戦士の休息
「ツュン、ツュン、ツュン、 ツュン 注1」
注1:ブルーがスズメの鳴きまねをしています・・・ちょっと進歩。
ん・・周りが明るい・・・朝か、スズメのような鳴き声も聞こえる。
ドアの隙間から差し込む光は明るく、既に太陽がかなり高く昇っていることが伺える。
左右を見渡すと・・・いつもの様にミュウとヴェルスがいてくれる。
初めは恥ずかしかったけど、慣れるといない方が不安になりそうだな。
夕べヴェルスとミュウにキスをされた後、もう少しで一線を超えてしまいそうになったけど、皆疲れていたのでお風呂に入った後は爆睡してしまっていた。
まあ、彼女いない歴=年齢の俺にとっての初経験が3〇というのも何というか・・・。
「ゼントさん、起きてらっしゃるんですか?」
「ヴェルス、起こしちゃったかな?」
「いえ、もうこんな時間ですから、そろそろ起きないと。」
「まあ、ここんところ慌ただしかったから、ゆっくりしていてもいいよ。」
「そうですね、ゼントさんと一緒に寝ていられるなら、このまま明日まで寝てましょうか?」
「はは、それもいいかな。」
お互いに笑いあった後、俺はヴェルスの目をじっと見つめて話し始めた。
「ねえ、ヴェルス、ヴェルスは謹慎中で地上に来ているけど、謹慎が解ければ女神に戻るんだよね?」
「・・・・つ、確かにそういうことになりますね・・・。」
ヴェルスは俯きながら頷いた。
「女神様の相手が俺なんかで良いのか?」
俺はどうしてもその点が引っかかっていたので思い切って聞いてみた。
「私が異世界からきた少年を初めて見たのが、ウルス姉さんの天界の鏡を通してでした。」
ヴェルスは淡々と話し始めた。
「あの時は光の刃で草刈りをしながら進んでいる少年がただ珍しくて見始めたのですが、満身創痍になりながらもファイアボーアと真剣に戦う様が気になってしまい、最後に助かった時は本当に良かったと思いました。」
「その少年の事が気になり出したのはその時からなんです。天界の鏡を使いちょくちょくその少年の事を見ていたのです。その少年がスピアブルに串刺しになった時は思わず地上に顕現しそうになったのですが姉さんに止まられました。少年はスピアブルの首を切り落とすため、串刺しになったんだと姉さんに言われた時は少年の勇気には驚きました。」
あ、あれはポーション頼りの一か八かの作戦だったんだけどね。串刺しになって意識ぶっ飛んだらそのままあの世だったな——。今考えても凄いことをやったもんだ。
「少年がどんどん強くなってソーリの森の旅を苦も無くこなすようになった頃、少年がユグドラシルの実を食べてしまった時は本当に驚き、焦りました。少年が頑張ってここまでしてきたことが全て無駄になってしまう事が許せなくなって、勢いで地上に来てしまったんです。あの後、創造神様に物凄く怒られたのですが、後悔はありませんでした。だってその少年、ゼントさんと初めて会うことが出来たのですから。」
ヴェルスの言葉には力がこもっていた。
「それから、ソーリの森を出た後、私は謹慎ということで地上に降りたわけですが、実はそれは嘘なんです・・・。」
ヴェルスの表情に陰りが見える。
「ゼントさんがユグドラシルの実を食べても元気であることについては天界では由々しき問題と認識されました。一体この少年はどの様な力をもっていて、それをどの様に使うのか、この世界に破滅をもたらしはしないか、そんなことが天界で論議され、その結果として誰かを監視に向かわせようという話になったのです。」
やっぱりそうだよな。こんな変なスキルもってるんだし。
俺が納得したような態度をしているとヴェルスは驚いたように
「怒らないんですか?」
「まあ、そんな事だと思っていたよ。」
俺の回答を聴いてヴェルスは安堵の表情になり話を続けた。
「創造神様が監視役を募った時に私が真っ先に手を上げました。この人を守ってあげたいという庇護欲と一緒に居たいという気持ちが抑えきれなかったからです。創造神様に怒られてしまいますが、本当のことを言ってしまうと監視なんてどうでもよかったのです。ゼントさんと直接会った私はこの人がこの世界を破滅に導くような人でないことは一番よく知っていたから・・・。」
「ところが、私って本当に駄目ですよね・・・。ゼントさんを守るつもりだったのですが、助けれてばっかりで・・・・。そう、ゼントさんに助けられることで気づいたことがあります・・・・・私はこの青年が好きだということです。」
少しの沈黙をおいてヴェルスは
「お願いします、こんな駄目な私ですが人として一生ゼントさん共に生きさせてください。」
ヴェルスの目は潤んでおり、今にも泣き出しそうだった。
女性にここまで言わせて、うだうだ言うようなら男じゃない!
「こ、こんな俺で良ければ一生お願いします。」
うっ、噛んじまったし言葉がガチガチ。
ヴェルスは嬉し涙を浮かべながら抱き付いてきた。
そんなヴェルスの頭を撫でながら俺は
「あーっと、ヴェルスが駄目だなんてこと絶対にないから、今回の件だってヴェルスじゃなきゃあ奴らを見つけることはできなかった分けだし。もっと自信をもってやっていこうよ。ね!」
ヴェルスは小さく頷きながら顔を上げて俺にキスをした。
「ゼント! 家族が増えて良かったね!」
「わっ!」
俺の背中からミュウが抱き着いてきたので思いっきりドキッとした!
「ミュウ、起きてたのか・・・・って、もしかして今の話聞いてた?」
「ああ、ほとんど聞いていたぞ。ヴェルスもミュウと一緒でゼントのお嫁さんになるんだな。」
「ええ、そうですよ。」
ヴェルスがニコニコしながらミュウに答えていた。
「え? ミュウが俺のお嫁さん?・・・・それでいいのか?」
「何を言ってるだゼント、ゼントに戦いで負けた時から我はゼントのものだ。強者の子孫を残すことがクーマオ族にとって最高の名誉だし、なによりそれがゼントだったって事が我にとって最高の事だったんだ!」
ミュウはそう言うと俺にキスをしてきた。昨晩の激突ではなく優しい甘いキスだった・・・。




