん、この盗賊はどうする?」
ヴェルスが声の方を振り向くと、商隊の護衛と思われる冒険者達が盗賊の死体を道の脇に積み上げていた。
「俺はこの商隊の護衛をしていた冒険者パーティ『青嵐』のリックって言うんだ。この盗賊はA級の指名手配犯だぞ、こいつ等の討伐報告をギルドにすれば凄い額の報奨金が貰えるぞ。」
「そうですか、お手数ですがリックさん達でギルドに報告していただけないでしょうか?報奨金はリックさん達が受け取ってくださって構いません。」
「いや、危ない所を助けてもらったうえに報奨金まで貰っちまったら、俺達の立場がな・・・。」
リックはきまり悪そうに頭をかいていた。
「そんな、お気になさらないでください。」
「そうだ、冒険者って言うなら登録したギルドとパーティ名を教えてくれ、後で報奨金が行くようにしておくから。」
「あーはい、分かりました。オナシティの『白銀の翼』と言います。」
「『白銀の翼』だな、必ずギルドには伝えておくから。」
「はい、それでは・・・。」
ヴェルス軽く会釈してムーブで転移しようとした時。
「お姉さん、助けてくれてありがとうございます。このお兄さんが盗賊を退治したのですか?」
先程ヴェルスがエクストラヒールで治癒させた女の子がゼントの顔を心配そうにぞき込んでいた。
「ええ、そうよ、このお兄さん強いのよ。」
「そうなんですね。ありがとうお兄さん、早く元気になってね。」
少女はゼントに顔を知被けると頬にキスをした。
「え?」
ヴェルスは一瞬驚いたが、早くゼントを連れて戻りたいので構わずムーブで転移していった。
「あのお兄さん達、また会えるといいな・・・。」




