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魔人誕生

「うっ・・・・・・」


 急にリーナの顔が蒼くなり、両手で体を押さえてがくがくしだした。


「リーナ、車酔いですか?」


 ゼントがリーナを心配して声をかけた時、急激にリーナの魔力が高まっていった。


(違ウゾ主! 変異E魔素ダ!)


「「「なに!」」」


 砂漠の中を疾走する魔動車が一瞬で爆発した。


 魔動車は後席を中心に吹っ飛び、前席を含む前側だけ形を残し、後は跡形もなく粉々になっていた。車両の上に積んでいた荷物はばらばらになり辺りにちらばっていた。




「つぅー」


 ゼントは突き刺さっていた砂山から頭を抜いて辺りを見回した。


(みんなは? リーナさんは?)


「痛っ!!」


 ゼントは激痛を感じて右手を見ると、骨が剥きだしになっており、もう少しで落ちそうになっていた。ゼロ距離からの強烈な魔力の放出に絶対シールドの展開が間に合わなかったのだ。


「なっ、なんだあれは!」


 ゼントは、宙に浮き禍々しい魔力を放出しているリーナを見て呆然とした。


「コネクト、リーナさんに何が起こってるんだ!リーナさんとのリンクはどうなってる!」


(リーナサントノリンクハ切レテイマス。リンクガ切レル寸前ニリーナサンノウナジに『変異魔石』ト『コントローラ』ガ埋メラレテイタノヲ確認シマシタ。)


「『変異魔石』ト『コントローラ』だと!そんなものは検知出来てなかったぞ!」


(特殊ナ遮蔽物質ヲ使用シテイタモノト考エラレマス。ソレヲ遠隔操作デ破壊シ、『コントローラ』ヲ介シテリーナサンニ一ツノ命令ヲ下シタコトマデハ分カリマシタ。)


「『コントローラ』は魔物しか操れないだろう!」


(ソノトオリデス、ソノタメニ変異魔石ヲリーナサンニ埋メコンダノデス。)


「くそ、それじゃあリーナは『魔人』になったって事か・・・・・まてよ、一つの命令ってなんだ?」


(『生キトシ生ケル者ヲ殺セ』デス。)


 ゼントはその言葉を聞いてぞっとした。


 魔王並みの魔力+変異E魔素の魔力、普通に考えたら勇者でも太刀打ちできないだろう。


「うっうぅぅ———あああ———————!」


 宙に浮いているリーナが体を丸めるような体制になり苦しみだした。


 体の色が青紫に変わり体躯が大きくなっていく・・・服は裂け、体のあちこちから太い筋のような物が浮かび上がっていく、頭には左右に巨大な角が生え、手足の爪はまるで魔物のようだ。


「一体何が起きてるんだ!」


(体内ノ膨大ナ魔力ニ耐エラレズ体ガ変貌シテイルノデス。)


 バサッ!


 リーナの背中から黒い翼が生えると苦しみもがくのが収まった。


(攻撃ガ来マス!)


 リーナはゼントの方に顔を向けるとスッと左手を水平に振った。


 ズン!!!


 ゼントは衝撃波のような物に弾かれ遥か後方の吹っ飛んで砂山に激突した。


「ゲホッ!」


(な、なんだこの力は!!リーナさんはC魔素が少ないから魔法が上手くコントロールできないんじゃないのか?)


(コレハ魔法デハアリマセン、次キマス!)


 強烈な風の刃が砂埃を上げながら襲ってきた。


 ゼントは絶対シールドを展開するが、風の刃は絶対シールドをいとも簡単に破壊したその一瞬!ゼントは瞬歩を使いかろうじて躱していた。


 以前のゼントならば真っ二つになっていたはずだが、ばあちゃんの特訓で体が反応することが出来たのだ。


(魔法じゃなければ何だっていうんだ!)


(アレハタダ単ニ魔力ヲ放出シテイルダケデス。)


(なにぃ!! 2撃目は絶対シールドが効かなかったぞ!)


(有リ余ル魔力ガアルカラデキル技デス。ソレヨリ、ヴェノノ使用ヲオ勧メシマス。コノママデハ右手ガ落チマス。)


 ゼントの右手はほんのわずかな肉でつながっている状態でぶらぶらていた。


「ヴェノ、PSモード!」


 ヴェノが擬態していたジャケットが、ツナギの様にゼントの体に広がっていき体に筋肉のような形で張り付いていった。このモードだと体の欠損した部位を補填するだけではなく3倍まで筋力を強化と防御も兼ね備えている。いわゆるパワー〇スーツというやつだ。


(次、連続シテ来マス!)


 魔力で強引の引き起こされた風の刃が縦に横に斜めにと連続して飛んでくる。


 ゼントは紙一重でかわしながらリーナ近づいていくが5撃目の風の刃がゼントの右足に直撃した!


 ゼントは一瞬ひるむがヴェノに保護された右足は傷つくことなく、風刃は霧散していった。ヴェノの装甲は多重構造をしており中間に絶対シールドを展開している。最外装で攻撃の威力を弱めて絶対シールドで防ぐのだ。


(よし、これなら行けそうだ。何としてもリーナさんの動きを止めてコントローラと変異魔石を破壊するぞ。)


(主、リーナサンヘノ接近ハ危険デス。接近スレバマトモニ膨大ナ魔力ニヨル攻撃ヲ直接浴ビマス。)


(やるしかないだろう!)


 ゼントはヴェノの装甲を利用しながら嵐の様に突進してくる風の刃を凌いで接近していった。


 10mぐらいまで接近したその時、リーナがかっと目を見開いてゼントを見つめたのだ。生気のないグレーになっていた瞳が本来の薄いブルーに戻ると突然リーナが声を発した。


「え、ゼ、ゼント・・・・・」


「リーナさん!」


 ゼントは一瞬動きを止めリーナに呼び掛けた。

 リーナはゼントの呼びかけに応じるかのようにゆっくりとゼントに向かって手を伸ばすと驚いた様に自分の両手を確かめるかのように右手で左手をさすったり自身の体さすり始めた。


「え? あ、あ、なんで? い、いや—————————ああああああ。」


 リーナの叫び声に応じて大量の魔力が一瞬で放出され、辺りの空気は震わせ、黄色い砂をまきあがらせていた。


「うっ、何て魔力だ!」


 ゼントは絶対シールドを展開し、かろうじて吹き飛ばされるのを耐えていると、リーナの叫びが終わる一瞬魔力が急激に低下した。


(今だ!)


 ゼントはリーナの魔力が落ちたその瞬間に俊速を使いリーナの背後に回り込んだ。


(ウナジの部分・・・ここか!)


 ゼントはリーナのうなじの光る魔石をめがけて木刀の切っ先を突き立てた!


 ガキィ————————ン!!


 鈍い音がして木刀は魔力障壁に弾かれたのだ。

 木刀による攻撃に気が付いたリーナは後ろを向き戸惑いながら叫んだ。


「 ゼ、ゼント・・・何故?私を イヤ———————————————————————!!!」


 ゼントは叫び声と共に放たれた魔力の衝撃波をもろに受けて砂漠の上を水切りの石の様に弾かれながら吹き飛ばされていった。


(全身複雑骨折ニヨリ組織再生ニヨル活動可能ニナルマデ3分程要シマス。)


 ゼントは意識を失い絶望を告げるコネクトの声を聴くことは無かった。


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