スキルオフ・フィールド
ゼントは自分のスキルが発動しないことに愕然としていた。俊速はおろか光の刃も出ないのだ、コネクトを呼んでも反応が無い!全てのスキルが無効になっているだ!
ブルーは一瞬早くゼントから離れたせいかその影響は受けていない。ただ、ゼントに近寄ろうにも絶対シールドに阻まれて右往左往している。
「これは絶対シールドか?」
「そうだよ、その空間では全てのスキルは無効になる。スキル無しのあんたは絶対にそこから出られないからね。」
「お前は何者だ!」
「おーや、人に名前を聞くときは先に名乗るもんだけどね。まあいいか、あんたの名前知ってるし。私の今の名はヴェローナ・スミス、昔の名は未来を司る女神スクルス!ヴェルスの妹さ!」
「何故女神がこんなことをする!」
「言っただろう、昔の名はって、今は天界を追放されたしがない魔法使いさ。」
「ところで、そんな無駄口叩いていて良いのかい?あんたの良い人が化け物になろうってのに。」
ゼントがヴェルスの方を見るとヴェルスの両足は既に鳥か爬虫類のような形に変貌している。
「ゼ、ゼントさん、お願いこちらを見ないで・・・ください・・・。」
ヴェルスは俯きながら涙をこぼしていた。
「もう少しで涙も出なくなるから、泣けるうちに泣いておきな!」
スクルスは満面の笑みを浮かべながら高らかに声を上げた。
「くっ、こいつー!」
「そのスキルオフ・フィールドの中ではスキルが使えないからあたいも攻撃ができないんだ。そう、あたいの魔力が尽きればあんたは自由になれるさ。ただし、あたいがそのままほおっておくないわよね。」
「出てきな、アクラス!」
スクルスの召喚で床に置いてあった50cmぐらいの円盤が光り、中から冒険者風の巨漢が頭から姿を現してきた。
「おう、姐さん、呼んだかい?」
「ああ、呼んださね。お前の剣技でこの色男をいたぶってあげな。いいかい直ぐには殺すんじゃあないよ、こいつがいたぶられる所をそこの化け物になりかかっている女に見せつけてやるんだから」
「へへ、そいつぁいいね。俺はそういうのが大好きなんだ。」
男は舌なめずりをしながらオリハルコンの剣を抜いた。
「いいかい、そいつはスキルも使えるが剣技だけでもSランクの冒険者だからね。スキルに頼りきっているあんたがどこまで耐えられるかしら?」
ゼントは木刀を構えて戦闘態勢を整えた。
(こ、こいつには隙が無い・・・。)
ソーリの森で幾多の魔物と戦ってきたゼントにとって、対人戦はケイン領主との模擬戦だけ。命懸けの対人戦は初めてであった。しかも相手は現役のSランク冒険者・・・。
ゼントが動けないでいると。
「おや、ビビっちゃった?来ないからこっちから行くよ!」
男は一瞬でゼントとの間合いを詰め横薙ぎに剣を振ってきた。
「速い!」
ゼントは後ろに飛んで辛くも男の剣を避けてると男はゼントの脇腹に蹴りを入れてきた。
「ゲホッ」
ゼントは蹴とばされた勢いで絶対シールドにぶち当たって胃の内容物を吐き出した。
「甘ーい!ドーナより甘いよ――――!」
男は死にかけた獲物を持て遊ぶ肉食動物の様な眼でゼントを見つめていた。
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異様な気配を感じてゼントがムーブで転移した直後にブルーはゼントから飛び立っていた。ブルーは咄嗟の判断でスキルオフ・フィールドから逃れることが出来たのだ。
ブルーはゼントが敵対している女にベーパーアタックをかけているが全て弾かれてしまっている。この女にも絶対シールドが張られているのだ!
「あ——五月蠅い鳥だね、後で焼き鳥にしてやるから待っていな!」
ソニックアタックなら絶対シールドを貫通することが出来るが、この狭い空間では音速に到達することが出来ないのだ。
絶対シールドを貫通できないとわかると、今度は壁に向かって突進した。壁を壊して空間を広げようとしたのだ。
ガゴーン!
鈍い音が部屋の中に響いたが壁には傷一つつけることが出来なかった。何か特殊なフィールドで保護されているようだ。
ブルーはなす術が無く部屋の中を飛び回っていた・・・。
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カキーン!
木刀とオリハルコンの剣が交わり快音を発していた。
「硬いねぇ、その木刀。」
アクラスはオリハルコンの剣で折れない木刀に驚くというより面白がっていた。
「意外と、いたぶりがいがあるねぇ!」
口の両端を吊り上げアクラスは不適な笑みを浮かべていた。
ここまでの戦闘で俺はアクラスの懐までは飛び込むが全ての攻撃を躱されていた。
「くそっ、巨漢のくせになんて反応速度だ!」
「遅い、遅い、遅いよー!蠅が止まりそうな剣だな。」
「ちょっと見本を見せてやるぜ! ふん!」
バキーン!
俺は両刃剣の側面で顔を思い切りはたかれて後方の絶対シールドに向かって吹っ飛んでいき、シールドに弾かれてその場にうつぶせになって倒れた。
「ぐふっ!ぺっ」
口から何本かの歯と血を吐きだした。
奴の剣が見えなかった・・・しかも奴は本気じゃない、剣速が落ちる側面で叩いているんだ。
俺は奴との歴然とした力の差を感じ取っていた。だが、ここで負けるわけにはいかない。
俺は何とか立ち上がり木刀を構えた。
「おやおや、あんちゃん結構頑張っちゃうんだね。まあ、そうでないといたぶり甲斐がないっていうもんだ!」
奴がそう言い終わった時、ヴェルスの悲鳴が聞こえた。
「うぅっああああああ————————!」
ヴェルスは両手を震わせながら自身の胸を抱きかかえるように抑えたかと思うと服が見る見る膨らみ弾け飛ぶように破れていった。
ヴェルスが手を離すとそこに綺麗な胸は無く、替わりに半球形の半透明な物体が二つついていた。手も足と同じように爬虫類の様な手に変貌しており、身長も1.5倍くらいになっている。
「ヴェ、ヴェルス-———————!」




