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リジェネレーション

 ヴェルスとゼントは組織再生スキルのおかげでヴェノの浸食を食い止めることが出来ていたが、組織再生と浸食の速度が拮抗しており、ヴェルスの再生が出来ないでいた。


「ヴェノヲ解析シテヴェノノ浸食ヲ止メル必要ガアリマス。」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ヴェノノ解析完了!」


「個体名『ヴェノ126-4α』、変形型バトルスーツ、人造細胞ニ魔素トコントロールユニットヲ追加スルコトニヨリ防御、攻撃能力ヲ飛躍的ニ向上サセルシステム。形態ヲ自在ニ変形スル事ガ可能。現在制御ユニットガ損傷シテオリ制御不能ノ状態。不足シテイル細胞ヲ人体カラ取得シ自身ノ活動ヲ維持シヨウトシテイル。現在ノ外観ハ、コノ個体ガ損傷スル前ニ維持シテイタ形態ト考エラレル。」


「ヴェノニアクセスシ、我ノコントロール下ニ置キ浸食ヲトメル。」


「パスコード******入力・・・アクセス拒否 」


「パスコード******入力・・・アクセス拒否」

・・・・・・・・・・・・・・・・

「パスコード**********入力・・・アクセス拒否」


 ゼントの頭の中にコネクトの声がひたすら響いていた。


「別経路デノ侵入ヲ試ミル。」


 コネクトはスクルスがヴェノに埋め込んだコントロールチップからの侵入を試み始めた。


「魔力パターンA********付加・・・アクセス拒否」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「魔力パターンB********付加・・・アクセス拒否」


「アクセススルニハ正確ナスクルスノ魔力パターンガ必要、過去ノデータヲ解析スル。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ゼントがヴェノに飲み込まれてから既に30分以上経過していた。


 ミュウはヴィンスと共に黒い塊をじっと見つめていた。ミュウの肩にとまったブルーも心配そうに見守っていた。


「なかなか戻らないね・・・・・・。」


「でも、ヴェノの姿になっていないからヴェノの浸食を食い止めてはいるようだな。」


 その時、部屋の隅でまばゆいばかりの発光現象が起こった!


「しまった、あの女!」


 ヴィンスがスクルスに駆け寄るとスクルスは光と共に消えていった。


「くそ、魔素も体力も完全に失っていたので油断していたな。」


 ミュウが駆け寄ってきて驚いたようにヴィンスに問いかけた。


「あいつ・・・一体どうやって逃げたの?」


「おそらく最後の力を振り絞って転移装置みたいなものを使ったのだろう。あの転移はムーブによるものじゃあ無いからな。」


「追いかけられない?」


「直ぐに周辺をサーチしてみたけどダメだった。相当遠くに転移したようだ。」


「せっかくヴェルスが見つけたのに・・・。」


 ミュウは残念そうに俯いていたが、スクルスのこの行動がゼント達の助けになったとはこの時は思いもよらなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「微弱ナガラスクルスノ魔力ヲ検知」


「解析完了」


「魔力パターン『スクルス』シミュレーション入力・・・アクセス!」


「コレヨリヴェノヲコネクトスキルノ管理下ニ置ク。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 スクルスが逃亡してからかなりの時間が経過していたが未だ黒い塊には変化が無かった。


「もう、我慢できない我が助ける!」


「お、おいやめろ!」


 ピキッ!


「えっ?」


 ミュウが黒い塊に近づき手を伸ばした瞬間、黒い塊の上に一本の線が走ったのだ。

 線は塊を縦に一周するように伸びると・・・


 パシュン!!


 黒い塊は周りを覆う皮が弾けるかの様に広がったと思うとヴェルスを抱きかかえたゼントが姿を現した。弾けたようになった黒い皮はシュルシュルとゼントの服に吸収されていった。

 

「ゼント、ヴェルス!!」


「ミュウ、やっと終わったよ。」


「よかった。本当に良かった。心配したんだぞバカ!」


 ミュウは涙で顔をくしゃくしゃにしながら二人に抱き着いた。


「心配かけてごめんな。」


 ゼントは左手でミュウの頭を優しく撫でてやった。


「ウゥ うーん。」


 ゼントの右手で抱かれていたヴェルスの目が覚めたようだ。


「・・・・ゼントさん?・・・・はっ?」


 ヴェルスは目を覚まし、まず自分の手を見て胸を、体を手でさすりながら確かめていた。


「も・・・、元に戻っている・・・。」


 ヴェルスは今にも泣き出しそうな顔でゼントを見つめた。


「ああ、もう大丈夫だ。」


 ゼントがヴェルスを見つめ返すと


「うっ、うっく、うぁ—————ん!ゼントさーん」


 泣きじゃくるながらゼントに抱き着いていった。


 ゼントは右手でヴェルスの頭も優しく撫でてやった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あーっと、お取込み中済まないが、ヴェルスさんに服を着せてあげた方がいいじゃないですかね?」


「あ!、はい確かに。」


 ゼントは亜空間を開けてヴェルスに中で服を着てくるように勧めた。


「凄いな人が入れるサイズの亜空間倉庫持ちとは。」


「あれ?あ、宿のご主人じゃあないですか、なんでこんなところに?」


「あー何ですかね、ウイリアムさんに頼まれた野暮用があってね。」


「あ——成程、12人目の討伐隊員はヴィンスさんだったんですね。」


「まあ、そんな所かな。」


「ゼント、ドアを開けてくれたのはヴィンスさんなんだ。」


 ミュウが涙をぬぐいながら説明してくれた。


「本当ですか?ありがとうございます。もうちょっとでヤバいとこだったんですよ。おかげで助かりました。」


「いやー開けたのは僕だけど、あの女を倒したのはブルー君だからね。もうちょっとで僕もやられそうだったけどね。」


「キャウ―!」


 ブルーがゼントの肩に戻ってきて『どや』と言わんばかりに鳴き声をあげた。


「ありがとう、ブルー、今回はお前にいっぱい助けられたな。」


「キャ、キャウ―!」


「ヴィンスさん、本当にありがとうございました。」


 亜空間から服を着たヴェルスが出てきてヴィンスに対して深々とお辞儀をしていた。


「まあ、気にしないでください、僕はあの女を捕まえるためにドアを開けたのですから。ただ、残念ながら逃がしてしまいましたが・・・。」


 ヴィンスは照れながらも残念そうな顔をしていた。


「ええ、残念でしたね、それでも少し分かったことがあります。」


 ゼントはそう言うとポケットから黒い豆のようなものを出した。


「あの女の名前ヴェローナ・スミス、Sランクの魔法使いで、この黒い豆の様なものを使って魔物達を操ることが出来るスキルを持っていたということです。」


「それを使って?」


 ヴィンスは興味深げに黒い豆粒のような物を見つめてきた。


「ええ、これを魔物の体内に埋め込み魔物を操っていたようです。」


「これは・・・もしかしたら古代文明の遺物か?」


「おそらくそうだと思います。」


「そうか、ウイリアムさんが見たら泣いて喜ぶなー。彼ならきっと解析できるよ。」


「そうですか、少しでも役に立てそうで良かった。」


「ところで、そこに転がっている男の情報は何かないかな?」


 ヴィンスは床に倒れているアクラスを指さして聞いてきた。


「この男の名はアクラスでSランク冒険者ということぐらいですね。スキルオフフィールドというスキルを使えなくするフィールドの中でやり合ったのですが、速さも破壊力も凄くて、もう少しで殺されるところでした。」


 ゼントは唇を噛みながらアクラスを見つめた。


「そうか、それなら身元は割れそうだな。名前は本名か怪しいけどSランククラスの腕前となるとそうはいないからね。まあ、今は出涸らし状態だけど・・・。」


「さて、それじゃあ僕は宿に戻るから、後はよろしくね。あまりゆっくりしているとオーラとスーザンに怒られちゃうからね。」


「えっと、ヴィンスさん、ヴェノの事なんですが・・・。」


 ゼントはヴェノを制したスキルの事について話をしようとしたところ


「あ——僕は何も見なかったよ。君達も何も見なかったでしょう?」


 ヴィンスはゼントの意図を察したようだった。


「あ、ありがとうございます。」


 ゼントはヴィンスに気遣いに感謝し、軽く頭を下げた。


「ま、お互いさまということで。それじゃあまた宿でね。」


 ヴィンスはそう言うとそそくさと部屋から出ていった。


「さて、後始末をするかな。」


 ゼントは亜空間から縄を出すとアクラスを縛り上げるとアクラスが出てきた転送装置みたいなものを拾い上げた。


「コネクト、これを解析してくれ。」


(了解!)


(コノ装置ハ一対デ使用シ、対象トナル物体ヲ片方ノ装置カラモウ片方ノ装置ニ移動サセル機能ヲ有シテイマス。魔素ヲ使用シテ時空ヲ歪メテ2点間ヲ繋グタメ、コノ装置が絶対シールド内ニアレバ絶対シールド内ヘノ転送モ可能デス。)


「これも古代文明の遺物か・・・・。」


 ゼントは思い切りため息を吐いた。冒険者になってからずっと古代文明の遺物に悩まされているのだ。

 今の状態で何か出てきても戦う力はなので、ゼントはそれを亜空間(時間停止)に放り込んでおいた。


「しまった、変異E魔素を出している魔石を回収するのを忘れていた!」


「もう、戻る元気無いよー!」


 ミュウがぼやいていた。ヒャクアシの戦いでかなりの体力を消耗し、ヒャクアシを倒した後、3階層から1階層まで一気に駆け上がってきたのだからガス欠状態なのである。


「俺が歩いて行ってくるよ。もう魔力は空っ空っなんでね。二人はここで待ってて。」


「私はまだ魔力が残っているのでムーブで行ってきましょう。」


「ヴェルス、無理しなくてもいいよ。」


「いいえ、ゼントさんが元に戻してくれたので魔力も復活しています。」

 ヴェルスは既に落ち着いており、いつもの笑顔を見せてくれた。


「それじゃあ、申し訳ないけど頼む。実のところ俺もそろそろ限界なんだ。」


「はい!それじゃあ行きましょう。」


 ミュウにアクラスの見張りを任せて俺達はヴェルスのムーブで3階層の端まで行き変異E魔素を出す魔石を30個亜空間に回収してきた。


 その後、ミュウがアクラスを担ぎ上げて俺達は遺跡を後にし、ウイルアムさん達に合流した。


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