終焉
数回のムーブによる転移でゼント達はスクルス達から20㎞程離れた地点に来ていた。
「あ、あれは・・・。」
ゼントは自分の目を疑った。スクルス達のいる辺りの上空に巨大な黒いクサビ状の物体が浮いていたのだ。あの大きさだと長さが1km以上ある。
『アレハ魔素ノ塊デス。自身ノ魔素ヲ放出シ、ソレヲ核トシテ周囲ノ魔素ヲ集メタ物体デス。』
コネクトの言葉にそこにいた全員がぞっとした。あの大きさの魔素の塊からエネルギーが解放されたら100km離れてもただでは済まない。
「俺に考えがある。ヴェルス、あの岩山の向こう側まで転移してくれ。」
「はい、ゼントさん。」
ゼントは岩山の反対側まで転移すると今度は岩盤に垂直に穴を空けてもらい穴の中に降下した。
「ヴェルス、ここの空間をもっと広げてくれないか。」
ヴェルスはゼント指示に従い降り立った周りを堀広げると。直径20mぐらいの球形の空間が出来た。
「よし、入口を塞いだらこの空間で爆発をやり過ごすぞ!」
ゼントは地下で女神の鉄槌のエネルギーを凌ごうというのだ。
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「これで終わる・・・・私の・・・・全ての悪夢が・・・・・・・・。」
スクルスは鬼気迫る形相で叫んだ!
「鉄槌!!」
黒いクサビ状の物体はゆっくりと地上に向かって降下し始めた。
ロキはその様子を見ながら呟いた・・・。
「ああ・・・終わった・・・。」
それは周りの空間を歪ませ、周囲に無数の雷光を伴いながらゆっくりと地面に突き刺さっていった。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・・・
カァ————————————————————!!
大気を、地面を、星をも揺らすような轟音の後に強烈な光と共に全てのエネルギーが解放されたのだ。
解放されたエネルギーの量はデザスターのブルーブレスの比ではない!
爆心地の地面は一瞬で気化し消え去さり、爆発と共に広がる熱量は球体となり、その球体が浸食する地面はまるで氷のように溶けていくのだ!
熱量の球体は爆心地から離れるに従い膨張速度が増し、辺り一帯の地形を吹き飛ばした!
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ヴェルスが掘った穴の中で無数の多重シールドを張りながらゼント達は爆発を凌いでいた。
「ヴェルス、穴の温度をもっと下げられないか?」
「駄目です、流入してくる熱量が多すぎます!」
ヴェルスの魔法で入って来た穴は塞いだのだが、爆発により穴が崩壊して空洞内に大量の灼熱の魔素が流入してきたのだ。
ゼントは何か打つ手はないか必死に考えた。
「コネクト、ブルーのスキルで魔素を追い出せないか?」
『ブルーノ重力制御ヲ使エバ高温ノ魔素を排出スルコトハ可能デスガ入口ガ更ニ崩壊スル恐レガアリマス。」
「更に状況が悪化するってことか?」
『ハイ』
「それなら、『魔素を操る者』のスキルで魔素の流れをコントロールできないか!」
『『魔素を操る者』ヲ使ウニハ空間ノ魔素密度ガ不足シテイマス。』
「くそ、八方塞がりか!!」
そうこうしているうちに空洞の中の温度はさらに上昇してきた。
組織再生スキルを持っているゼント以外はそろそろ危険な状態に近づいていた。
ヴェルスが朦朧としてきている。もうだめか・・・。ゼントがそう思った時ズシンという音と共に空洞の上部が崩れてきた。
本当に終わりか?ゼントが恐る恐る頭上を見ると何故か穴が塞がっており、高温の魔素の流入が止まっていた。
「え? どうしたんだ?もしかして岩山が崩れて穴を塞いだのか?」
何が原因か分からないが外に通じている穴が塞がり高温の魔素の流入が止まったのはゼント達にとって幸運であった。これで空洞内を冷却できる。
空洞内の温度は見る見る下がり、常温に近づいてきた。
汗だくのヴェルスが安堵の表情を見せてゼントに話しかけた。
「ゼントさん、これで・・・助かるのですね・・・。」
「ああ、そうだ!」
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女神の鉄槌が落ちてから十数時間経過していたが爆心地付近はまだかなりの熱を帯びていた。
ボゴン!
焼けただれた地面の一部が隆起し剥がれ落ちたかと思うとそこから人影が現れた。
「全く、なんてことをしてくれるんだ!」
人影はロキだった。体中ケロイド状の火傷で見るも無残な状態であったが、なんと女神の鉄槌の爆心地で生き延びたのだ!
「2000年かけて貯めた魔素が完全にパアですよ。これではこの世界を破壊することも出来ません。」
「・・・・・・まあ、生きていればまた復活できますから良しとしましょう。」
「哀れだなロキよ!」
ロキは驚き、声のする方を見た。
「お前は・・・」
ロキの前にはシルバーに近い美しい金髪をした女性が立っていた。
「ウルスか!」
「ああ、久しぶりだな。」
「何故だ!神は地上に不干渉のはずでは無かったのか!!」
「もちろん、人間に対してはな。」
狼狽えるロキに対してウルスは淡々と言葉を進めていた。
「お前たちの様に神の力を持った者を放っておく分けにはいかない。創造神様の許可も得ている。」
「くそ、また邪魔をする気か!」
「哀れな奴だなロキ、いやロキの欠片よ。」
「何を言う、私は欠片などではない! 創造神の兄弟ロキそのものだ!」
「本当に残念だな・・・。」
ウルスはそう言うと右手をロキの頭の伸ばした。
「や、やめろ!」
魔力を使い果たしたロキは贖うことが出来ず、ウルスがロキの頭を掴むとサァーっと砂になり地面に砂の山を作ったのだ。
「ロキの欠片よ、お前は本来の記憶を失っていたのだ・・・あの聖戦の後、ボロボロの状態で再生したあの時から・・・・お前が壊そうとしたこの世界は聖戦の時にお前が望んだ世界じゃないか・・・・。」
ウルスはそう言うと目を瞑り右手に残っていたロキの砂を風の中に飛ばした。
ウルスはロキのいた場所から少し歩き、爆心地で唯一焼けただれていない地面に立っていた。
「ね、姉さん・・・」
そこには老婆の姿になったスクルスが横たわっていた。額に埋め込まれた変異魔石は砕け、胸にも変異魔石が埋め込まれていたようで、それもボロボロに砕けていた。
スクルスの周りが焼けただれていないのは『女神の鉄槌』のスキルを使ったものに対する恩寵で術者が守らたからだが、変異魔石で魔力を増強して無理に『女神の鉄槌』を使ったスクルスは、全ての魔力を失って本来の姿になっていた。
「スクルス・・・。」
ウルスは変わり果てた妹をじっと見つめた。
「私はバカだった・・・・。」
スクルスは虚ろな目で話し始めた。
「150年前・・・私が天界から追放されたあの日、私は二つの記憶に苛まれていたんだ・・・。」
「一つはあの人が殺された記憶・・・もう一つはヴェルス姉さんが聖戦で死んだ記憶・・・。」
「女神の鉄槌を使った罰として人間として天界を追放された時、封印されていたヴェルスの死の記憶を思い出してしまったんだ。」
「多くの人を殺してしまった罰なのだと思ったが、私は二つの悲しみに耐えられなかった・・・。」
「私はその時無理やり一つの記憶を封印したのだよ。そう、あの人が死んだ時の記憶を・・・。」
「はは、大した魔力も無いのに自分の記憶をいじったから、ヴェルス姉さんの記憶が曖昧になってしまってたんだ。」
スクルスは今にも泣き出しそうに瞳を濡らしていた。
「私が創造神様に頼んで姉さんの記憶を消してもらったのに・・・・全て今のヴェルス姉さんのせいだと思い込んでいたんだ!」
スクルスの目から涙が伝って落ちていった。
「ヴェルス姉さんには本当に酷いことをしてしまった。誤っても許してはくれないだろうけど・・・ウルス、ヴェルス姉さんに・・・・・」
スクルスは最後まで言い終わることが無くその目を閉じた。
「スクルス、あの人と共にこの地で眠るがいい。」
ウルスはスクルスの額に手を当てるとスクルスは砂になりイエローデザートの中に消えて行った。
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『地上ノ温度ガ生存可能ナ範囲マデ低下シマシタ。』
地下の空洞にコネクトの声が響き渡った。
ゼント達は地上に転移した後、穴の入口を見て驚いた。
「これはあのゴーレムじゃないか!」
「なんでここにいるんだ。たまたまなんてありえないだろう。」
「こいつは我々を追ってきたのかのう?」
「我らを倒すきだったのか?」
「まだ動くのでしょうか?」
皆ゴーレムが自分達を倒しに追ってきたものと思っていたが、ゼントは違っていた。
「いや、おそらくこのゴーレムは俺達を助けてくれたんだ。」
何でそんなことが言えるんだと皆が不思議そうにゼントに聞いてきた。
「俺がシールドを張っている時このゴーレムが穴を塞いでくれたんだ。あの時俺達を追ってきたのなら穴を破壊して突っ込んできたはずだ。」
ゼントの言葉にヴェルスも頷いた。
「確かに、あの時は少し穴が崩れましたが、破壊にまでは至りませんでした。」
「そういうことか。真相は分からないが、このゴーレムをここに放置しておくわけにはいかないな。既に動かないとおもうが、誰かに悪用されても困るからな。」
ウイリアムが思案顔をしながらゴーレムの処置に困っていた。
「それなら俺の亜空間に保管しておくってのはどうですか?」
「ゼント君の亜空間にこれだけの大きさのものが入るのか?」
「ええ、問題なく入ります。」
「それじゃあ頼む、このゴーレムの存在はこの世界には危険すぎる。出来ればそのまま永久に出さないでくれ。」
ゼントは頷くとゴーレムを亜空間に収納した。
それを確認してウイリアムは言った。
「さあ、ハヤトシティに向かうぞ。」




