危険地帯Ⅱ
2階層のモンスターエルGだけだったようでエルGを駆逐した後他の魔物が現れなかった。
それでこれから3階層に行くところなのだが、その前に休憩と食事を摂ることになった。ここまでの戦いで皆かなり疲れ切っているのだ。
「はい、どうぞ。」
亜空間からゴザを出して食事の準備を始めていると俺はシルビアさんから茶色の小瓶を渡された。
「これは何ですか?」
「これは『ポーションD』、疲労回復と魔力回復に効果があるの。領主様から支給されたものだから皆に配っている所よ、遠慮なく使って。」
「はい、ありがとうございます。」
俺は一口飲んで思った「フ〇イト—!一発!」、正にあの味がするし、炭酸が入ってる・・・疲労回復には効果ありそうだが・・・本当に魔力が回復するのか?
「キャウ、キャウー。」
「ん、ブルーも飲みたいのか?」
俺は小皿を出して半分入れてあげた。
「キャウ―!!」
ブルーは嬉々としてくちばしで飲み込むと・・・。
「キュッ、キュゥワ————!」
あ、炭酸はだめだったか、大口開けて絶叫してる・・・。
俺は残りのポーションDを一気飲みするとあ空間からサンドイッチの入ったバスケットを出してミュウとヴェルス、ブルーに渡して皆で食べ始めた。
今日のサンドイッチはハムと卵とレタスだ。
卵は先日作ったマヨネーズを混ぜている。生卵もハイヒールで殺菌すれば大丈夫なのでそれでマヨネーズを作ったのだ!
「運動の後の食事は美味いな!」
「ええ、とても美味しいのですが、綺麗な場所なら良いのですが。」
「まあ、遺跡の中だと雰囲気は最悪だよね。」
「ところで、敵の探知は上手くいってる?」
「いえ、それがなかなか上手くいきません。確かに魔物をコントロールしている魔素の流れは検知できるのですが、細くて何処につながっているのか全く分かりませんでした。」
「そうか、でもエルGの様に大量にいればそれなりの魔素量になるんじゃあないの?」
「私もそう思ったのですが、あのエルGはコントロールされていませんでした。大量発生させれば、何もしなくても人間を襲うからでしょうね。」
「そうか・・・残念。」
「あ、でもランクが高い程コントロールする魔素量が増えているようなのでSランクモンスターなら特定できるかもしれません。」
「分かった。次の3階層で何となるといいな。」
そんな話をしていると、トニーさんがベーコンと目玉焼きを挟んだサンドイッチを片手に話しかけてきた。
「お、それはワンモーメントの朝食とは違うな。」
「ええ、自分で作ったので宿のとは違いますよ。トニーさんのはワンモーメント製ですか?」
「ああ、前の日に頼んでおいたんだ。ワンモーメントのも美味いけど、なんかそれもうまそうだな。」
「余分に作ってあるので一つ食べてみますか?」
「いいのか、悪い!後で何か奢るから。」
俺はバスケットからサンドイッチを出してトニーさんに渡した。
トニーさんは一口食べると。
「変わった味だな、でも美味い!少し酸っぱい感じするが大丈夫だよな?」
「それは酢が少し入ってるんからですよ。」
「へーっ卵に酢か、変わった使い方だな。」
この世界でマヨネーズをまだ見てないからね。
「トニー、何食べてるの?」
「あ、アリソンさんもどうぞ。」
俺はサンドイッチをもう一つバスケットから出してアリソンさんに渡した。
干し肉を食べている騎士の人達が羨ましげな目をしているのは見なかったことにしよう、うん。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「よし、皆出発するぞ!」
昼食後にウイリアムさんの号令で俺達は3階層に下りて行った。
3階層は1、2階層とは異なり天井がかなり高い、10mぐらいあるだろうか。通路の幅も10mぐらいある。
ということは必然的にデカいモンスターが行動しやすいということで・・・。
しばらく歩いていると急に広い空間に出た学校の体育館ぐらいのサイズはあるな。
「前方から巨大なモンスターが2匹来ます!」
ヴェルスの警告に一同戦闘態勢に入った。
「種類は分かるか?」
ウイリアムさんのヴェルスへの問いかけが広い空間に響いた。
「ヒャクアシです!」
「ヒャクアシ!! SSランクだぞ!!!」
モンスターの名を聴いて全員が震えあがった。
「ウイリアムさん、直ぐに撤退しましょう!」
アスコナ団長がウイリアムさんに進言した。
「ああ、確かにSSランク2匹相手にこのメンバーでは・・・・。」
「よし、撤退だ!」
「待ってください!もう一匹、ヒャクアシが先程来た通路から来ます!!」
ウィリアムさんの撤退の言葉を遮るかのようにヴェルスの声が遺跡の中に響き渡った。
「なに!!さっき来た時はヒャクアシの反応はなかったはずだ、一体どこから・・・。」
膨大な魔力を持つSSランクなら探知魔法でも見逃すはずはないはず・・・一体どこから来たんだ?
「ウイリアムさん、前方の2匹は俺とミュウで足止めします。残り全員で後方の1匹を倒す、いえせめて通路から引き離して退路を確保してください!」
「お前ら二人で大丈夫か?」
「ブルーもいますし、ヴェルスに支援してもらいますので、足止めだけなら何とかなると思います!」
「分かった、奴を通路から引き離したら全力疾走しろよ!」
「「「はい!」」」
SSランク、ピラニアドラゴンの時は一人での戦いだったが、今は違う!ミュウもヴェルスもブルーもいる。何とかなる、いや、何とかしてみせるぞ!
(ヴェルス、危機ではあるけど敵を探す絶好のチャンスだ。奴らをコントロールしている魔素を追ってくれ!)
(分かりました。ヒャクアシは非常に危険なモンスターです。決して無理はしないでくださいね。)
(ああ、分かった。)
「ミュウ、ブルー、やるぞ!」
「おう!」「キャウ!」
二人と一羽で魔力を込めて臨戦体勢に入った。
(ヒャクアシハ「ムカデ」ノ魔物デス。口ダケデハナク各関節ニアル足ニモ毒ヲ持ッテイマス。サラニ体表面ニ絶対シールドヲ展開シテイルノデ通常ノ攻撃ハ効キマセン。)
(ありがとうコネクト、結構厄介な奴だな。ブルー、おそらくソニックアタックなら効果あると思うけど、今は使わないでくれ。)
(キャウー?)
(ヴェルスが敵を探知したら思いっきり使って良いからな。)
(キャウ!)
ちなみにソニックアタックとはブルーがネリの森で大木を貫通した技だ!うん、十分自覚しています・・・中二病。
「来たぞ!」
奥に繋がる通路から二匹のヒャクアシが出現した。
全長20mのムカデはさすがにデカい!
「アイスジェイル!」
奴らの動きを止めるため俺はアイスランスの応用で床から天井まで届く柱を作ったが・・・・
バキッ!ガラガラドシャ―ン!
一瞬で奴の足で破壊されてしまったが、その間に一匹のヒャクアシに瞬歩で接近して関節部に木刀を叩き込んだ!
ガゴン!
やっぱり無理か、簡単には絶対シールドは破れないな。
「おっと。」
ヒャクアシは俺を振り払うように体を捩じりながら攻撃してきた。
俺が後ろに飛び退いてヒャクアシの攻撃を避けると、その隙をついてブルーがベイパ―アタックをヒャクアシに仕掛けてきた。
カキーン、ドゴン!
ベイパーアタックでもヒャクアシを切り裂くことはできなかったが、ヒャクアシは後ろの壁に吹っ飛んでぶち当たった。
怒ったヒャクアシは体の全部を立ち上げると全身から異様な赤い光を放ったかと思うと持ち上げた体の足から針のようなものを無数放出してきた。
(告:アレハ絶対シールドヲ貫通シマス!)
コネクトの叫びのような警告が頭に響く。
SSランクのミュウが使ったスキルか!!間に合うか?
俺はあの経験から思いついたスキルを使った。
「絶対シールド!」
(ダカラ、ソレ無効ダッテイッタバカリデショウ!)
無数の針は絶対シールドを貫通したが俺の目前で停止し全て落下したのだ。
(ハァ????)
コネクトの間の抜けた声が聞こえた。
(説明ヲ求ム。)
(これは多重シールドさ、あの針は先端の魔素の振動で絶対シールドを中和させて貫通させるから効果は一回きりしかないんだ。絶対シールドを二重に張れば2個目のシールドで防げるっていう寸法さ。)
そういえば、ミュウは?
ミュウの方はヒャクアシに致命傷は与えられないもののひたすら殴りかかってるのでヒャクアシに反撃の隙を与えていない。
(ヴェルス、探知は上手くいっている?)
(まだです。魔素の動きは大体キャッチできたのですが、太い柱の所で途絶えて、その先が見つけられないのです。)
(柱に何か中継点でも設けているのかな?こちらは時間を稼ぐから探知を継続して。)
(分かりました。)
「おわ、!」
念話でそんな話をしていると目の前にヒャクアシが勢いよく迫ってきていた。
今度は後ろに避けずに木刀を構えて瞬歩でヒャクアシに突進して思い切り突きをかましてやった。
完全にカウンター状態だ、全身に身体強化をかけて踏ん張ったので俺が足をついた場所はドゴンという音とともに陥没したが、ヒャクアシは再び後ろに吹っ飛んでいった。
ヤバい、今のは少し無理だった・・・体中の筋肉が悲鳴をあげていた。組織再生でも時間がかかりそうだ。
ヒャクアシを木刀で突いたところは絶対シールド越しであったが少し陥没しているが、ヒャクアシはそれをものともせず、動けなくなった俺に再び襲い掛かってきた。
ヤバい!
そう思った瞬間、ブルーがベイパ―アタックでヒャクアシを吹っ飛ばしてくれた。
「サンキュー!」
「キャウ—————!」
よし、自然治癒完了!
さあ、今度は俺がぶっ飛ばすぞ———!と思ったその時、ウイリアムさんの声が響いた。
「出口側のヒャクアシは通路から引き離した!退却するぞ!」
「ウイリアムさん、このまま退却しても奴らは追ってきます。俺達でもう少し足止めしますので先に退却してください。」
「それだとお前らが逃げ遅れるぞ!」
「いざという時はヴェルスのムーブで逃げられますので大丈夫です!」
「そ、そうか分かった無理するなよ!」
「了解!」
ウィリアムさん達が通路に逃げ込むと、ウイリアムさん達を追ってヒャクアシが通路に入り込もうとしていた。
「ブルー、あのヒャクアシの相手をしてくれ!」
「キャウ―!」
ブルーは鋭角に方向転換して通路に入ろうとしたヒャクアシにベーパーアタックをかましていた。




