危険地帯Ⅰ
—ミュウ視点—
「こいつとは相性が悪いんだよね———。」
キングワームを見ながらミュウは呟いた。
変異E魔素でSSランクになっていた時は楽勝だったけみたいだけど・・・あの時は何も考えてなかったもんね。
キングワームが進化する前のビッグワームはただの大きいミミズだけど、こいつは非常に嫌なスキルを持っている。そう、『触手』というスキルを。
奴を倒すには体の中心にある核を壊せばいいんだけど全身から出てくるので触手に阻まれて光の刃が届かないんだ。触手は傷つけても直ぐに再生してしまうし、あの『ぬめぬめ』、あ———鳥肌が立ってくる。
「わっ!ヤバい!!」
そんなことを考えていたら右足に奴の触手が絡みついてきて奴にの方に引きずられて行ってしまった。
「ギャ——————!!!!!」
もう無我夢中で尻尾から光の刃を打ちまくった。
「はあ、はあ、はあ・・・。」
触手を八つ裂きにして何とか抜け出したが、全身ぬめぬめだらけになってしまった。
奴の触手はもう再生しているし・・・・なんかいい手はないかな?
ん? いいこと思いついた!
我はその辺に落ちている小さな瓦礫を拾い上げると奴の核をコネクトのサーチスキルを使って特定した。
「照準良し!発射!!」
我は転生前に見た『やきゅう』というやつを真似て全力で瓦礫をキングワームに投げつけた。
グシャ! ドガゴーン!!
「よっしゃ、ストライーク!」
瓦礫はキングワームの核を見事貫き後ろの壁にぶち当たった。
「あ———っ、やったはいいけどぐちょぐちょだよ、後でヴェルスに洗ってもらおうっと。」
—トニー視点—
「こいつは本当に面倒なんだよな———。」
決して強いモンスターではないのだが、こいつがAランク指定されているのはひたすら倒しにくいからだ。
こいつの攻撃手段は触手だけだが、あらゆる攻撃を無数の触手で防いでしまう。どういうことかというと攻撃で触手は壊れるが本体は無事なのだ。しかもやられた触手は直ぐに再生してしまう。
こいつを倒す方法は触手が再生する前にひたすら切って切って切りまくることだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いい加減に嫌になってきた。
グシャ! ドガゴーン!!
「えっ?」
音の方を見ると、もう一匹のキングワームが核を撃ち抜かれて息絶えていた。
あのミュウという可愛い娘がやったのか??
「くっ、負けておれんな・・・。」
俺はひたすら触手を切り続けた・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「カペラさん、大丈夫ですか?」
俺はキングケラとの戦いから離脱してヴェルスにヒールをかけてもらっている一等騎士のカペラさんに声をかけた。
「大丈夫とは・・・言い難いな。キングケラの外皮が硬すぎて光の刃で直接切りかかっても全く歯が立たないし、魔弓も全く寄せ付けない。」
今もアスコナ団長とコンテッサさんが切りかかり、その後ろからウイリアムさんとシルビアさんがアイスランスや絶対シールドデキングケラの動きを抑え込もうとしているが完全に押されている。
(ヴェルス、アスコナ団長を助けるのは嫌だけど、死人がでるのも嫌だから援護するよ。)
俺はカペラさんに聞こえないよう念話で話しかけた。
(仕方ないです・・・気をつけてくださいね。)
ヴェルスの返事が来るか来ないかのうちに俺は瞬歩でキングケラの懐に入り込んだ。
「なっ、小僧!」
アスコナ団長が急な俺の登場に驚いて声を上げた。
俺はキングケラの懐に飛び込むと間髪を入れずに首の関節部分に光の刃をまとった木刀を振り上げた。
「よっしゃー、次!」
すぐさまもう一匹の懐に瞬歩で飛び込むと同じ様に切りつけようとしたが、キングケラの前足が振り下ろされてきた。
さすがAランク、反応が早い!俺はキングケラの前足を避けて瞬歩の瞬発力で天井に飛びあがり、体勢を変えながら天井にけりを入れて反転、キングケラの頭上から首の付け根を目指して木刀を振り下ろした。
グサッ!ズバッ!
首を切り裂かれた2匹のキングケラは少しの間じたばた動いていたが、そのうち完全に動きを停止した。
「彼奴の瞬歩は相変わらず切れがいいな。アスコナ団長、なぜ俺が彼を前衛に推薦したか理解できたか?」
「う、うぐーっ。」
ウイリアムさんの問いかけにアスコナ団長は黙ってしまった。
「よし、怪我人の治療が終わったら先に進むぞ。」
一等騎士達は皆どこかしら怪我をしており、ヴェルスとアリソンさんのヒールで治療をしてもらっていた。
「イヤー!トニー近寄らないで!」
「そんなぁ、つれないな・・・。」
粘液まみれで戻ってきたトニーさんはアリソンさんに思い切り嫌がれていた・・・。
ミュウも粘液まみれになっていたのでとトニーさんと一緒にヴェルスの水魔法で洗浄してもらた後、風魔法で乾かしてもらった。
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1階層ではキングケラ、エルスネーク、キングワームに囲まれた後はデビルモールにしか遭遇せず、大方の魔物は討伐できたと判断して討伐隊は2階層に向かうことにした。
2階層にいるのは・・・・既にコネクトが探査していて分かっているんだけど黒くて素早いあいつ!全世界の女性の敵!そう、その名は「エルG」50cmサイズのゴキブリである。
元々Dランクモンスターなので一匹や二匹ならば脅威とはならないのだが最低でも500匹はいる!!こいつ等は高速で移動し集団で人に襲い掛かるため意外と厄介なのだ。襲いかかられた人は奴らの鋭い口で一分もかからず骨だけにされてしまう。「陸の上のピラニア」と言われているそうだ。
「いゃ——————!!」
ここで最初に攻撃を仕掛けたのは、「意外」にもヴェルスだった。
よく考えれば「意外」というよりはヴェルスのモンスター嫌いを考えれば当たり前だったか、しかもGとくれば。
ゴブモンキーを倒した時の様に絶対シールドを周り中に展開した後、針の様に変形させてエルGを串刺しにしているのだ。集団で襲ってくる奴らには効果的なスキルだけど燃費が悪すぎる!俺も以前に真似してみたけど3回やったら魔力切れを起こしてしまった。膨大な魔力を持っているヴェルスだからできる技。
ちなみに俺以外のメンバーは何が起きたのかわからず、空中に停止したまま何かに串刺しされていくエルGをぽかんとして眺めていた。誰もヴェルスがやっているのだと気が付いていなかった。
(ヴェルス、落ち着いて。)
俺は頭を抱えたまま震えているヴェルスの肩に手をかけ、念話で優しく話しかけた。
(でも、Gが、Gがいっぱい・・・!)
念話で悲鳴のような声が聞こえてくる。
(大丈夫、後は俺達がやるから、その技は燃費が悪すぎるので使いすぎると魔力が持たないよ。)
俺はヴェルスの後ろから両肩に手をかけて体をよせて話しかけた。
(は、はい・・・・。)
よし、なんとか震えが収まってきたな。
「ウイリアムさん、何が起こっているのかわかりませんが、相手は所詮Dランクモンスターです。ヴェルスに一瞬だけ絶対シールルドを解除してもらって全員で退治しましょう!」
「分かった。俺が合図したらヴェルスさん、絶対シールドを一瞬だけ解除してくれ。ヴェルスさん以外は全員散開して個別にエルGを撃退するぞ。この状況だと相打ちになる可能性があるので仲間との距離は十分開けるようにしろ。」
「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」
ウイリアムさんの合図で俺達は群がるGの中に飛び込んでいった。
ミュウは嬉々として手刀と蹴りと尻尾で群がるGを次々と刻んでいて、Gを全く寄せ付けていない。
ブルーはベーパーアタックで飛んでるGを順調に撃破。
トニーさんとアリソンさんはお互いの背中を合わせながら魔剣で応戦している。流石に夫婦、いいコンビネーションでこちらも確実にGを撃退している。
ウイリアムさんは一人でアイスランスや剣を使い着実に仕留めている。流石元Sランク冒険者!
一方、一等騎士達はというと・・・・各自の戦闘力が低いのに個別に戦っているのでGに尻を嚙まれたり、Gに群がれてもう少しで骨にされそうになっているところをミュウに助けられたりといった状態。普段どんな訓練してるんだ・・・。
俺はというと、現在Gから逃げています。正確には光の刃でGを刺激しながらGを俺に集めながら逃げている所です。
よし、あの通路だ。
俺は比較的狭い通路入口に逃げ込んでいった。
「ばか、小僧そこは行き止まりだぞ!」
アスコナ団長の声が聞こえたが、あんたそんなこと言ってる余裕ないでしょ!
俺に引き連れられてGの大群が狭い通路になだれ込んできた。
「よし、待ってました。アイスニードル!」
狭い通路になだれ込んで密度を増したGに対して大量のアイスニードルを放った。
このスキルの貫通力が高いのはエルスネークで実証済み!
通路に群がった全てのGをアイスニードルは貫通していった。
「なんだ、あの針は???」
なんかまたアスコナ団長の声が聞こえたような。
今ので200匹ぐらいやったかな?
しまった!どうやってここから出よう・・・・・目の前はGの大群で埋まっているし。




