王都へ
「ん、あ————!」
昨日の模擬戦のおかげで良く眠れた。
ハヤトシティに来てから特にやることもないのでぶらぶらしていただけだからいい運動になった。
といってもSSランクモンスターや神との戦い何てもう二度とやりたくないけどね。
ハヤトシティでの魔道車の修理は、たった5日で完了した。駆動系を載せているボンネットしか残っていなかったことを考えると信じられない早さだった。
魔道車の外観は馬車と同じ様に木で出来ているが、鉄板を成形したものをフレームとしてその上に木材で客室を架装しているので、大工だけではなく鍛冶屋も必要だったのだ。特に腕の良い鍛冶屋でないとだめだった。それは、鉄板で出来たフレームを少しでも軽くしたいので鉄板を薄く丈夫に伸ばしたいという要求があった為だ。
それにも関わらず短期間に完成したのは、カール教授がハヤト領の領主に掛け合って、腕利きの大工、それと鍛冶屋を集めてくれたおかげだ。
「ゼントさん、少し話があるのですが。」
「何?ヴェルス、そんなに改まって、どうしたの?」
「ミュウさんやゼンさん、それにブルーさんにも聞いてほしいのですが。」
同じ部屋で寝ていた皆がヴェルスの前に集まって話を聞き始めた。
ヴェルスは昨夜ウルスに聞いた話を全て皆に伝えたのだ。
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「ウルスの話だと勇人が凄い力をつけているってことだよね。」
「ええ、そう言うことになります。」
「それとロキは死んだけど背後で暗躍している奴がいるってことだよね。」
「はい、そうです。」
「地上に干渉しないという掟があるにも関わらずウルスがロキを消滅させたのは、それは神に近い力を持っていたからということだよね。」
「ええ、そうです。」
「それと、俺もC魔素が神並みにあるって事でいいのかな?」
「はい、そうですね。」
「・・・・・・ということは俺もウルスに消滅させられちゃうって言うこと?」
「ええ、そういうこ・・・・つ、ち、違います。違います。」
ヴェルスはつられてゼントの言葉を肯定してしまいそうになったが、ゼントは半泣きのような状態になっているのに気が付き、おお慌てて否定した。
「ロキはこの世界に害を成す存在となっていたからです。ゼントさんはそんなことしませんし、E魔素が少ないですから神になることはありません。」
「いや、俺どうせヴェルスよりE魔素少ないし・・・。」
「そんな、いじけないでください。」
「・・・・まあ。冗談はおいといて。」
「つ、冗談だったんですか——————!」
ゼントは怒ったヴェルスに土下座をして謝り、本題の話を進めた。
「気をつけろと言われても何が起こるか分からないから心構えだけしておけってことだよね。」
「まあ、変に心配しててもしょうがないから今まで通りで行こう。」
「ゼント、お前はそう言う所はこの世界に来ても変わっておらんな。楽天家というのかノー天気というか。」
「まあ、分からないことは気にしててもしょうがないじゃん!」
「まあ、そうですね。」
「ゼントの言う通りでいいんじゃないか。」
「キャウ―。」
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ゼント達は宿で朝食と宿泊代を支払うと歩いてハヤトシティの南門に向かって行った。
天気の良い日で空にひつじ雲が浮かんでいた。
「この辺りはオナシティより暖かいね。」
ゼントは隣を歩いているリーナに話しかけた。
「ええ、大分南下しましたからね、王都はもっと暖かいですよ。」
「そうか、これから冬になるからその間はフィールドビヨンドにいるのもありかな。」
「ゼントさん、オナシティには戻られないんですか?」
リーナが不満そうな顔をしながらゼントの顔を見てきたので、ゼントははぐらかすように。
「いや、まあ例えばの話だよ。」
「いえ、それなら良いのですが・・・・。」
リーナはザラス家の令嬢という立場があることから好き勝手にゼントの後を追いかけるわけにはいかないのである。そのためゼントと一緒に居たいという気持ち令嬢という立場との間で心が葛藤していた。
とりあえず一緒にいる時ぐらいは。リーナをそう思いゼントの右手に抱き着いた。
「いや、ちょっとリーナさん、どうしたの?」
「ちょっとだけ、ね、お願い。」
「ま、まあいいか・・・。」
「じゃあ、我も!」
今度はミュウが、ゼントの左手に抱き着いて行った。
「わ、わぁ、ミュウもかよ!」
ヴェルスは出遅れてしまい、残念そうな顔をしてミュウの隣を歩いていた。
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ゼント達はのどかな小春日和の中をハヤトシティの南門を出て近くの森に来ていた。
「よし、それじゃあ魔道車を出すぞ。」
ウイリアムが亜空間倉庫から出した魔道車は以前の角ばった車体ではなく、車体の全部の位置が低く、そこからなだらかにフロントガラスの前端に繋がっていた。フロントガラスも傾斜がなだらかになり全体的にスマートな形になっていた。
「ゼント君が書いたイメージを元にして作ってみたんだがどうだ?」
「いや、前よりずっと格好いいです!これなら空気の抵抗も少なくなりますから、スピードが出しやすくなりますよ!」
「ほう、向こうの世界の車を真似たのだな。」
ゼンが魔道車の車体を手で叩きながら感心していた。
「これで本当に速くなるんですか?」
「うん、我も分からん。」
ヴェルスとミュウが不思議そうに魔道車を見ていた。
半信半疑な皆に対して、ゼントがどや顔で説明を始めた。
「皆の周りには空気があることは知ってるよね?」
「ええ、存じております。」
「その空気が、全力で走っている時に前方から風の様に当たってくるのは分かるよね。」
「ああ、確かにそうだ。」
「これが空気の抵抗なんだ。」
「空気の抵抗は分かりますが、何故この形だと良いのですか?」
「それはね、空気は水みたいなものでスムーズに後ろに流してあげると抵抗が少なくなるんだ。船を上から見ると先がとんがっていて後ろに向かって広がってるだろう。空を飛ぶブルーの体もくちばしが尖っていて後ろに行くにしたがって太くなっているだろう。こうしてあげると空気がスムーズに流れて速く飛べるんだ。」
もうゼントのどや顔がMAXになっていた。
「「「「「「「「・・・・・・・」」」」」」」」
「ま、まあ、何となく分かったから。魔道車に乗ってくれ。」
ウイリアムがもういいと言わんばかりに魔道車への乗車を促していた。
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魔道車は森を抜け、草原地帯を王都に向けて走り始めた。
草原はやや茶色がかった草や真っ赤になった草がまだらに生えており秋の装いを見せていた。点在する木々もほとんどが広葉樹であり赤や黄色に色づいていた。
「ばあちゃん、この間から気になっていたんだけど、スキルが無いのに何んで斬撃飛ばせるの?」
ゼントは、ゼンがリーナやロキに対して斬撃を放っていたのが気になって、はす向かいに座っているゼンに質問をした。
「ああ、あれはな儂のスキルではなく、この魔剣のスキルじゃ。」
「ばあちゃんの持っている剣って魔剣だったの?」
ゼントはゼンが持っている日本刀に似た剣をまじまじと見つめた。
「ああ、エルフは魔力を持ってい入るがスキルを持っていないので、こういった剣を使ってスキルを発動させるのじゃ。」
「へーそうなんだ、ところで、ばあちゃんどうやってその魔剣を手に入れたの?」
「これはじゃな、儂が30才くらいの頃にマトー国のカレイガ古代遺跡の探索をした時に見つけたんじゃ。」
「遺跡って、剣も発掘されるんだ、機械文明的な物ばかりだと思っていたよ。」
「遺跡の地下15階層の一室に両刃刀、槍など、いろいろな武器と一緒にがあったんじゃ。
ちなみにエルフの国で魔剣と言われるものは皆遺跡で発掘されたものなんじゃ。」
「ということは、今の技術だと魔剣は作れないって事?」
「ああ、そうじゃな、電話や時計、それにこの魔道車なんかは発掘品を模倣して作ることはできるんじゃが、魔剣だけは模倣できなんだな。」
「ところで発掘品って勝手に貰ってきちゃっていいの?」
「バカ言え! 遺跡は国の管理下にあるので発掘されてものは相当の報酬をもらって一旦国に納めるたんじゃ。じゃがな、儂はこの日本刀に似た刀が気になってしょうがなかったので、剣聖になった時に貰った報奨金をはたいて国から買ったんじゃ。」
「だから大切にしてるんだね。」
「そのとおり、ちゃんと『村正』という名前までつけて可愛がってるんじゃ!」
いや、それ妖刀の名前じゃね?とゼントは思ったが、ここで突っ込むのはやめておいた。




