修羅場
「ミュウさん、ここですね。」
「ああ、ここだな。ゼントの匂いがするから間違いない。」
「キャッ、キャウー」
ミュウとヴェルスとブルーはゼン・タナミの門の前に立っていた。
ゼントが剣術の訓練に行き始めてから、毎日の様に組織再生スキルで魔力を使い果たしてボロボロになって帰ってくるので、二人と一羽は心配になり特訓中のゼントの様子を見に来たのだ。
「「ごめんくださーい!」」
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丁度その頃、ゼントは昼食が終わり縁側傍の座敷で気持ち良さそうにばあちゃんに耳かきをしてもらっていた。
「やっぱり、ばーちゃんの耳かきは最高だよな—。」
「そうじゃろなー。お前は本当に儂の耳かきが好きじゃったからなー。」
「「ごめんくださーい!」」
「おや、誰か来たようじゃな。」
「門のカギは開いとるから、用があるなら勝手に中に入って裏に回っておくれー!」
「ばあちゃん、出なくていいのか?」
「いいんじゃよ、お前の耳かきをしている時は死んだ爺様を見ているようで、ほんに懐かしいんじゃ。お前は爺様に良く似とるからのう。」
「そうか?」
「そうさね、前世じゃあ祖母と孫の関係だったが、今なら爺様の代わりにお前と結婚することも出るんじゃぞ。」
(告:タダチニ目ヲ開ケルコトヲオススメシマス。)
(なんだ、コネクト? せっかく気持ちが良いのに邪魔をしないでくれないか。)
「ゼ、ゼントさん!!!」
「えっ?」
ゼントは予期しないヴェルスの声に目を開けると、そこには鬼の形相のヴェルスが立っていた。
しまった!中身がばあちゃんだと思って安心しきっていたけど、美人のエルフのお姉さんに膝枕してもらい耳かきしてもらっている状況は、どう見ても浮気しているようにしか見えない!!
「ゼ、ゼントさん!!修行ってこの事だったんですか!!」
ヴェルスが鬼の形相のまま土足で縁側に上がってきた。
「お、お前は誰じゃ?」
「ば、ばーちゃん!」
ミュウは縁側から上がって来たかと思うと俺を押しのけてゼンの膝に頭をのせてゴロゴロ言い出した。
「え?いやお前はなんじゃー?」
ゼントはこの様子を見ながら呟いた。
「カ、カオスだ・・・。」
「キャウ―!」
ブルーがゼントの頭にとまって一声鳴いていた。
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「フィールドクリーンナップ」
ヴェルスが縁側と畳についた靴跡を魔法で綺麗にして座布団に正座をしてばあちゃんと相対している。
「失礼しました。ここが土足禁止の場所とは知りませんでした。」
「土足で上がってしまったことはお詫びしますが、貴女ゼントさんの何なんですか?」
ヴェルスはまだ確実に怒っているな?
「ゼント、この綺麗なおなごは、何か?お前のあれか?」
「ばあちゃん、茶化さない!」
「ゴロゴロゴロ。」
「それとここでゴロゴロ言ってるのは誰じゃ?」
ミュウはおいといて、まずはヴェルスの誤解を解かないとな。
「ヴェルス、このエルフの女性は俺のばあちゃんが転生した人なんだ。」
「そんなはずがありません!ゼントさんの知り合いばかりこの世界に転生して、しかも巡り合う確率なんて宇宙の中からたった一つの小石を探し出すようなものです!!」
「いや、でもそこのミュウを見て!彼女に甘えまくっているだろう。ミュウは転生する前はばあちゃんにああやって甘えまくってたからな。匂いか何かで気が付いたんだろう。」
「なんじゃと!このおなごは猫のミュウか?」
「ああ、そうだよミュウがこの世界のクーマオ族に転生していたんだ。ミュウ、人化を解いてみて。」
「分かった、そっちの方が甘えやすいな。」
ミュウが光輝いたかと思うと豹ぐらいのサイズの猫になり、さらに激しくゴロゴロ言い出した。
「おお、この頭の茶色は確かにミュウじゃな・・・サイズはちとデカいが。」
「ほ、本当にゼントさんのおばあさんなんですか?」
「ああ、そうじゃ、転生する前は確かにそうじゃった。じゃが、今は血が繋がっているわけではない。儂がゼントを口説いたって問題ないじゃろう?なあ、お嬢さん!」
やべ、ばあちゃん完全にヴェルスをいじりだした。
ヴェルスの方を見ると・・・。
「いえ、問題あります。ゼントさんは、ゼントさんは・・・・・・。」
泣き出しそう・・・。
「ばあちゃん、ヴェルスをいじるなよ。」
「ほう、この娘さんはヴェルスって言うのかい?女神様と一緒の名前じゃのう。」
「それはそうだ、ウルスの妹なんだから。」
「な、何い! 嘘じゃろー!」
「いや、嘘ついても仕方ないし。俺はウルスに助けてもらったって言っただろう。」
「いや、そりゃー・・・。」
ばあちゃんは顔を真っ青にして脂汗をだらだら垂らしはじめた。
「も、申し訳ございませんでした!!」
ばあちゃんは畳に頭を擦り付けて土下座をした。
うん、見事な豹変ぶり。
「え、あ、あのう・・・。」
ばあちゃんの豹変ぶりにヴェルスが完全に戸惑っている。
「ゴホン!」
俺はわざとらしく咳ばらいをして話始めた。
「ヴェルスは、俺のよ・・・、いや、つ・・・・・。」
やばい、何て説明すればいいんだ?嫁?妻?彼女?・・・愛人?いや、愛人は罪悪感があるな・・・。
「わ、わ、私はゼントさんの妻です!!!」
ヴェルスさん、ストレート!
「なんと罰当たりな、ゼント!お前は女神様をたぶらかしたのかー!!」
「いや、ばあちゃん、たぶらかしてなんかいないから!」
「そうですよ、私はゼントさんが好きだから下界にいるのです。」
「ゴロゴロゴロ。」
「キャウ―!」
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再び仕切り直して今は卓袱台を挟んで皆で座ってお茶を飲んでいる。
「ゼントさんの愛人と間違えてしまい、本当に申し訳ありませんでした。」
ヴェルスが三つ指をついて謝っている。
「やめておくれよ、女神さんに謝られたら罰があたっちまうよ。貴方様をからかった私が悪いだからね。さあ、頭を上げておくれよ。」
「そうだよ、ばあちゃんがヴェルスをいじるからだよ。」
「何言ってるんだ、元はと言えばお前がヴェルスさん達に何も言ってなかったのが悪いんじゃろう。」
「やべ、確かに・・・。」
「まあ、なんだな、冴えないお前が女神様とクーマオ族の族長の娘を娶ったとは信じられんね。」
まあ、本人が一番信じられないんだけどね。
「まさか、この世界に来てひ孫を拝むことが出来るとは、転生してみるもんじゃな!かっかっかっかっかっー!」
「いや、まだ出来てないし・・・。」
「そうだ、元気な子を産むぞ!」
「ミュウ、まだ出来てないって・・・。」
「・・・・・・。」
ヴェルス真っ赤になっている。




