姉妹
「フリーズフレーム!」
ヴェルスは柱の中の小部屋にムーブで転移すると中にいた黒ずくめの女を魔法で拘束した。
(ゼントさん、フリーズフレームで敵を確保しました。)
(そうか!)
「もう逃がしませんよ!観念してください!」
「くつ、貴様どうやってここが分かった!ここには遮蔽シールドが施されているはずだ。」
「ええ、そのおかげで探すのに大分手間取りましたが、この中だと分かれば後は魔力を注ぎ込むだけです!」
「くっ、大賢者並みの魔力を持っているというのか!」
「貴方に答える義務はありません。」
「ふっ、そんな他人みたいな言い方しないでよ、ヴェルス姉さん!」
黒づくめの女は拘束されているにも関わらず薄笑いを浮かべながら話し出した。
「な、貴方のような人を妹に持った覚えはありません!」
「そんなぁ、150年ぶりだっていうのにつれないねー。」
その言葉を聞いてヴェルスははっとして黒づくめの女の顔を見た。
「ま、まさか、貴方はスクルスですか?」
「やっと思い出したかい。まあ今の名はヴェローナ・スミスだけどね。」
ヴェルスの記憶にあるスクルスは17才ぐらいの外観のすらっとした華聯な少女だが、目の前にいるのは小太りした浅黒い40路に差し掛かりそうなおばさんである。
「天界を追放されてただの人間になってから苦労したのさ。」
「スクルスのはずがない!追放されたのは150年前、普通の人間になったら生きていられるはずがないわ。」
「あんたも地上にいるということは天界を追放されたのかい?それにしちゃあ凄い魔力量を持っているね、大賢者並みとは。やっぱり創造神のお気に入りだけあって追放する時も特別待遇かい!あたしなんかBランククラスの魔法使い程度の力しか残してもらえなかったんだからね!それから死ぬほど苦労してSランクの力を手に入れ、何とか生き永らえたっていうのに!」
そう言い放ったスクルスの口元が急に吊り上がった。その瞬間!
ペチャ!
ヴェルスの左足に何かが張りついてきた。
「えっ?何これ!」
「あっはははははは! これでもう終わりだよヴェルス!」
ヴェルスの足に張り付いたものは黒いスライム状の物質で、それは徐々に広がり始めていた。
「・・・・・つ!」
ヴェルスは左足に強烈な痛みを感じていた。
「エクストラヒール!」
「え?魔法が使えない?」
「そりゃあ無理だろうね。」
先程までフリーズフレームで拘束されていたスクルスは何事もなかったかの様に歩き始めた。
「フリーズフレームまで・・・・。」
「そりゃあそうさね、その黒いのはヴェノといって取りついた者の魔法と体を吸収して増殖していくんだからね。」
スクルスはずんずんとヴェルスに近寄ってくる。スクルスの勢いに押されヴェルスは後退しようとしたが・・・。
「え、左足が動かない!」
「ははは、驚いたかい、その左足はもうヴェノに浸食され尽くしているんだ。おまけにそのヴェノには魔物を操るためのこいつを埋め込んでいるので私のいうことしか聞かないからね。」
スクルスは右手に黒い豆粒のようなものをつまんで見せた。
「くぅ・・・・。」
ヴェルスの顔が苦痛に歪んだ。
「ねえヴェルス、ヴェノに浸食され尽くすとどうなると思う?」
スクルスは勝ち誇って歪んだ笑みを浮かべながら続けた。
「魔物になるんだよ!!!元が女神だと魔神といったところかね!!」
スクルスがそう叫んだ瞬間、ヴェルスの左の靴が異様に膨らみ始め、中の体積の増加に耐えられなくなり張り裂けたのだ!
「あ、ああああ——————!!!!」
ヴェルスは猛烈な痛みと異様に変化した左足を見て絶叫した。
ヴェルスの左足は数倍の大きさに肥大し、醜いごつごつしたコモドオオトカゲのような皮膚が覆っていた。巨大な爪を持った長い指が前に3本後ろに1本生えている
「あ———はっはっはっ!気持ちいいね。追放されてから最高の瞬間だよ。そいつは古代文明が残した遺産というやつでね、あんたのスキャンでもこいつは感知できないさね。それで私は時間稼ぎをしたんだよ、そいつがあんたに取りつくまでね。」
「こ、こんなことをしてタダではすみませんよ。」
ヴェルスはもうほとんど残っていない力を振り絞って声を発した。ヴェノに魔力も体力も根こそぎ持っていかれているのだ。
「あ——ん、まだ無駄口たたく余裕があるの? あーあんたの男かい、あんなのあたいの敵ではないよ!」
「ゼ、ゼントさんは貴方になんかに負けません!」
「まあ、間違って勝ったとしても魔物になったお姫様に殺されるんだろうけどね。くははははははっ!」
「さあ、王子様のお出ましだ!」
スクルスがそういった瞬間ゼントとブルーがムーブで転移してきた。
「ヴェルス!」
「ゼントさん!」
「お前は—————!」
ゼントは木刀を振りかざしスキル「俊速」を使おうとしたその時スクルスの詠唱が部屋の中に響き渡った。
「スキルオフ・フィールド!!!」
ゼントが立っている床に魔法陣のような文様がうかびあがってそこから放出された光がゼントの周囲を覆って行った。
「キャウ―!!」




