メタモルフォーゼ
(告:コノ場デ気絶スルノハ危険デス。直グニ目ヲサマシテクダサイ。)
俺はコネクトスキルの声で我に返り、直ぐに辺りの様子を伺った。
何だ、あの魔物は?
俺の目には黒豹の様な魔物が呻き声をあげている姿が映し出された。
(アレハ、『ミュウ』サンデス。)
(コネクト、本当か?ミュウの倍くらいの大きさだし、色も違うぞ。)
(非常ニ濃イ魔素ヲ多量ニ吸収シタタメ急激ニSSモンスターニ変貌シタモノト思ワレマス。今ハ魔物トシテノ戦闘本能ガ理性ヲ上回ッテイマス。先程ノ攻撃ハミュウサンニヨルモノデス。)
(・・・・っ、なんてこった。)
(コノ場ノE魔素ハ通常ノE魔素ヨリ体内ヘノ吸収率ガ高イ特性ヲ持ッテイル変異E魔素デス。コノ場所ニ留マルト人体ニモ影響ガ出テキマス。)
(魔人にでもなるってのか?)
(ハイ、魔力ガ暴走シ、ミュウサント同ジ状態ニナルトオモワレマス。)
(ミュウを何とかして、早くこの場所から移動しないと・・・そうだヴェルスは?)
ヴェルスは少し離れた木の根元に倒れいていた。腹部から大量の出血をして・・・。
ヴェ・・・・
思わず声を上げそうになるのを思い留まった。ミュウに気づかれて再度攻撃してくる可能性があったからだ。
俺はほふく前進でヴェルスの所までやってきた。
良かったミュウは他の魔物を狩るのに忙しく、こちらに気が付いていない。
変異E魔素のせいか近辺の魔物は全部Aランク以上だぞ。
(今ミュウサンガ戦ッテイルノハSランクのハイパーボーアデス。)
良かった、まだ息がある。
エクストラヒールを使うと確実にミュウに気が付かれるので、俺は女神だった時のヴェルスから貰ったポーションをヴェルスに飲ませた。
そういわれてみれば俺も腹を・・・・うん、治っている。組織再生スキル恐るべし。
「うぐっ、うぅっ、ゼントさん今の攻撃はいったい・・・。」
「変異E魔素で変貌してしまったミュウだ。」
「え!ミュウさん!!」
「静かに!こちらに気が付かれる。」
「あ、はい。」
「ミュウを動けなくして、何とかこの場所から連れて行かないと。ぐずぐずしているとこちらも変貌してしまう。」
「はい、確かに凄い量の魔素が体内に吸収されていくのを感じます。魔力が暴走してしまいそうです。」
「俺が囮になるから、ミュウを『フリーズフレーム』で拘束してくれないか?その間に俺が木刀でミュウの意識を刈り取ってムーブでこの場を離れる。」
「分かりました。でもミュウさんの体内の魔素はどうしますか?」
「その後に考え・・・」
(告:直接接触スレバ『魔素ヲ操ル者』デ体内ノ魔素を排出スルコトガ出来マス。)
「え、そんな事が出来るのか?」
「なに?どういうことですか?」
「俺のスキル『魔素ヲ操ル者』でミュウの魔素を排出できるらしい。」
「そんなことが出来るんですね。それじゃあ直ぐに始めましょう。」
「よし、やるぞ。」
ヴェルスと俺が戦闘用に魔力を高めた瞬間、ミュウの姿が消えた!
「うっ、――――つ何て速さだ。」
俺もヴェルスも再びミュウに突き飛ばされたが、今度は辛うじて絶対シールドが間に合った。
ヴェルスも絶対シールドごと吹き飛ばされていた。
ミュウは超高速で動いてくるので、目で捕らえることが出来ない。
「くっ そこだ!」
ミュウが一瞬止まったのを見逃さず全力の瞬歩で接近して木刀で捉えようとした。
その瞬間、背中に激痛が走った。
一瞬でミュウに背後を取られ絶対シールドを展開することが出来なかったのだ。
俺を仕留めたと思ったのか、ミュウはそのままヴェルスに襲いかかっていった。
「拡散雷撃」
ミュウの怪我が心配だが、エクストラヒールで直してやれがいいし、何よりあの速度にはついく手段がない。
無数の稲妻が空気が避ける音と共に雷撃が辺りの木々を切り裂いていく。
(告:ミュウサンハ上方ニ回避シテイマス。)
「何!」
空から光の刃が雨のように降ってきた。
「くっ。」
俺もヴェルスも辛うじて絶対シールドで防いでいるが身動きが取れない!。
その瞬間、ミュウが目の前に現れ爪を立てた前足で振り下ろしてきた。
(告:コノ爪ハ絶対シールドヲ貫通サセル能力ガアリマス。)
「なんだと―!!」
俺は辛うじて木刀で爪を弾いて、後ろに飛びのいた。
ん、またミュウの姿を見失った。
「しまった!」
ミュウは今度はヴェルスに襲い掛かっていた。
ヴェルスは絶対シールドを展開してミュウの爪を弾き返そうとしていた。
ヤバい!間に合わない!
ヴェルスの体から鮮血が噴き出しその場に倒れたのだ。
俺は全力の瞬歩でミュウの背後に移動し木刀を大上段から振り下ろした。
ミュウは一瞬で木刀を避け俺の背後に周り、こちらを威嚇しだした。
ヴェルスは直ぐにでもエクストラヒールが必要な状態だけどスキルを使っている状態じゃない!一瞬でも気を抜いたらやられる。
瞬歩で移動速度だけはミュウに対抗できる・・・しかし、体の動きや反応速度が付いていかない、これでは木刀を当てることすらできない・・・・・・・・ まてよ、瞬歩のスキルを全身に使えないか?
瞬歩のスキルを体全体にやってみる。
目の前の空間が一瞬揺らいだとも思うと周囲の動きが鈍くなったような感覚になった。
お、いけるんじゃね?
「瞬速!」
そう叫んで俺はミュウに切りかかった!
ミュウはこちらの攻撃に対して退避行動をとっているのが見える!
「よっしゃ!」
俺は貰ったとばかりに木刀の動きを切り替えミュウの脇腹を狙った。
「おわっと。」
急激な動きによる空気抵抗で木刀の動きが止まってしまったのだ。
木刀にもスキルをかけておくんだった!!
「くっ 逃すか――――!」
俺は木刀を手離して、必死になってミュウの脇腹にしがみついた。
「ぐあー、降りろー!」
ミュウは全力で俺を振り下ろそうとしてくる。
(コネクト!今のうちに。)
(了解! 起動『魔素ヲ操ル者』)
俺の両手に妙に暖かい感触が走った方と思うと光る靄の様なものが手で掴んだ場所から吹き出し俺の体を伝ってから周りの拡散していった。
ミュウは俺を振り払おうと背中から大木にぶつかっていくが、俺は悲鳴を上げながらも必至にしがみついていた。SSランクノンスタ―の力でぶつけられているのだ、組織再生のスキルが無ければ、とうの昔に死んでいる。
少しするとミュウの体毛が黒からグレー、白に変わってきたと思うと体が小さくなり一気に動きが鈍くなってきた。
「ううっ、ゼ、ゼントか・・・?」
ミュウは微かな声でそう言った後、その場に倒れた。
(魔素ノ排出ガ完了シマシタ。)
よし、次はヴェルスだ。
瞬歩でヴェルスの元へ飛んだ俺は、ヴェルスの惨状を見て愕然とした。
右肩から左の脇腹に向かってミュウの爪で引き裂かれたヴェルスは真っ青な体にになり目を見開いたまま倒れていたのだ。見開いた目には輝きはなく、死者のそれの様だった。
「死なないでくれ!!」
俺はヴェルスの額に両手を置き、全魔力を込めてエクストラヒールをかけた。
傷は治っていくがヴェルスの瞳に輝きは見られない。
「頼む!」
さらに魔力を込めたがヴェルスの意識は戻らない。
「・・・・っ、何とかならないか!」
(告:体内ニ大量ニ取リ込マレタ変異E魔素ガ再生ノ邪魔トナッテイマス。『魔素ヲ操ル者』を起動します。)
ミュウと同じように俺の手から光る靄の様なものが噴き出した始めたかと思うとヴェルスの体の色が温かみを帯びて来た。
「よし、もう少しだ!」
ヴェルスの瞳に輝きが戻ってきた。
「ゼ、ゼントさん・・・ミュウは?」
「大丈夫だ、助けた!」
「良かった、本当に・・・。」
ヴェルスの目から大粒の涙がこぼれるとそのまま意識を失った。
ヴェルスとミュウを大木の根元に横たわらせた後、俺はコネクトスキルに言った。
「コネクト、この魔素の根源を見つけ出してくれ!」
(了解!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(サーチ完了!コノ辺リ一帯ニ30個ノ異質ナ魔石ガ地中ニ埋マッテイマス。)
「ありがとう。正確な位置を教えてくれ!)
俺はコネクトから正確な魔石の位置を教えてもらうと詠唱した。
「収納!」
魔石が地面から飛び出すと、直ぐに俺の亜空間倉庫に収納され、さらに、空間に漂う変異E魔素も魔石と一緒に収納されていったのだ。
(エ?魔石ハ分カルノデスガ、魔素ハ・・・ナンデ?)
「魔素も物質なら認識出来れば収納できるんだろ。」
(タ、タシカニソノ認識デ間違イアリマセン。)
「だよね?」
(・・・コノ人ノ行動ハ読メマセン・・・。)
「さあ、二人を連れて帰ろう・・・。」
そういった瞬間俺の目の前の空間が歪んだように見えた。
「な、なんだこれは!」
(コレハ、オソラク『駿速』ノ影響ト思ワレマス。)
「こんな所で俺まで倒れたら・・・」
立っているのもやっとの状況で歩くことなど出来ない。
乗り物酔いのひどいやつだ。空間酔いとでもいうのだろうか?
だ、だめだ・・・・。




