打ち上げ花火
無数のファイアランスの炸裂からしばらく経ったが、周囲はまだ高温による熱で景色が陽炎で歪んで見えていた。
空には爆発により生じた粉塵と煙が暗雲として滞留し、至る所で稲光が発生している。
「くぅっ」
俺は魔力を使い果たし、呻き声と共に地面に突っ伏したが、俺の替わりにヴェルスが多重シールドを張りながら氷魔法で周囲の温度を下げてくれている。
「ゼントさん!」
「大丈夫だヴェルス。」
「すみません、まさかあれ程の威力があるとは思っていませんでした。」
「ああ、リーナさんがあれ程の魔力を持っているとは思わなかったよ。これで奴は終わりだ。」
リーナさんが心配そうに近づいてきた。
「リーナさん、助けに来てくれてありがとう。」
「いえ、私一人では何もできませんでした。ヴェルスさんとミュウさんの協力があったからです。」
「————————つ!」
地面から妙な微振動が伝わってくる。
・・・・・グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ————!!
「なっ!」
「いえ、そんな馬鹿なことが・・・。」
「あ、あいつまだ生きてるぞ!!」
黒煙が立ち込めるピラニアドラゴンデザスターがいた場所からゆっくりと黒い塊が出現し始めた。
黒い塊が少しずつ本来の姿に戻りはじめると一気に魔力が溢れ始めた・・・・・。
「あれだけの熱量でも倒せいないなんて・・・・。」
もう打つ手はないのか・・・・・。
奴は元々物凄い熱量をだしていたってことは熱に強いということか・・・。
雷撃もアイスニードルも光の刃もソニックアタックも、無数のファイアランスすら通じない・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
待てよ、無数・・・・・・・・・・・・・・・・まだやってみる手はあるぞ!
「リーナさん、まだ魔力は残っていますか?」
「ええ、まだ半分くらい残っています・・・それでもあれを倒すことなんてできませんよ!」
リーナさんは絶望的な声をあげた。
「その半分を俺に使わせてください。ヴェルス、ミュウも残っている魔力を俺にくれないか?」
「ゼントさん、何か考えがあるのですね。」
「ああ、残り少ないが我の魔力も全てゼントにやる!」
ヴェルスやミュウの言葉を聞いてリーナさんは言った。
「ゼントさん、まだ希望はあるのですね・・・それなら私の残りの魔力は全て使ってください!」
「みんな、ありがとう! ブルーお前のスキルを俺にシェアしてくれ!」
「キャウ―!」
ブルーは一声鳴くと俺の肩にとまってきた。
俺は木刀を両手で構えると皆に言った。
「皆行くぞ!」
リーナさんは左手側をヴェルスは右手側をミュウは俺の肩に手を当てて魔力を込めた。
「コネクト、頼む!」
(了解!各自ノ魔力ヲリンクシ、木刀ニ集約シマス。)
皆とのリンクが完了し、膨大な魔力が木刀に集中してきた。
(え、これがリンクなの?不思議な感覚、皆と一体になっていく・・・。)
ピラニアドラゴンデザスターは完全の本来の姿に戻っており、以前以上に魔力を高めている。ブルーブレスを使う気だ!!
「いい子だからじっとしてろよ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふーっ、なんてファイアランスだ、辺り一面が焼けただれているぞ。」
「まったくのう、ケインの娘さんにあんな魔力があったとは知らなんだな。ウイリアム、あんたは知っとったのか?」
「ああ、ケインに聞いたことはあるが、これほどの力とは思っていなかったよ。」
「ヴェルスさんにいただいた多重シールド力が無かったら今頃黒焦げでしたね。」
「・・・・・つ、まだ終わっとらんぞ!」
ゼンの言葉に全員が硬直した。
爆発の中心にただよう煙の中に再び黒い塊が浮かびあがってきたのだ。
「化け物だ!あんな奴倒せるわけない。世界の終わりだ!」
カール教授が絶望的な叫び声をあげた。
「まて、ゼントらはまだあきらめておらんぞ!」
ゼント達がいる場所から再び膨大な魔力が湧き上がってきたのだ。
「あいつらまだやる気だな。」
「あれは!」
ゼント達がいる場所にさっきと同じ様に無数のファイアランスが出現した。
「無理だ! 同じ技じゃあ奴は倒せないぞ!!」
「いや、あやつは何か企んどるぞ!」
無数のファイアランスは合体しながら数を減らすとともに赤から黄色、さらには青色に変化していった。
ファイアランスの合体は次々に起こり最後には白く輝く巨大なファイアランスが出来ていた。
「まさか・・・あれは。」
ゼンが目を見開いてファイアランスを指さしたその時、白く輝くファイアランスに向かってピラニアドラゴンデザスターはブルーブレスを解き放った!
ブルーブレスは轟音と共に周囲の土地を溶かしながら白いファイアランス向かって行く・・・ゼント達はファイアランス全魔力を注いでいるため防御が出来ていない。
ブルーブレスがゼント達に到達し全てが終わってしまうと思われたその瞬間!白く輝くファイアランスを中心に同心円状に巨大な空間の歪みが出来るとファイアランスは一瞬でその姿を消した!
カッツ——————————————————————————————ン!!!!!!!
快音と共に白く輝くファイアランスがピラニアドラゴンデザスターを串刺しにしていた。
さらに同心円状の空間の歪は半球形上になり、ピラニアドラゴンデザスターの放出したブルーブレスを押し戻し、そのブレスと共にピラニアドラゴンデザスターを飲み込んでいったのだ。
ピラニアドラゴンデザスターを飲み込んだ空間の歪みは球形になると弾かれたように一瞬で上空へ暗雲を弾き飛ばしながら消えて行き、その後から物凄い衝撃波が伝わってきた。
「あ、あれはまさしく伝説のスキル『ホーリーランス』、いや、最後の動きはちと違うような気がするがのう。」
「ホーリーランスって、昔の勇者が使ったていう技か?」
「そうじゃ、勇者と召喚獣である聖獣とによりなせる業じゃ。勇者がホーリーランスを作り、聖獣の力で超高速で敵に打ち込む技じゃ!あの青い鳥は聖獣じゃやったのか。」
空間の歪の跳躍により暗雲に出来た穴は急激に広がり雲間から太陽の光が差してきた。
カァ————————————————!!!!!!
空が眩いばかりに光輝くいた。
「あ、あの光は一体なんだ!」
「あれは奴が宙でチリとなったということじゃ!」
「そら?」
「ああ、彼奴はホーリーランスを放った後、奴を空間に閉じ込めこの星の外へと放ったのじゃ。」
「星の外だって!」
「ああ、おそらく地上であいつをホーリーランスで殲滅したら、双方の膨大な熱量による暴発でここにいる皆が、いやゴード国そのものが全滅してしまっていただろう。おそらく聖獣のスキルを使って膨大な熱量を封じ込め、星の外まで弾き飛ばしたのじゃ。」
「彼奴そんなことを・・・。」
「あれはゼントだけの力じゃない、ホーリーランスを再現できたのも皆の力を合わせることが出来たからじゃ。ただ、ゼントは皆の力を一つにを繋げるスキルを持っていたと言う事だけじゃ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「やった・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺は全ての力を使い果たし後ろに倒れそうになったのを3人が支えてくれた。
「これで本当に終わったのですね・・・。」
ヴェルスが目を潤ませながら俺の顔を覗き込んだ来た。
「ああ、ブルーブレスごと宇宙に打ち上げてやったよ。流石に奴でも生きてはいないだろう。」
「でっかい打ち上げ花火だったな。」
ミュウが空を仰ぎ見ながら言った。
「ゼ、ゼントさん、本当に助かって良かった・・・・。」
リーナさんは既に涙で顔がくしゃくしゃになっていた。
「ああ、リーナさん、いや、皆のおかげだ! ブルー、スキルをシェアしてくれ手ありがとう!」
「キャ、キャ、キャウー!!」
ブルーも泣きそうな声を出している。
「さあ、行きましょう。ウイリアムさん達が迎えに来てくれましたよ。」
晩秋の午後の低い太陽の光の中、魔動車が長い影を伸ばしながらこちらに近づいてきた。




