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フィールドビヨンドへ

 俺は週4日ばあちゃんの所で修行し、2日はヴェルス達と一緒に依頼をこなし、週1回は休むという生活をしながら1カ月程経過していた。未だにばあちゃんに一撃も当てられないのは悔しいが、何回かに1回はばあちゃんの攻撃を避けられるようになった。


 今日は依頼をこなす日なので朝からギルドの受付に来ており、依頼の掲示板を見ているとエーバさんが声をかけてきた。


「ゼントさん達、すみませんが、こちらの受付まで来ていただけませんか?」


「はい、何でしょうか?」


 俺達がエーバさんの受付に行った。


「ゼントさん、指名依頼では無いのですが、ギルマスから直接依頼したい案件があるということですので、ギルマスの部屋に行ったいただけますか。」


「は、はい分かりました。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ゼント君達、王都のフィールドビヨンドに行ってみないか?」


 俺達が部屋に入ってからのギルマス第一声がこれだ。


「いや、どういうことでしょうか?」


「まあ、そこのソファーに座りたまえ。」


 俺達はソファーに腰を下ろしてギルマスの話を聞き始めた。


「先日アーシオ遺跡で新しい遺物が発見されたのは知っているかね。」


「ええ、街でかなりの噂になっていますからね。」


 そう、数日前にアーシオ遺跡の10階層から今まで見たことが無い遺物が発見されたという噂が流れたのだ。具体的に何かということは分からないが数年ぶりに発掘された新しい遺物ということで皆興奮していた。


「その遺物を王都に運ぶ護衛を頼みたいのだが、どうだろうか?」


 ん————結構厄介な仕事だよな。またオーマ国の妨害がありそうだし。でも、仕事で王都にいけるのはいいかも?


 俺が少し悩んだ顔をしていると・・・。


「ゼント、フィールドビヨンドに行ってみたいって言ってたじゃないか、いい機会だろ?嫌なのか?」


 ミュウが背中を押してきた。


「いや、またオーマ国の妨害があると嫌だと思って。」


「私達は既にオーマ国に目を付けられていますので、オナシティにいても状況は一緒かと。」


「ん————ヴェルスが言うことも確かだね。ところで、遺物の運搬の責任者は誰ですか?」


「ああ、責任者はウイリアムだ。他にカール教授と一級騎士が数名と聞いている。彼の魔動車での移動になるからそんなに日数はかからないようだ。報酬は国からでるからかなりの金額だぞ。」


 騎士? ああでも嫌なアスコナはもういなかったか。魔動車なら快適だし行ってみるか。あ、そうだばあちゃんには少し特訓を休むことを伝えておこう。


「分かりました。この依頼を受けることにします。」


「そうか、ありがとう。君達はウイリアムからの指名だったんだ、断られたらあいつに思い切りどやされるところだった。」


「ところで出発はいつですか?」


「護衛が決まったので出発は3日後だ。宿の違約金が必要ならそれもギルドから出そう。」


「大丈夫です。丁度明日で予約が一旦切れるところだったので。」


「それじゃあ頼んだぞ。詳しい事はエーバに聞いてくれ。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 エーバさんに集合場所や依頼料を聞いてから俺達はギルドを後にしてばあちゃんの所に向かった。


「ほう、王都に護衛で行くのか?」


「ああ、それで暫らく特訓に来れなくなるんだ。」


「まあ、仕事は優先せにゃあならんから仕方ないな。戻ってきたらまたしごいてやるから覚悟しておきな。」


「ああ、頼むよ。」


「しかし、遺物運搬の護衛とは面白そうじゃのう。」


 この時ばあちゃんがにやりとしたことに俺は気が付いていなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 出発の日朝、5時前に俺達は領主様の屋敷に来ていた。季節は晩秋、吐く息は白くなっているが、先日買った防寒着のお蔭で寒くはない。


「おはようございます、ゼントさん」


「あ、リーナさんおはようございます。」


 屋敷の門をくぐると、そこには旅に出るような恰好をしたリーナさんが立っていた。


「あれ、リーナさんその恰好は?」


「あれ、聞いてませんか?私はザラス家の代表として王都まで行くんですよ。」


「え、そうだったんですか?よろしくお願いします。」


「いえ、こちらこそ。それともう一人・・・。」


 リーナさんが言いかけたところで俺は左の肩を思い切り叩かれた。


「ゼント―儂も一緒に行くとこにしたぞ——!」


「え?ばあちゃんも??」


 そこには旅行のバックを持ったエルフの美女バアチャンが立っていた。


「ケインとは昔からの知り合いでな、儂も行くと言ったら二つ返事じゃったわい。」

「フィールドビヨンドに行くのは久しぶりじゃな。あそこは魚がうまいからのう。」


「もしかして刺身食えるのか?」


「海鮮丼なんか最高じゃぞ、かっかっかっかっ!!」


 うん、今回の依頼受けといて本当に良かった。


 そんなことを話しているとカペラさんとシルビアさんが出てきた。


「やあ、白銀の翼の皆さん、お久しぶりです。」


「ゼント君お久しぶり。」


「カペラさんとシルビアさんお久しぶりです。やっぱりリーナさんの護衛ということですか?」


「ええ、そうよ、それと私はリーナ様の侍女もするのよ。」


  思わずシルビアさんのメイド服姿を思い浮かべてしまった。


(ゼントさん、そういうのが好きなんですか?)


 ヴェルスが念話で話しかけてきた。


(いや、というわけでは・・・・つ、ヴェルス何心読んでるの!。)


(いや、そのう・・・・お好きなら今度・・・・。)


 ヴェルスのメイド姿・・・良いかも・・・と、とりあえず話題を変えよう。


「今回は護衛も含めて人数が少ないんですね?以前カンバーイ国に行かれた時は護衛の方が大勢いて侍女の方も二人いましたよね。」


「今回はウイリアムさんの魔動車での移動になりますので、乗車出来る人数に限りがあるんですよ。」


「あ、確かにそんなに大勢は乗れませんね。」


「皆そろったようだな、こちらに集合してくれ。」


 俺達はケイン領主の元に集合した。


「これから、君達にはフィールドビヨンドまで発掘物運搬の護衛をしてもらう。運搬の責任者はウイリアム教授になる。運搬に同行するメンバーだが、カール教授と娘のリーナ、護衛として一等騎士のカペラとシルビア、白銀の翼の3名、それとエルフの剣聖ゼン・タナミ氏が特別に同行してくれることになった。」


 全部で9名か、10人乗りぐらいだったから意外ときついかも。


「今回はウイリアム教授のご好意で、移動の為に魔動車を提供してもらうことになっ為、片道5日ぐらいで到着するはずだが、アーシオ遺跡発掘時の様な妨害工作があるかもしれないので十分気をつけて欲しい。」


「それと、オナシティ内で魔動車を動かすわけにはいかないので、そこに用意した馬車でオナシティの外まで移動してもらう。」


 馬車は2台あり、一台の馬車の後ろには荷車がありその上に直方体の箱が乗せられていた。長さは4mぐらいある巨大な棺桶といった感じだ。


 あれに遺物が入っているのか。


 全員馬車に乗り込み出発の準備をした。


 馬車の傍でリーナさんがご両親やウイリアムさんと話をしているのが窓越しに見えた。


「リーナすまない、本来なら私達のどちらかが行くべきなのだが、アーシオ遺跡とリセスの事があるので今オナシティを離れるわけにはいかない。」


「リーナ、ごめんなさい、まさかこんなこんなタイミングで・・・出来るとは思わなかったので。」


 リセスさんは頬を少し赤くしていた。


「新しい遺物が見つかったとなると、より警備を厳重にしなければなりませんから仕方ありませんわ。お母さまも体を大切にしてくださいね。私の方はウイリアムさんとゼントさん達が一緒なので大丈夫ですよ。」


「そうか、ウイリアム、娘の事は頼んだぞ。」


「ああ、任せておけ!」


 リーナさん達がもう一つの馬車に乗り込むと2台の馬車が動き始めた。リーナさんが乗った馬車が箱を乗せた荷車を引いて先に動きだした。


 馬車は暫らく進むとオナシティの南門に到達し、南門をくぐる頃には太陽の光が周りの風景を赤く染めていた。


 いや、なんか中学の時の修学旅行を思い出すな。あの時はバスだったけど・・・知らない所に行くのはワクワクする。


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