砂漠を越えて②
ゼント達亜空間の中で食事を終え、寝る準備をしていた。
「それじゃあ部屋を3箇所に区切りますね。」
ゼントは亜空間の中に仕切りを2カ所出して部屋を区切った。
一昨日テントで寝た時のように、リーナ、シルビア、ゼンの三人で一緒に寝るはずだったのだが・・・。
「お願いします!ゼントさんが嫌じゃなければ私を傍に寝させてください。」
リーナがゼントに一緒に寝てほしいと懇願してきたのだ。
「いや、でもそれはまずいんじゃないか?」
辺境伯の令嬢が婚約者でもないような男と一緒に寝るなんて流石にまずいだろう。
「寝ている間にリンクが切れてしまわないかとても不安なんです・・・。」
昼間にあんなことがあった後なので、リーナは自分の魔力を押えているゼントのコネクトスキルとのリンクが切れてしまわないか不安だったのだ。
「大丈夫だよ、コネクトは寝たりしないから。」
「でも・・・・・。」
リーナは潤んだ瞳でゼントに訴えている。
「ウイリアムさん、何とかしてください。」
「まあ、諦めろ。俺とお前でケイン(リーナの父)に首を差し出せばいいだけだから。」
ゼントが諦めた顔をするとリーナはヴェルスとミュウに頭を下げて懇願した。
「ヴェルスさん、ミュウさん、お願いします!」
「私はいいですよ。」
「我も良いぞ、リーナもゼントと家族になるか?」
「はい!」
満面の笑顔でリーナがゼントに抱き付いて来た。
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翌朝、ゼント達は亜空間の中で朝食を済ませて亜空間から出てきた。
外は放射冷却により気温がかなり低下しており、ピンと張りつめた空気が漂っていた。
東の空は、地平線の下が赤身を帯び始めており天上の藍色に至る美しいグラデーションを見せている。
「まだかなり気温が低いな。移動は太陽が出始めてからだ。」
ウイリアムはそう言うと両手に息を当てて手を温めていた。
「ファイアボール!」
俺は暖を取るために木刀の先端に30cmぐらいのファイアボールを出した。。
「て・・・敵も魔物もいないようだが?」
ウイリアムが怪訝そうな顔をしながら聞いてきた。
「これで暖を取るんですよ。」
「いや、これは飛ばさないと爆発するだろう。」
「大丈夫ですよ、俺はソーリの森でこうやって暖を取っていたんですから。」
「うん、まあ仕方ないか、ゼント君だしな。」
ん?なんか引っかかる言い方だな。
ゼントが木刀を地面に突き立てると皆がファイアボールに集まり暖を取り始めた。
「お、太陽が昇り始めたぞ。」
ウイリアムさんが見上げた先を見ると、大きな砂丘の頂上付近に朝光が砂丘を赤く染めていた。
「それじゃあ出発するぞ!」
「皆さん、私の所に集まってください。」
ヴェルスを中心にウイリアムさん、カール教授、リーナさん、カペラさん、シルビアさんが集まっていった。
「私の右側に3人、左側に2人来ていただいて横に1列に並んでください。」
ヴェルスの右隣にリーナさん、その隣にウイリアムさん、カール教授、ヴェルスの左隣にシルビアさん、その隣にカペラさんが並んだ。
「皆さん並んだら、隣の人と手を繋いでくださいね。」
うん、この光景、小さい頃の遊びを思い出すな。
「それでは風魔法を使いますので、リラックスしてください。硬直してしまうと上手く飛べませんから。」
ヴェルスがそう言い終わると6人が同時に浮き上がった。
「うわっ、本当に浮いた!」
カペラが驚いて足をじたばたしていた。
「変に暴れないでください!コントロールが乱れますから!」
「は、はい、すみません。」
「それでは飛びますよ。」
6人はそのまま上昇を続けたと思うと体が地面に対して水平になりゆっくりと前進を始めた。
「だめ、俺は高所恐怖症なんだ。」
カペラは完全に目を瞑ってしまっていた。
ヴェルス達は速度を上げていき視界から見えなくなっていった。
「ばあちゃん、競争しようか?」
「そうじゃな、ミュウには負けんぞ———!」
ミュウは魔物姿になるとばあちゃんと一緒に走り始めた。二人共ほとんど砂埃を上げることなく、まるで滑るように砂漠を駆けていく。
「二人共口だけじゃあないんだな。じゃあ、ブルー俺達も行くか?」
「キャウ―」
ゼントも風魔法を使いヴェルス達と同じ様に上昇するとヴェノの翼を開いた。デザスターとの戦いの時は羽から魔素を出しながら宙に浮いていたのでそれほど大きな羽を出していなかったが、今回はその時の数倍はある翼面積をしている。省エネのため浮力として上空の風を使い、魔力は前進のためだけに使うのだ。
上空に出ると太陽の光を全身に浴びて少し暖かく感じるが切る風は冷たい。
下を見ると朝日で赤く染まった砂丘と日が当たらない部分の藍色が綺麗な模様を描きだしていた。
「少し寒いけど気持ちいいな——!」
「キャウ———————!」
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日の出から3時間程立ったところで気温が急激に上昇してきたため、ゼント達は移動を止め亜空間で休憩をとっていた。
皆、ゼントが出したお茶を飲んでいるが、カペラだけが亜空間の隅に寝袋を敷き、その上に蒼い顔をして横になっていた。
「シルビアさん、カペラさんは大丈夫ですか?」
「彼は高い所が苦手だった様ね、暫らく寝ていれば何とかなるわよ。」
いや、それって高所恐怖症だよね、余り大丈夫じゃないような気がするけど。
「思ったより距離を稼げてるな。」
ウイリアムが地図を広げて現在地を確認している。
「何kmぐらい移動できたんですか?」
「朝の3時間だけで100kmぐらい移動できているんだ。」
「凄いですね、でも午後の移動はそんなに稼げないんじゃないですか?」
「ああ、あの二人か。」
ウイリアムが見た方向には息を切らせてお茶を飲んでいるミュウとゼンがいた。
「はあ、はあ、ば、ばあちゃんやるな・・・・。」
「そ、そういうミュウこそ、はあ、はあ、はあ・・・・儂と互角とは大したもんじゃな。」
「それは我のセリフぞ、はあ、はあ、はあ、クーマオ族と互角とは・・・・褒めてやるぞ。」
二人共本来の目的を忘れて100kmの砂漠をたった30分で走り切ったのだ。
二人がダウンしている所にゼント達が追いつき、丁度気温が上昇してきたので、現在休憩中というのが真相である。
「ゼンさん、ミュウさんこれをどうぞ。」
シルビアさんがポーションDを皆に配っていた。
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午後5時頃やっと気温が下がり始めたので、次の場所に向けて出発した。
これからは日没までなのであまり時間がないので距離を稼ぐのは難しい。
砂丘はは夕日を浴びて赤く染まり始め、空から見ると赤い砂と日陰の青い色が不思議な模様を描いていた。
ゼントはブルーと一緒にヴェルス達に寄り添いながら飛んでいると
「ヴェルス、あそこに大きな穴が二つ無いか?」
ゼントが指さした方向には夕日により赤く染まった砂丘の中に黒々とした巨大な穴が二つ開いているのが見えた。
「ええ、何でしょうか?」
「何か気になるから、ちょっと調べに行ってくるよ。」
「分かりました、無理はしないでくださいね。」
「ああ。」
ゼントはそう言うと手前の大きな穴に向かって飛んでいった。
「この穴は日陰で黒いんじゃなく黒い色をしているんだ。」
「コネクト、穴の中の表面を調べてくれ。」
(了解!)
穴というか窪みみたいだな・・・。近くで見ると楕円形で小さい穴に向かって何か吹き飛んだような跡があるし。
(解析完了! 穴ノ深サハ中央付近ノ最深部デ約30m短辺ハ100mm長辺ハ200mmノ楕円ニ近イ形状ヲシテイマス。穴ノ表面ハ珪素ガ高温デ溶融シタ物デデキテイマス。)
「・・・ていうことは。」
(何カ高温ノ熱源ガ北ノ方角ヨリ飛来シ、コノ地点ニ衝突シタモノト思ワレマス。)
「それってブルーが吹き飛ばしたリーナさんのファイアランスじゃないのか?」
(ハイ、ソノ可能性ハ極メテ高ト考エラレマス。)
「なんだ、じゃあもう一つの穴もか?」
ゼントは小さい方の穴に向かって飛んでいった。
(ソレ以上近寄ルノハ危険デス!穴ヲ中心ニスキルオフフィールドガ展開サレテイマス!)
「何だと!!」




