姿無き敵
夜7時過ぎ、俺達は領主様の館の応接に来ていた。
「ゼント君達、こんな時間にすまない。」
「よう、ゼントとかわいこちゃん達。」
「ウイリアムさんじゃないですか、なんでここにいるんですか?」
応接にはケイン領主とオナシティに来る前に出ったカンバーイ国のウイリアムさんが座っていた。
「ウイリアムは私の古い友人なんだ。」
「改めて自己紹介をさせてもらう、俺は名はウイリアム・ヘンツ、ケインとは昔Sランクパーティを組んでいた仲だ。」
「そうなんですか、ん?ウイリアム・ヘンツってどっかで聞いたような??」
「ゼントさん、魔動車を発掘した人ですよ。」
ヴェルスが助け船を出してくれた。
「ああ、そうだ驚いたか?」
「魔動車に乗っている時点で変な人とは思っていたけど・・・。」
「まあ、普通じゃないかな?」
「ケインまで変だというのか!この偉大な俺様をつかまえて。」
「まあ、冗談はこのくらいにして本題に入ろうか。椅子に座ってくれたまえ。」
俺達が席に着くと執事の人がお茶を持ってきてくれた。
「まず先に断っておくが、これから話すことはこの国にとって重要な話にになるので他言無用としていただきたい。」
ケイン氏の目が真剣になった。
「他言無用は守るつもりですが、そんな重要なことを俺達みたいな駆け出しの冒険者に言ってしまってよいのですか?」
「先日のデビルモールやゴードフラウ街道の魔物多発に関する件なので、君達にとってはもう他人事ではないんだ。申し訳ないが我々に協力してほしい。」
なんか、ヤバそうな話だな・・・。
少し考えた後、ミュウとヴェルスの了解を取り、俺はケイン氏の話を聞くことにした。
「まずは先日リーナがラインウルフに襲われた件についてだが、ラインウルフは森林地帯に住み、あのような草原まで獲物を求めてきたなんて前例が無い。」
「ミュウさん達が言ったように騎士たちばかりを襲い最も弱いと思われる馬車の方をスルーするとうのは不自然というしかない。ただし、誰かに操られているというなら話は別だがね。」
ケイン氏は話を続けた。
「二つ目は綿花畑に大量発生したデビルモールについてだが、綿花畑の中に巨大な魔石が存在していたことから、それの魔素を糧として大量発生したと考えるのが素直であり、そんな巨大な魔石が自然界に存在することは考えにくい。最もそんな魔石を人口的に作れるかといわれると、それも難しいと思うが・・・・。」
「巨大な魔石の生成だが、古代文明の力をもってすれば何とかなるかもしれないぞ。まだ俺達が知らないだけかもしれないな。」
ヴェルスが言っていたことだ。
「三つ目はゴードフラウ街道にAランクのモンスターが大量に出没した件だ。その件に関して実際に見てきた君達から説明してくれないか?」
「あーはい分かりました。」
俺は魔物討伐の時ミュウが別行動していたこと、その時ミュウがAランクモンスターの群れと遭遇してしまい苦戦していたので一緒にいた金色の刃のメンバーと別れてミュウを援護に行ったこと。その際に異常な魔素に気が付き30個の異様な魔石を発見したことを伝えた。
多少事実とは違うけど、まあ大筋あってるから良しとしよう。
「救助支援申請を見たんだが、ミュウさんと別行動している時にゼント君はエル・スネーク4体を一瞬で倒したそうだな。」
急にギルマスが話に加わってきた・・・そういわれてみればいたんだ・・・妙に影が薄かったな。
「え、ああ、あれは金の刃さん達にエル・スネークが気を取られていていたので、不意打ちをかけたんですよ。」
「いや、不意打ちでもあの鱗は簡単に貫通できないぞ、リンに聞いたんだが、頭の小さな傷だけで倒したそうじゃないか。一体どんなスキルを使ったんだ。」
いや、あれもやりすぎだったのか・・・。
「あ、あれはですね・・・。」
何て誤魔化そうか・・・・・・・思いつかん。ええい、面倒くさい!
「あれはアイスランスの変形スキルで、氷の槍を細く硬くしたものなんですよ。」
うん、直球勝負。
「凄いな、そんなスキルを持っているのか?」
「ええ、血反吐を吐くほど特訓したので。」
ごめんなさい、ごめんなさい、嘘です。一瞬で習得しましたなんて間違っても言えないません!
「そうか、頑張ったんだな。ところで、ミュウ君は一人で魔物退治をしていただよな。それはもっと凄いな。良く一人で行かせたな。」
う、胃が痛くなってきた。
「え、ええ、血反吐を吐くほど特訓したので、Bランクくらいなら一人で簡単に倒せるんですよ。」
ごめんなさい、ごめんなさい、嘘です。Sランクモンスターだからだなんて間違っても言えないません!!
「そうか、それでAランクモンスターの群れに出会って・・・ちょっと待てなんでミュウさんがAランクモンスターの群れに出くわしたことを君達が分かったんだ?」
この人、俺を尋問していないか????
「それは・・・念話でミュウが連絡してきたんです。」
「念話か・・・なに、Sランクの魔法使いしか使えないスキルが使えるのか?」
え?、そうだったの???
「え、ええ、血反吐を吐くほど特訓したので。」
ごめんなさい、ごめんなさい、嘘です。何気なく使っていただなんて間違っても言えません!!!
「そうか、頑張ったんだな。ところで、君達はAランクモンスターの群れをたった3人で倒したのか!!」
「え、え、ええ、たまたま弱いモンスターだったんですかね・・・・。」
「弱かったらAランクモンスターとは言わないだろう。一体どうやったんだ?」
「え、ええ、ええ、皆で血反吐を吐くほど特訓したので・・・。」
もうこの辺で勘弁してください―――――!!
「ケニー注1 その話はもういいだろう、ゼント君達が見つけた魔石を見せてくれないか?」
注1:既に忘れられている方もいるかと思いますがギルマスの名前です。(筆者は忘れていました。)
ケインさん、ありがとうございます―――――!!
ケイン氏の要請で俺は亜空間から変異E魔素を出す魔石を一つ取り出し机の上に置いた。
「大きさはSSランクモンスターと同じだな。だがこの赤紫の色は見たことが無い。」
「確かにこの魔石が出す魔素は異常だな。亜空間から出した途端に周囲に魔素が放出されてみたされたのを感じるし、何より体に纏わりついてくる感じが異様だ!」
「さっき俺も見せてもらったが、この魔素は余り浴びない方が良いだろう。ゼント君、直ぐにしまってくれ。」
ギルマスに言われて俺は魔石を直ぐに亜空間にしまい込んだ。
「その魔石だが、調査の為に預からせてくれないか?」
「元々引き渡すつもりでしたので構いませんが、亜空間バックに保管しておいた方が良いですよ。」
「分かった、明日までに準備させよう。」
「それから最後にアーシオ遺跡についてだ。これはウイリーが説明してくれ。」
「今日初めてカンバーイ国とゴード国とでアーシオ遺跡の調査を実施したんだが、大量の魔物で2階層までしか行けなかったんだ。護衛としてAランクパーティを3組も従えてだぞ! 数が多いだけならまだしも種類の異なる魔物が連携して攻撃を仕掛けてくるという異常な事態だった。」
「死者がいなかったのが不幸中の幸いだったが2組のパーティはしばらく復帰できないような状態だ。普段はCランクの魔物しかいないという階層にAランクの魔物がゴロゴロいたんだからな。」
「これら一連の事件を整理してみると、二つの事象があることがわかるだろう。一つはリーナが襲われた件とアーシオ遺跡の件は魔物が何ものかに操られているといると思われる事象で、二つ目はカーペンター農場とゴードフラウ街道そしてアーシオ遺跡の件は魔物の大量発生という事象だ。この中でアーシオ遺跡の件は其々の事象を持っている。」
「要はこれらの事象を引き起こしている”犯人”は同一である可能性が極めて高いということだ。」
「やっぱり自然現象と考えるのは不自然だよな!」
「そう、それぞれ状況から判断して自然発生したものとは考えられん。アーシオ遺跡の魔物はゼント君達が見つけたような魔石でAランク化していると考えられ、厄介なことにこの一連の事件を起こした者達の中に魔物を操る能力を持っているメンバーがいると考えられることだ。」
「確かに厄介だな。」
「先日のリーナ襲撃の件で魔物を操る魔法使いについて調べてみたが、ゴード国内でそのようなスキルを持つ魔法使いに関する情報は得られなかった。噂にですらないのだ。」
「それに加えてSSクラスモンスターの魔石を超える巨大な魔石と魔物を活性化させる魔石だ。そんな魔石を簡単に手に入れることなど普通の犯罪組織ではできない、背景に貴族がいたとしても難しいだろう。」
「やはり国家がらみの陰謀ということか?」
「おそらくそうだろうが、断定するだけの証拠が何もない。我々はまだ奴らの尻尾すらつかんでいないんだからな。」
ケイン氏が降参したようなそぶりで両手を上げていた。
「オーマ国じゃあないのか?」
ウイリアムさんの言葉に場の空気が凍り付いた。
うん、ミュウが言ってたな。
「奴らはゴード国とカンバーイ国によるアーシオ遺跡の共同調査を快く思っていない。この状況からすると奴らは本気で今回の合同調査の妨害をするつもりだ。オナシティを壊滅させてもな。」
「オーマ国とゴード国って戦争状態なんですか?」
「ああ、すまん、ゼントはゴード国にきてから間がないので簡単に説明しておこう。
「これから話すことは別に機密情報というわけではないので、気にする必要はない。一般的なゴード国民やカーンバイ国民なら知っている知識だからな。」
「オーマ国とゴード国は戦争状態というわけでは無いが関係は余り良くない。豊富な漁業資源や豊かな農業地帯を元に繁栄しているゴード国に対して、オーマ国は4箇所の古代遺跡で発見された技術等を輸出して国を栄えさせてきたんだ、それが近年、カンバーイ国の遺跡で魔動車が発掘、実用化されたり、昨年ゴードでアーシオ遺跡が発見されたりとオーマ国とっては自国の利益に不利な状況なっていたんだ。」
「オーマ国はカンバーイ遺跡が発掘されると我が国に共同調査の申し入れをしてきたが、我が国では2か所目の貴重な遺跡のため共同調査の申し入れを断った経緯がある。この時はオーマ国に敵対する意思があったわけではないが彼らはそう捉えたんだろうな、我が国に対する示威行動として異世界人の召喚をはじめ、軍備の増強を始めたのだ。」
もしかして俺がここに居るのはそれが原因か?
うん、他人事じゃあない!!
「そういった状況を看過することが出来ず、ゴード王は親戚関係にあるカンバーイ国に対して魔動車の技術供与の見返りとしてアーシオ遺跡の共同調査を申し入れたのだ。魔動車は軍事転用すれば極めて有効な武器となるので、オーマ国への牽制になると考えたのだろうが、逆に奴らを刺激して今回の妨害工作に及んだのだろう。」
「ウイリー、今回の一連の事件はオーマ国による妨害の高いというだけで確定したわけではない。」
ケイン氏は領主という立場上明言は避けているようだけど否定はしていないな。
これは、国家間の争いに巻き込まれてしまったということか・・・。
「オーマ国の妨害かどうか別として、ウイリーが説明したような状況のため今回の合同調査は国の威信にかけても成功させなければならないんだ。」
「現在アスモス領にはSランク冒険者はいない。Sランク冒険者はゴード国に3組しかおらずいずれも王都やその近郊が活動をしている。王都から呼び寄せる場合、急いでも到着まで20日以上のかかってしまう。君達の能力は一連の依頼達成結果からSランククラスと考えている。是非ともアーシオ遺跡の魔物討伐と黒幕の確保に力を貸してくれないか?」
「ミュウ、ヴェルス、どうする?」
「我は構わないぞ!」
「ゼントさんの思うようにやってください。」
「分かった、それじゃあこの依頼を受けることにします。」
「そうか、受けてくれるか。ありがとう!」
「俺も参戦するからな、頼むぜ!」
ウイリアムさんがヴェルス達にウインクをしてきた。
うん、このエロ親父!!
「アーシオ遺跡に向かうのは明後日の朝、明日の午後に詳しい作戦を説明するが、基本的には調査は後にして魔物の討伐主体でいく。」
「そうだ、もう一つのパーティとの連携を考えるのに必要なので君達の得意なスキルを教えてくれないか?」
「えーと、俺は光の刃、音の刃、アイスランス、瞬歩、それと雷撃ですね。防御の絶対シールドとヒールも使えます。」
とりあえず人前で使ったスキルを言っておけばよしと。
「それにアイスランスの変形技と念話か・・・・・・・・・・・・。」
何故かケインさんが急に黙ってしまった。
「はは、ケインの負けだな。」
「ウイリアムさん、どういうことですか?」
「ケインは魔剣士としては珍しく、スキルを6個持っているんだが、この6個という数を超えた奴いなかったんだ。それをお前があっさり超えたんで落ち込んでるんだよな、ケイン!!」
「いや、そんなことは絶対に無いぞウイリー!!」
ケインさん、目が怖い・・・。
「つ、つぎはミュウ君頼む。」
「我は光の刃と身体強化魔拳が得意だ。あと擬音も使えるよ。」
「君は、獣人族の身体能力を生かした魔闘士か、一人で魔物狩りをしていたなんて凄い戦闘能力だな。」
「でへへへ!」
「私は、アイスランスやファイアランス等の戦闘スキルも使えますが、絶対シールドとハイヒール、エリアサーチ、ムーブ等の方が得意ですね。」
「なるほど支援系のスキルが得意なんだ。しかし、ハイヒールやムーブが使えるなんてSランクの魔法使い並みだな。」
「ありがとう、君達のスキルは分かった。」
「魔物討伐は明後日の朝から開始する。討伐隊のリーダーはウイリアム、君に頼む。」
「分かった。元よりそのつもりだ。」
「他の討伐隊のメンバーは、先日の調査に参加したAランクパーティ2名、君達白銀の翼3名、それと我領のAランクの騎士5名の10名だ。」
「それと俺がもう一人特別な助っ人を呼んだから11名 俺をいれて総勢12名ということになるな。」
「明日の午後、ここで顔合わせを兼ねて説明するので3時までに集合してくれ。」
「「「分かりました。」」」
「ああ、そうだゼント君達、遅い時間なので夕食を準備しておいた。他に予定が無ければ食べていかないか?」
「はい、ありがとうございます。」
「そうか、リーナが喜ぶぞ。」
へっ?




