領主の館での一夜
俺達は執事に連れられて食堂に案内された。
「こんばんは、ゼントさん、どうぞこちらに。」
食堂から笑顔のリーナさんが出てきた。
「リーナさん、こんばんは、先日はオナシティの案内ありがとうございました。」
「いえ、こちらこそありがとうございました。とても美味しい夕ご飯をご馳走になったので何かお礼をしなければならならないと考えていたところだったんですよ。」
「ゼントさんの料理の話を家のシェフにしましたら、負けてはいられないと、今晩の料理はシェフ達が腕を振るってくれたんです。是非召し上がってください。」
「はい、ありがとうございます。」
俺達は白いテーブルクロスが敷き詰められた長ーいテーブルの席に案内された。
こういうテーブルクロスって従弟の結婚式で見たけど、あれは5人ぐらいが座れる丸いテーブルだったな、こんなの初めてだぞ。これが貴族の食卓か?
そんなことを考えていると、執事の人から声をかけられた。
「ゼント様、申し訳ありませんが鳥を食卓につれて行かれては困ります。こちらのこちらの鳥籠に入れていただけませんか?」
「えーっとこの鳥、ブルーは仲間なので鳥籠にいれるのはちょっと・・・絶対騒いだりしないので一緒に食べても良いですか? だめなら俺とブルーだけ別の部屋にしていただいても構いません。」
確かに執事さんが言っていることは間違っていないんだけど、せっかく仲間になったブルーを鳥籠にいれるのは嫌だしね。
「セバスチャン、鳥籠は片づけなさい。それとブルーさんの椅子をゼントさんの横に準備してください。」
リーナさんが、目の色を変えて執事さんに指示を出している・・・執事さんの名前セバスチャンなんだ・・・どっかで来たことがあるような・・・気のせいか。
「え、ですが・・・リーナ様 ケイン様の前で鳥と一緒というのは・・・。」
「おとうさま 良いですよね?」
「あ、ああ分かった。セバス、リーナの指示に従ってくれ。」
うん、完全に娘の尻に敷かれている・・・。
「さあ、ゼントさんこちらにどうぞ。」
俺が案内された席は何故かリーナさんの隣でリーナさん俺、ブルー、ヴェルス、ミュウの順である。対面には領主のケイン氏とリセス婦人、ウイリアムさん、ギルマスである。
ケイン氏が簡単な挨拶をした後に食事が始まった。
「ブルー、食べやすい様に切ってあげるから、昼みたいな食べ方はするなよ。」
「キャウ、キャウ」
ブルーは椅子の背もたれの上にとまって俺が切ってやった肉や野菜を満足そうに食べていた。
「ゼントさん、その鳥、ブルーさんでしたっけ。どこで仲間になられたんですか?」
「昨日の魔物討伐の帰りに怪我をしているのを見つけて直してやったら、妙に懐いてきたんだ。凄く頭がいいのでペットというより仲間といった方がしっくりくるんだね。」
「え、まだ会ったばかりなのに、ゼントさんのいうことを理解しているんですか?・・・本当に賢い鳥なんですね。ローア鳥に似てますけど、嘴の色が違うんですね。」
「うん、ローア鳥の亜種じゃないんかな?」
この質問、今日2回目。
「そうですね、それにしてもローア鳥ってこんなに賢かったかしら?ブルーさん、何かスキルでも持っているんじゃないですか?」
「え?」 「キャッ?」
俺とブルーは思わず目を合わせてしまった。
まさか? スキル持ってないよな・・・・。
「キャウ―?」
ブルーが顔を引きつらせながらじっと見つめる俺を見ながら首を傾げていた。
「ゼントさん、冗談ですよ、冗談。普通の鳥がスキル持っているわけないじゃあないですか。」
いや、普通じゃないからな・・・。
食事に出された料理だが、シェフ達が気合を入れたというだけあってどれも美味しいものだった。おそらく素材は最高の物を使っているのだろうし、その素材の美味しさを引き出すシェフの腕も良いのだろう・・・でもやっぱり何か物足りないのは塩を主体とした味で旨味といのがあまりないのだ。
味の他に勿体無いのが肉の焼き方、どれもウェルダンに焼けている事だ。この世界で使われている肉は魔物主体で最近カウという牛に似た家畜が飼われるようになったが、まだ一般的ではない。野生の魔物や動物の肉にはどうしても寄生虫がいるので半生では食べられないのだ。
そういう俺もソーリの森で暮らし始めた頃、格好つけてミディアムでファイアボーアの肉を食ったら死にそうな思いをした・・・・・・・・ポーションさんありがとう。
それでもミディアムの美味しさが忘れられずいろいろと試してみた。まずは鑑定スキルで肉を鑑定して寄生虫の無い部位を食べようとして断念した・・・魔物の肉は余りにも寄生虫が多いのだ。
次にアイスランスで凍らせて寄生虫を駆除・・・駆除はうまくいったのだが解凍させるのが上手くいかず失敗。
そんなことを考えているとミュウがボソッと・・・。
「この肉焼きすぎじゃあないか?」
「そうですね、ゼントさんの焼いたお肉はもっと柔らかいですよね。」
ヴェルスまで・・・それを言っちゃあお終いでしょう。
そう、俺がミュウ達に食べさせ肉は寄生虫の駆除に成功してミディアムで焼いたもの、それと比較したらシェフが可哀想・・・・。
「え?どういうことでしょうか?」
リーナさんがミュウに質問をしてきた。
「この肉は美味しいんだけど、ゼントが焼いた肉は中が赤くて柔らかくてもっと美味しいんだ。」
「赤いって、まさか生じゃあないですよね?」
「生じゃあないけど、半生かな。」
「それだと寄生虫でお腹を壊しますよ。」
「我は元々寄生虫には強いけど(注1)、ヴェルスもゼントも普通に食べてたぞ。」
注1:そもそも生で食べられます・・・魔物なので。
「いや、でもそんなこと・・・。」
リーナさんが困惑した顔をこちらに向けてきた。
「実は・・・寄生虫を処理してから焼くんで、半生でも問題無く食べられるんだ。」
「そ、そんなことが出来るんですか??」
「特殊なやり方なんだけど・・・・。」
「まさか以前の様に戦闘スキルを使うのですか?」
「まあ、そうなんだけど。」
「明日で良いので教えてもらえますか? 家のシェフもそこで凄く気にしてますし。」
おお、青筋立てている人が一人・・・・。
「はい、分かりました。明日の午後、討伐の打ち合わせの後で良ければ。」
「明日の朝でも構いませんか?」
「いや、この後宿に帰るのと明日の午前中は討伐についてパーティ内でお互いのスキルを確認しようと思っているので。」
俺の話が終わるか終わらないかのうちにリーナさんはケイン氏の方を向き、
「お父様、ゼントさん達に部屋を用意していることを言ってないんですか?」
「おお、そうだ討伐の話に夢中になって言うのを忘れていた。」
「あなた、駄目じゃあないですか。きちんと言っておかないと。」
うん、奥さんにも怒られている。
「ゼントさん、今日は部屋を用意しましたので泊っていってくださいな。」
「いや、食事をいただいて宿泊までは流石に悪いですよ。」
「いや、そんなことは気にしなくていいよ。先日のカーペンター農場の件やゴードフラウ街道の件でも君達はアスモス領に大変貢献してくれているんだ。来賓と迎えているつもりだから今日はゆっくりしていってくれ。」
「あ、はいそれじゃあ遠慮なく泊まらせていただきます。」
確かに、貴族の家にとまる機会なんかないからな。
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食事の後に俺達は風呂に入り、今はそれぞれの部屋でくつろいでいる所だ。
3人が一緒の部屋かと思ったけど俺だけ別室になった。ブルーは俺と一緒だ。
風呂場、凄かったな・・・コネクトに聞いたら全部大理石でできてるって言ってた。
流石貴族といったところ・・・一般人とは違う。
この部屋の広さも凄い、あちらの世界の俺ん家の居間の2倍の広さがあってトイレもついている。調度品も華美ではないが、コネクトが言うにはかなり高価なものが使われているようだ。
トイレのドアは俺が寝ててもブルーが入れるように開けておいた。そのブルーは用意してもらったクッションの上で気持ち良さそうに寝ている・・・・・・・。
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「ヴェルス、もう寝ちゃった?」
ミュウが小声で隣のベッドで寝ているヴェルスに話しかけた。
「いえ、まだです。疲れているはずなんですが、いつもと環境が違うので不安で眠れません。」
「やっぱ、そうだよね~。 それじゃあ行こうか?」
「ええ、心の安息のために行きましょう!」
二人は自分たちの部屋から出てゼントの部屋の前に立ってノックをした。
「ゼントさん、起きてますか?」
「・・・・・・・」
「寝ちゃったようですね・・・。」
「ゼント、一人で先に寝るなんてずるいぞ!注2」
注2:ミュウの自分本位な見解です。
「ヴェルス~、ショートムーブで中に入ろうよ。」
「ここで魔法を使ったら大騒ぎになりますよ。注3」
注3:領主の館だけに、セキュリティのため魔法を探知する結界が張り巡らされています。
「いや、それなら我がカギを・・・。」
「カチャ」
「あれ? 鍵かかってないですよ。」
「ゼント、不用心だな誰かに襲われたらどうするんだ。注4」
注4:襲おうとしている奴に言われたくない・・・・ゼント談
二人はそそくさと中に入っていった。
「ぐっすり寝ているな。」
「ええ、でもゼントさんの寝顔ってかわいいですね。」
「じゃあ、始めようか?」
「ええ。」
そう言って二人はパジャマを脱ぎ出した・・・。
「今度は下着だからゼントさんびっくりしないですよね。」
「そうだな、カルラさんもこの下着ならば大丈夫って太鼓判を押してくれたからな。」
二人はゼントの布団のいつもの位置に陣取り眠りについた。
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「ヴェルス、もう寝ちゃった?」
ミュウが小声で隣のベッドで寝ているヴェルスに話しかけた。
「いえ、まだです。疲れているはずなんですが、昨日と環境が違うせいか眠れません。」
「やっぱ、そうだよね~。 これが邪魔なんじゃない?」
「ええ、安息のためには邪魔ですね。」
「よし、ゼントのパジャマ脱がせちゃおうか? 注5」
「ええ、そうしましょう。注5」
注5:二人は気が付いていないが、傍から見たらほぼ痴女である・・・。
「「やっぱりこの密着感が良いのよね。おやすみなさい。」」
二人はゼントの布団のいつもの位置に陣取り心地よい眠りについた。




