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大草原の小さな家

 アーシオ遺跡討伐の日の朝、俺達はワンモーメントの朝食を摂り宿の玄関にいた。


「おはようございます。」


 ん?見慣れない頼りなさそうなおじさんが玄関の外から挨拶をしてきた。


「おはようございます・・・すみません、どちら様でしたっけ?」


「ああ、すみません。こうやって会うのは初めてでした。オーラの夫のヴィンス・カーリンと言います。」


「あ、宿のオーナーですか。」


  俺が自己紹介をしようとすると。


「君はゼント君だね、そちらがミュウさんとヴェルスさん、肩にとまっている鳥がブルーだったよね。」


「ええ、そうです。良く分かりましたね。」


「あ、ああオーラから聞いたんだ。ところで、これからどちらに行かれるんですか?」


「アーシオ遺跡にです。」


「あそこにはいくつもの小部屋があるから気をつけてね。」


「はぁ・・・? わ、分かりました・・・。」


 一体どういう意味だ・・・?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「大草原の小さな家」


 アーシオ遺跡を見た時思わず口走ってしまった。


 そこには正に草原の中にぽつねんと一軒の石積みの家が建っているだけだった。


 聞くとろこによると草原を農地として開拓中に突然地面が陥没して遺跡への通路が現れたとのことである。そこの穴を囲むように建物を作り、その建屋に門番が常駐しているとのこと。


 遺跡というのでギリシャの神殿や巨大な洞窟に門があるような情景を期待していたのだが、見事に予想が外れた。


 さらには、中にいる魔物は2000年もの間放置されていた建物の中に勝手に住みついた地中を好む魔物達ということで、ダンジョンから生み出されるものではなく、当然ドロップアイテムなどないのだ。


 そんなことを考えていると、例のアスコナ団長がこちらに近づいてきた。


「おい、小僧! お前まさかその青いのを一緒に連れて行く気じゃないよな?」


「もちろん、そのつもりですが、何か?」


「何バカなことを言ってるんだ!鳥なんか連れ言ったら邪魔になるだけだ!おいていけ!!」


「いえ、ブルーは従魔並みの戦闘力があるので連れて行きます。」


「何だと!・・・まあいい、邪魔になったら直ぐに切り殺してやるからな!」


「やれるものならどうぞご自由に。」


 出来るわけない、ブルーのシールドの強度は絶対シールドを上回っていたのだ。


「よし、皆集合してくくれ!」


 険悪な雰囲気のなかウイルソンさんの声が響いた。


「これから遺跡内の魔物討伐に向かう。その前に俺、アスコナ、コンテッサで入口付近の魔物の状況を確認をしてくるから少しの間ここで待っていてくれ。それと魔道具のヘッドライトを各自に渡すから使い方を確認しておいてくれ。」


 俺達は門番の騎士の人からヘッドライトを受け取り建屋の前で彼らが戻ってくるのを待っていた。


 遺跡の中は既にコネクトがスキャンしているので入口付近に魔物がいないことは確認済みである。ついでに遺跡全体のスキャンも終わっており、地下50階層という凄い遺跡であることが判明している。不思議なことに魔物が多いのは3階層まででその下にはほとんど反応が無い。


「この鳥ブルーって言うの?」


 シルビアさんていう一等騎士のお姉さんが質問してきた。


「ええ、そうです。」


「キャウ!」


「きゃっ可愛いー! 私の言うことが分かっているの?」


「キャウ、キャウ!」


「ブルーは凄く賢いので、人の言葉を理解できるんですよ。当然さっきの団長さんの言葉もね。」


「ああ、あれね~ごめんなさいね。悪人じゃあないんだけど冒険者という人達に偏見みたいなのを持ってるのよね、カペラ!」


「ああ、騎士団長としては問題ないんだがね。」


 カペラさんという騎士の人が近づいてきた。

 なんか、この人達どこかで・・・。


「あのう、もしかして以前俺達を監視していませんでした。」


「え?気づいていたの?」


「ええ、なんか凄く視線を感じていたので。」


「まあ、あれも仕事ね。お嬢様にもしものことがあったら大変だからね。」


「まあ、そういうことですよね。」


 騎士の人達も団長みたいな人ばかりじゃあないんだな。


「よし、全員配置に付け!」


 アスコナ団長の声が辺りに響き渡った。


 俺達は当初言われた配置の順に並び建屋の中に入っていった。


 建屋の中に入ると床に四角い大きな金属製蓋があった。蓋には金属製の大きな輪が付けられており、その輪には金属製の鎖が付けられており鎖は天井の滑車に巻き付けられていた。その滑車を門番と思われる騎士の人が二人で引きあげて蓋を開けていた。

 蓋の下には3名ぐらい並んで降りられぐらいの幅の階段があり、暗い闇へと続いている。俺達はアスコナ団長を先頭に階段を下りて行った。


 ヘッドライトに照らされて遺跡の中が浮かび上がった。遺跡の最上階は郊外型商業施設の駐車場と言った雰囲気で広い場所に柱が規則正しく立っている。所々に極端に太い柱があるが、あれは大黒柱といったところだろうか?柱の間には建物の破片や何か高熱で溶けたような塊がいたるところに転がっている。 こういった破片や塊の陰に魔物が隠れているため、視認するのが困難なのである。既に何匹か物陰からこちらの様子を伺っているのがわかる。


 俺達はアスコナ団長を先頭に2階層につながる階段に向かった。


「右から魔物が3匹来ます!」


 ヴェルスの声に討伐隊に緊張が走った。


 ドガッ、バキッ、ドゴーン!!!

 

 3匹のデビルモールが姿を現した瞬間、右側にいたミュウが一瞬で殴り倒してしまった。


 今現在コネクトのサーチ能力を全員でシェアしているので、ミュウにも魔物の位置が丸見えなのだ。

 ヴェルス皆のまえなので形だけの警告を発してもらっている。


「「す、凄いな・・・。」」「私、魔物の接近に気が付かなったわ・・・。」


 騎士たちが驚きの声を上げていた。


「ふん! おら、さっさと行くぞ」


 アスコナ団長が機嫌悪そうに指示を出してきた。


 今回の討伐で俺達はある目的を持ってきた。


 それは「今回の一連の騒動を起こした黒幕を何としてもひっ捕らえてやる。」ということだ。


 大義名分は「オナシティを守るため。」ということだが、実際は「先日のゴードフラウ街道の一件でかなり痛い目にあったのでその仕返しをしてやろう。」というのが本音である。


 そのためにコネクトのサーチスキルとヴェルスのサーチスキルを統合してサーチ能力を4倍まで高めているのだ。物陰から出てくる魔物をキャッチしているのはその能力のほんの一部を使っているだけであるが、実用的にはそれで十分なのである。


「前方左からキングケラが2匹来ます!」


 ヴェルスに警告でアスコナ達がキングケラに対して光の刃を放ちながら突進していく。


 キングケラは光の刃を弾きながらアスコナ達に襲い掛かってきた。


「左前方にイエロー・エル・スネークが3匹、右の岩陰にキングワームが2匹います!」


「なにー!Aランクモンスターのオンパレードだと!!」


 アスコナの悲鳴に近い声が遺跡内に木霊していた。

 

「俺はエルスネークを相手にします!ミュウとトニーさんはキングワームをお願いします!」


「お、おい3匹のエルスネークを相手にするつもりか!」


「大丈夫、ブルーがいるから何とかなります!」


「頼む、ブルー!」


「キャウ!!」


 ブルーは一声鳴くと暗い遺跡の中に飛び立っていった。


 イエローエルスネークは口から毒液を吐いて攻撃してきたので俺は絶対シールドを展開してそれを防せぎながら光の刃で応戦するが、3匹が交互に毒液を吐いて攻撃してくるので十分な反撃が出来ない。


「おい小僧、苦戦しているようだな。」


 アスコナ団長が冷やかしの様に言ってきたが、向こうはキングケラ2匹に悪戦苦闘の最中。


「お構いなく、人の事を気にしている余裕があるんですか!」


「なに、うあ!」


 こちらに話しかけている間にキングケラの斬撃がアスコナ団長の横をかすめていったのだ。


 俺は攻めあぐねているのではなく、エルスネークの注意をこちら引いているのだ。


(ブルー、そろそろいいぞ。)


(キャウ―!)


 ブルーが一声上げると目の前の3匹のエルスネークに3本の光の筋が走った!


 カク! 全てのエルスネークの首が異様な動きをしたかと思うと胴体が起きたまま首だけ地面に落ちていった。


(ありゃ、首元を切るんじゃなくて切断しちゃったの?)


 この技はネリの森にいる時に確認しておいた技で、ブルーのシールドを羽の形合わせて展開した後高速の飛行で相手を切り裂く技だ、俺はこれを「ベイパーアタック」名付けた・・・・うん、中二病だね。


 羽の形にシールドを変えた後に長さを伸ばしたのか、凄いな。


「キャウ―!」


 ブルーは俺の肩に戻ってきて得意満面であった。


 ところでミュウ達は?


 グシャ! ドガゴーン!!


 あ、終わったのね・・・・。


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