イエローデザートの戦い
ドガン!
謎の声を聴いた直後に砂のドームに特大のファイアボールが直撃して砕け散った。
ヴェルスが声を聴いた瞬間に絶対シールドを皆の周りに展開したので難を逃れていた。
「スクルスですね!」
「ええ、姉さん、またお会いできましたね。」
スクルスが近くの砂丘の上に立っており、隣には銀色の長い髪をなびかせた中性的な顔立ちをした男が一人いた。
その男を見たヴェルスは自分の目を疑った。
「・・・・創造神・・・様?」
その男はヴェルス達を生み出した創造神に瓜二つの顔をしていたのだ。
「まさか、あんな奴と一緒にしないでくださいヴェルス、いえ『ヴェルス2世さん』。」
男は迷惑そうな顔をしながら右手で前に降りていた髪を後ろに振り払った。
「貴方は、ま、まさか『ロキ』ですか?」
「そうですよ、貴方と会うのは初めてですけど、本当、『ヴェルス』そっくりですね。」
「何を言っているのですか! 私がヴェルスです!」
ヴェルスは男が自分の事を偽物だとでも言うような物言いにいらだっていた。
「何を言ってるの?姉さん、いえ『ヴェルス2世』さん。」
今度はスクルスがニヤニヤ笑いながら言い始めた。
「私はヴェルスです!」
ヴェルスは声を荒げて否定した。
「知らないのなら全部教えてあげるわ。」
「創造神が作り出した女神は3人、ウルス、ヴェルス、そして私スクルスよ。3人共生を受けたのは聖戦の2,000年前、つまり今から4,000年前よ。」
ヴェルスはその言葉を聞いて愕然とした。自分が生まれたのが2,000年前、そう聖戦の後だと創造神から聞いていたのだ。
「嘘よ、わ、私はヴェルスよ!」
「まだそんなことを言ってるの? 本当のヴェルス姉さんは2,000年前の聖戦で死んでるのよ! 貴方は私の姉さんの骸を使って創造神様が作り出したコピー、偽物よ!!」
「貴方がヴェルス姉さんの姿で蘇った時に初めは本当に喜んだわ。でも直ぐに絶望したの、だって私の知っているヴェルス姉さんの記憶を一つも持っていなかったから・・・。」
「でも、スクルスは私と同じ時に生まれたと創造神様は言っていたし、貴方もそう振舞っていたじゃない!」
「それは創造神が私の記憶を封印していたからよ!私が貴方の存在を良く思っていなかったから創造神が私の記憶を・・・本当のヴェルス姉さんの記憶を封印してしまったのよ!!」
「150年前、人間として地上に堕とされた時、全ての記憶を思い出したのよ!」
「そんな・・・。」
ヴェルスは自分の存在が分からなくなり愕然として身動きが取れなくなってしまった。
「そう、そこで大人しくしていなさい。偽物は消してあげるからさ!」
スクルスはそう言うと両手を挙げて巨大な光のスピアを作り出した。
「お前なんか、お前なんか、お前なんか————消えてしまえ!!」
スクルスの叫び声と共に光のスピアは無防備のヴェルスに向かって放たれた!
スカ—————ン! —————————ズガガーン!
少し甲高い音と共に光のスピアはヴェルスに当たる直前で弾かれてヴェルス達の後方の遺跡で炸裂した。
「な、何をしたんだ!金属のスピアじゃないんだぞ!」
スクルスはありえない現象に困惑していた。
絶対シールドで防いだとしてもスピアはそこで炸裂するはずなのに、スクルスが放ったスピアは『弾かれた』のだ。
「ヴェルス!大丈夫か?」
砕け散っていた砂のドームを吹き飛ばしてゼント達が飛び出してきた。
「き、貴様の仕業か!」
スクルスはゼントを睨みつけた。
「相変わらず常識外れのことをしますね。見ていて飽きないのですが、そろそろ邪魔なので皆さんと一緒に消えてもらいますよ。」
ロキはそう言うと左手をスッと横に振り数十にも及ぶファイアランスを放ってきた。
スカ————————ン! ズドドドガガ———ン。
ロキの放ったファイアランスはスフィアと同様に全て弾かれてゼント達の後方に吹き飛んでいった。
「ちっ、スクルス!私があいつらを押さえておくからお前も攻撃しなさい!」
「言われなくてもやるわよ!」
ロキは放つファイアランスは全て弾かれているが、連続して多量のファイアランスを放ち続けているため、ゼント達は反撃の隙を見つけることが出来なかった。
ゼント達が足止めと食っている間にスクルスは数十に及ぶ光のスフィアをゼント達の上空に出現させた。
「これなら弾けないだろう!」
数十に及ぶスフィアはゼント達の頭上から降り注いできた。
カッカッカッカッカカカカ—————ン!
「「おわっ!」」
全てのスフィアが弾かれ、一部が跳弾となりスクルス達の所に飛んできたのだ。
「ちっ、本当に面倒くさい奴だな!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「くそ、このままじゃあ埒が明かない!」
ゼントが考案した新型シールドは全ての攻撃を跳ね返していたが、スクルス達の反撃が激しすぎるため反撃にうってでることができないでいた。
「ヴェルス、コネクトでこの新型シールドをシェアするから、防御を代ってくれ!」
「・・・・・・・・」
「ヴェルス?」
ヴェルスはスクルスの言葉に混乱し呆然と立ったままだった。
「私はヴェルスの偽物なの・・・・コピーなの? 本当のヴェルスは死んでしまってるの ? 私は・・・・誰?」
ヴェルスは蒼い顔をしながら悶々と呟いていた。
「ヴェルス! スクルスに何て言われたか知らないが、ヴェルスはヴェルスであって他の誰でもないだろう!」
「いえ、本当のヴェルスは2,000年前に死んでるの。私はそのコピー・・・偽物なんだって・・・・。」
「ヴェルス・・・。」
「こんな私に生きる意味なんてあるの?」
「ヴェルス、昔同じ名前のヴェルスって女神がいたからって今のヴェルスには何も関係ないだろう。」
「でも・・・・。」
「悲しいから、自分を否定するような事は言わないでくれ! 俺にとってはヴェルスは君一人しかいないんだ!! ソーリの森で死にそうになっていた俺を介抱してくれたヴェルス、ばーちゃんにやきもちを焼いていたヴェルス、そんな君を・・・お、俺は好きなんだ!!」
「あっ・・・うっうっ」
ヴェルスはゼントの言葉を聞き両目から大粒の涙を流し始めた。
ひとしきり泣くとヴェルスは手で涙を拭い顔を上げてゼントの方を見据えた。
「そ、そうですね、私はゼントさんのヴェルスです。そのシールドをシェアしてください!」
「分かった!コネクト頼む!」
『了解、主!』
コネクトのシェアにより新型シールドをシェアししたヴェルスは
「これは絶対シールド?普通の絶対シールドじゃない!シールドが波打つように動いてるわ!」
通常の絶対シールドは魔素を空間に膜状に固定させたものだがこの絶対シールドの魔素は前方から湧き出るように吹き出し、波打つように後方へと流れまた体内へと循環しているのだ。
「そう、この魔素の流れで攻撃の力を逸らして直接シールドを破壊できないようにしているんだ。多重シールドだと魔素の使用量が多いから魔力の消耗が早いけど、これなら循環させるのに魔素を消耗するけど、循環した分を回収できるから効果に対して魔力の消耗が少なくて済むんだ。とっても省エネ!」
『省エネ』という意味は何だか分からないけど『お得』という意味なんだろうとヴェルスは思った。
「これから反撃に出るけど、ばあちゃんとミュウはスクルスを、俺はロキという奴の相手をする。」
「分かった、ゼント!」
「任せとけい!エルフの剣聖の力を見せたるわい!」
「攻撃の隙を見て一瞬だけシールドを解除します。その間に飛び出してください。皆さん、くれぐれも無理はしないでください!」
「「「分かった!」」」




