特訓じゃ!
今年もよろしくお願いします。
「お前は魔物との戦いには慣れているが、魔剣士との対人戦はアクラスという奴と戦いが初めてだったんじゃろ。」
ケイン領主と模擬戦をやったことはあったけど、真剣勝負はアクラスが初めてだった。
「ああ、確かに、命を懸ける様な殺し合いは初めてだった。」
「それなら儂が模擬戦の相手をしてやろう。エルフの剣聖と言われた儂が相手をしてやるんだからありがたく思え!」
剣聖・・・・。
「いや、ちょっと待ってばあちゃん、ばあちゃんって剣聖なの?しかもエルフの?」
「そうじゃ、尊敬したか?」
「いや、そうじゃなくて、剣聖を相手にしたら俺の命がいくつあっても足りないじゃあないか。」
「まあ、前世の孫だから多少加減はしてやるがの。そうじゃ、お前いろんなスキル持ってるんじゃろ、ヒールとか使えんのか?ちょっとスキルを見せてみい。」
「あ、ああ」
俺はステータスオープンでばあちゃんにスキルを見せてやった。
「ふむふむふむ、お前異常な数のスキルを持っておるな。ただ、スキルの数に対して魔力量が少ないのが勿体無いのう。これでは全てのスキルを生かしきれんじゃろ。」
痛いところをつかれた、スキルのコントロールには長けているので省エネな使い方ができるようになってはいるけど、絶対的な魔力の量が必要なピラニアドラゴンの『ブルーブレス』なんかはバスバーナー程度の火力しか出せないのだ。
「お、これは面白いスキルをもっているのう。『組織再生スキル』とは最高のスキルじゃな!」
ばあちゃんが俺を見てめちゃくちゃ悪そうな笑顔でニヤリとした。
「このスキルがあれば半殺しにしても大丈夫ということじゃな。」
いや、まて、半殺しにする気満々なのか?
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俺達は裏庭に来ている。裏庭はばあちゃんの剣術の稽古用にかなりの広さがとられているのだ。
「まずはお前がどのくらいの腕か見てやるから、その木刀で思いっきりかかってきなさい。ただし、使ってよいスキルは組織再生スキルだけじゃぞ。」
「分かった。」
俺は木刀を大上段に構えて一気にばあちゃんに切り込んだ!
かこーん・・・ドン!
一瞬俺は何が起きたか分からないまま俺は裏庭の生垣に突き刺さっていた。
「痛え———!」
「ふむ、速さはそれなりだが斬撃が軽いな。」
俺は脇腹抱えながらよろよろと生垣から抜け出てきた。
ばあちゃんの動きが全く分からなかった!
スキル俊速でも使ったのではないかと思ったほどだ!
「これなら鍛え甲斐がありそうじゃわい。まずはその軽い斬撃から鍛えねばな!」
いや、その笑顔怖い・・・。
「ちょっとその木刀を見せてみな。」
俺はばあちゃんに相棒の木刀を渡した。
「ふむ、こ、これは『ユグドラシル』の木刀かい!また大層な物を持ってるな。」
「ああ、それはこちらに転移した時に女神のウルスに貰ったんだ。」
「成程、斬撃が軽いのはこの木刀と光の刃が原因かい。」
「えっ、そうなのか?」
「軽くて強度はオリハルコンを上回る最高の素材じゃが、この軽いというのが仇となったな。さらに光の刃を使えば石すら切断することが出来るから力を使う必要がないんじゃな。結果としてお前さんの剣速は速いが斬撃に重さが無いんじゃ。」
「確かに光の刃にはさんざんお世話になったな。(主に調理用の台の石を切る時に)」
「次からは、ほれ、これを使ってみなさい。」
ばあちゃんは縁側に置いてあった木刀を俺に向かって放り投げた。
俺は慌てて木刀をキャッチすると驚いた!
「お、重い!! 何これ?木なのか?」
「その木刀の中には鉛が仕込んであるからな。」
「いや、この重さは尋常じゃないよ!」
ケイン領主にオリハルコンの剣を持たせてもらったことがあったが、その倍くらいの重さがある。
「それは普段儂が鍛錬のために使っている木刀じゃよ。」
「いや、でも最初からこんなの使ったら肩や手首が持たないよ。」
「まあ、普通の人ならば持たんじゃろうし、普通の人ならこの木刀をいきなり使わせたりはせんよ。」
「いや、俺は普通の・・・。」
そう言いかけて気が付いた。
「そうか組織再生スキルか!」
「そうじゃ、それを使えば筋肉の疲労や損傷が短時間に回復できるから筋トレには最高のスキルじゃ!」
「よし、分かった、やるぞー」
「それじゃあまずは素振り10,000回からじゃな。」
「げげっ・・・!!」
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「おおい、ゼントや、そろそろお昼にしないか?」
「ああ、もうそんな時間か・・・。」
超重量の木刀の素振りによって生じる手、肩、腰の激痛に必死に耐えていたらそんなに時間が立っていたのか・・・。最初の頃よりは痛みは引いてきたがまだまともに振ることが出来ていない。
「昼食の準備は済んでいるから手を洗って上がってきなさい。」
「え、準備してくれたの?悪いよ、俺の分の昼食は持ってきたから大丈夫だって。」
「まあ、そんな遠慮せんでええよ。もっとも、この匂いを嗅いだら遠慮なんか出来んじゃろうががな。」
「え?この匂いはまさか・・・・。」
「味噌汁じゃね?」
「そうじゃ、味噌汁じゃよ! お前、この世界に来てから飲んでおらんじゃろう!」
俺は飛び上がるように縁側から家に入り味噌汁に駆け寄った。
「おお、本当に味噌汁だ!豆腐まで入っている!!」
「ゼント行儀悪いぞ、はよ手を洗ってこい!」
「わ、分かった!」
俺はダッシュで洗面所に行って手を洗って戻ってきた。
「オナシティに来て味噌と醤油はさんざん探したんだけど無かったんだ。もう半年以上も味噌汁飲んでなんだよー。ばあちゃんこの味噌どこで手に入れたの?」
「手に入れたんじゃあない、儂が作ったんじゃ。豆腐も手作りじゃぞ!」
「そう言えばばあちゃん転生する前に味噌作ってたなあ。」
「まあ、冷めないうちに早く食べなさい。」
「「いただきます。」」
俺は箸をもって拝んでから食べ始めた。
白いご飯に味噌汁にお新香、それと焼き魚というシンプルなものだが、本当に美味しい。
日本人の食事はこうでなくちゃいけない!うん、うん。
「美味い、美味い・・・。」
俺は嬉しくて少し涙を浮かべながら食べていた。
「よしよし、たんとお食べ。」
「ところで、ばあちゃん。」
「なんじゃ。」
「味噌があるということは醤油もあるのか?」
「醤油はなー。」
「うん、醤油は?」
「醤油はなー、残念ながら作り方を知らなんだ。」
ばあちゃんが非常に残念な顔をしている。
「作り方が分かれば作れるのか?」
「ああ、何とかなるはずじゃ、いや何とかしてみせるぞ。」
うん、強い意志を感じる。
「じゃあ、これを見て。」
俺はステータスオープンで、ばあちゃんに検索画面を見せた。
「こ、これはPCというやつか?」
「これは俺のスキルで『コネクト』って言うんだ。」
「ハジメマシテ、主ノオバアサマ。」
「しゃ、しゃべりおったぞ!!」
ばあちゃんが驚いて少し後ずさりをした。
「大丈夫!取って食ったりはしないから。コネクト、醤油の作り方を調べてくれ。」
「了解!」
ステータス画面に直ぐに醤油の作り方が出てきた。
「ほ、ほう———!! 便利なもんじゃの—!」
「ドウイタシマシテ!」
「一体どこからこの情報を持って来とるんじゃ?」
「いや、それが俺も分からないんだ・・・。」
「なんじゃい、自分のスキルの事も分からんのか?」
「まあ、コネクトに聞いても分からなかったんでね。」
「まあ、いいわい。これで醤油が作れるわい!というかゼント、作り方が分かっているなら何故作らなかったんじゃ?」
「いや、ソーリの森を踏破している時は材料がなかったし、味噌や醤油は一か所に定住しないと作れないだろう。俺はまだ定住先を決めてないし。」
「そういうことかい、それなら仕方ないかね。」
「そうだ、ばあちゃん、味噌を少し譲ってくれないか?それと醤油が出来たらそれも譲ってほしいんだけど。」
「ああ・・・・まてよ、譲るわけにはいかんな。」
「何でだよ、タダってわけじゃないぞ。お金ならちゃんと払うよ。」
「いや、お金の問題じゃあないわい。」
「それじゃあ、物々交換ならどうだ?俺の持っている食物素材と交換ていうのは。ホーンラットからピラニアドラゴンまでいろいろあるぞ。」
「ピラニアドラゴンとな、お前そんな奴まで倒したんかい?」
「ああ、死にそうな思いしたけどね。それならいいか?」
「あ、いやそれでもだめじゃ。」
「なら、どうしたら譲ってくれるのさ。」
「そうじゃな、お前が儂に一撃を食らわせたら味噌をくれてやろう。醤油も出来たらくれてやるわい。」
「ほ、本当か?」
俄然やる気が出てきた。
「本当じゃ、せいぜい踏ん張れよ!」
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ばあちゃんの所での特訓初日の夜、俺は木刀を杖にして足を引きずりながら宿に戻ってきた。素振り10,000回でなんとかあの木刀を振るうことができるようになった後、ばあちゃんに稽古をつけてもらいコテンパンにやられたのだ。いくら組織再生スキルがあっても魔力がなくなるまで使ってしまえば体を直すことは出来ないのだ・・・ヒールを使う魔力すら残っていない。
「た、ただいまー。」
俺は5号室のドアを開けて部屋の中に倒れこんだ。
「ゼ、ゼントさん一体どうしたんですか!!」
ヴェルスが悲鳴に近い声で慌てて俺に駆け寄ってきた。
「ゼント―、誰にやられた————!! 我が敵をとってきてやるぞー。
いや、ミュウ、俺まだ死んでないから。
「キャウ、キャ、キャウ―!!!」
ブルーもそんなに怒らなくていいから。
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ヴェルスにヒールをかけてもらった後、俺は特訓の内容を話した。
「す、凄い特訓ですね、ゼントさんもうやめてください。組織再生スキルがあっても魔力が無くなったら終わりですからね!」
「そうだお前がいなくなったら我はどうしたら良いんだ!」
ミュウ、だから俺を殺すなって。
「キャ、キャ、キャ!」
ブルー、ありがとな。
「大丈夫だよ、師匠も殺す気でやっているわけじゃあないので・・・・多分。」




