悪夢再び
ロキの『雷帝』が終わり辺りに静寂が訪れた。
ゼント達は多重シールドで辛うじて『雷帝』を凌いでいたが、ロキ達に贖う力は既に無くなっていた。
「おや、まだ生きてるよ、こいつ等!」
スクルスは疲弊しきったゼント達を見て嬉々とした。
「それじゃあ止めを刺してあげるわ。まずは、そう偽のお姉様から。」
スクルスはそう言うと右手を挙げ特大の光のスフィアをヴェルスに向けた。
「ヴェルスさん、私の魔力を使ってください!」
リーナがヴェルスに向かって言った。
「良いのですか、封印を解いても?」
リーナは魔人と化しゼント達を傷つけた時から、恐怖からこの力を使わないようコネクトに封印して貰っていたのだ。
こんなにも早く封印を解くことになるとは思ってもいなかったが、皆の命には代えられない。
「は、はい!」
「分かりました、コネクトさん、リーナさんの封印を解いて・・・・・。」
ドスン!!
ヴェルスがコネクトをに指示を出す前に背後に何かが落下する轟音が響いた。
ヴェルス等が後ろを見ると、遺跡の穴のシールド上に載っていた土砂が無くなりぽっかり真円の穴が姿を現していた。さらにその上には巨大な人型が浮いていた。
その姿を見たウイリアムは叫んだ。
「あ、あれは遺跡の中にあったゴーレム!!」
「一体誰が動かしているんだ!」
ウイリアムは驚きを隠しきれずにいるとコネクトの声が響いた。
『ゴーレム内ノ魔力ガ急激ニ高マッテイマス!攻撃ガキマス!!」
「くそ、前門の狼後門の虎とはこの事か!」
「コネクト直ぐにリーナさんの封印解除して!」
『了解!』
金属製のゴーレムの出現に驚いていたのはヴェルス達だけではなく、スクルス達も驚いていた。
「・・・・・・・・・・。」
スクルスは無言でじっとゴーレムを凝視していた。
「彼奴は聖戦の時の遺物ですよ、まだこんな所にあったのですか。スクルス直ぐに破壊してしまいなさい。」
ロキの言葉にスクルスは反応せず、ただ宙に浮くゴーレムを見つめてぼそっと呟いた。
「彼奴は・・・・。」
スクルスそう言い終わる前にゴーレムの両手から強烈な閃光が発せられた。
「「何ぃ!」」
閃光はヴェルス達を通り過ぎスクルスとロキを直撃した!
スクルス達はゴーレムの攻撃を辛うじて凌ぐことができたが、ゴーレムは連続して攻撃を仕掛けてきている。
ロキは光の針を打ち続けているが、ゴーレムには全く効果が無い。
「スクルス!あんたも早く攻撃しなさい!」
ロキの声はスクルスには全く聞こえておらず、ひたすらゴーレムを凝視しながら呟いているだけだった。
「彼奴は・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うっう—————ん。」
「あ、あれはどうしたんだ!コネクト、ゴーレムは何故奴らを攻撃している?」
ロキの攻撃で意識を失っていたゼントは、スクルスとゴーレムの激しい攻防で目を覚ました。
『遺跡ノ自己防衛システムガ起動シ、攻撃ヲ仕掛カケテイタ彼等ヲ敵ト判断シタモノトオモワレマス。』
「そうだ、皆は?」
「ヴェルス達ハ無事デス、ブルー、ミュウ、ゼンハ、気ヲ失シナッテイマスガ怪我ハシテイマセン。」
「よし、今のうちに3人を連れてヴェルス達の所に行くぞ。」
ゼントは瞬歩で3人を回収に向かった。
一方、ゴーレムはスクルス達に光線による攻撃が無駄だとわかると背中から『光る剣』を抜き切りかかっていった。
ゴーレムが剣を抜く様を見たスクルスは
「彼奴は・・・・・・・彼奴は! あの人を殺した奴だ!!」
スクルスの脳裏には150年前にアイーラ軍と勇者と呼ばれた男が戦った時の光景が蘇ったのだ。
勇者と呼ばれた男は、このゴーレムと同じ形をしたゴーレムに『光る剣』で止めをさされ時の様がスクルスの目には映っていた。
「う、う、う、うぁ————————!!!」
スクルスは怒りを露にして、全身に凄い量の魔力を纏わせていた。
「千針乱舞!」
スクルスがそう唱えると、無数の光の針がゴーレムを取り囲み一瞬でゴーレムに襲い掛かっていった。
カッカッカッカ——————ン!!
ゴーレムの全身を埋めつくす程の数だった光の針の全てが一瞬で弾き飛ばされかと思うとゴーレムはその大きさからは考えられない速さでスクルスとの間合いを詰めて光の剣を振り下ろした。
ドゴン!
スクルスは後ろに飛び退き光の剣を避けたが、光の剣は轟音と共に地面に大穴を空け、そのエネルギーで剣を避けたスクルスまで弾き飛ばした。
「つ・・・・」
「雷帝!」
スクルスは体勢を立て直すとロキと同じスキルを発動した。
蒼い雷光はゴーレムの頭上から先程とは比べ物にならない密度で降り注いていった。
辺りは轟音と共に猛烈に砂塵が巻き上げられ、その光の中では全ての存在を否定し、消し去るかのように思えた。
カッ!
ゴーレムが一瞬輝いたかと思うと雷光は何事もなかったかのように消え去っていた。
「スキルオフフィールドかい!」
ゴーレムは広範囲にスキルオフフィールドを展開し、雷光を消し去ったのだ。
ゴーレムは再びスクルスに接近すると光の剣の連撃で打ち始めた。
「くそっ!」
スクルスは光の剣の直撃は辛うじて躱すが、掠めるだけで体の組織が破壊され激痛が走っていた。組織再生スキルが発動しているが再生が間に合わない。
スクルスはあっという間に全身傷だらけになっていた。
「スクルス、逃げるぞ!彼奴は対神兵器として開発されたものだ!まだ完全ではない私達では太刀打ちできない!」
ロキの言葉は全くスクルスには聞こえていなかった。スクルスはボロボロになりながらもひたすらゴーレムを睨みつけていた。
「私は逃げますよ!」
ロキはムーブで転移しようとしたところ
「何!ブロックされている。」
そう言うと胸から金色の懐中時計のようなものと取り出しスイッチの様なものを押した。
「転移装置もか!」
そう、ゴーレムは敵が逃げないように全ての転移魔法をブロックしていたのだ。
「畜生——————!」
ロキは顔面蒼白になり膝をついて両手を地面に叩きつけた。
ゴーレムを睨み続けていたスクルスはボソッと呟いた。
「彼奴を倒すには・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ヴェルス、大丈夫か?」
ゼントは気絶しているゼンとミュウを両脇に抱え、ブルーは懐に入れてヴェルス達の所に来ていた。
「ゼントさん・・・何とか・・・。」
ヴェルスは魔力を使い果たし顔面蒼白の状態だった。
「ゴーレムがスクルス達の相手をしている間にここから脱出しよう。今のままだと全滅になりかねない。」
「ええ、彼らは神に近い力を持っています。」
「ああ、それにあのゴーレムも何時こっちに牙を剥いて来るか分からない。」
「ええ、リーナさん、魔力をシェアしてください。」
「はい、ヴェルスさん!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「なんだこの魔力は!」
ゼントが魔力の方を振り向くとスクルスの周りの空間が歪んでいた。
「あ、あれは、一体何をする気だ。」
「あ、あれは・・・。」
ヴェルスはスクルスの魔力を見て震えあがった。
「まさか『女神の鉄槌』を打つつもりなの・・・?」
「何だと!この土地を一瞬で不毛の大地にした神のスキルか!」
「ええ、あれを使ったらこの一帯はまた・・・。」
「ヴェルス、直ぐにムーブで転移してくれ!」
「でも、数キロ離れたぐらいではどうにもなりません!」
ヴェルスは恐怖に竦んで正気を失いかけていた。
「駄目でもいい!爆心点にいるよりましだ!直ぐに転移しよう!」
ゼントはヴェルスの両肩を持ちヴェルスの目を見据えた。
「わ、分かりました。」
ゼントに言われて何とか正気を保ったヴェルスはリーナの魔力を使い全員をムーブで転移させた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁ————————————!」
スクルスは鬼の形相でゴーレムを睨みながら魔力を高め、右手を点に向かって伸ばし叫んだ!
『女神の鉄槌!!』




