予兆
エル・スネークに襲われていたのは『金の刃』というBランクパーティだった。
今回の討伐を意気込んで受けたのは良いが、余りにも魔物が多いので、危険を感じてオナシティに戻ろうとした時にエル・スネークに襲われたとのこと。
「ありがとう、助けてくれて、もう少しでパーティが全滅するところだった・・・。あ、俺の名はレックス、このパーティのリーダーをしている。」
レックスが俺に握手を求めてきた。
「ほんと、間に合ってよかったです。」
「ハイヒールの代金や今回助けてもらったお礼はオナシティに戻ったら必ずするから。」
「困っている時はお互い様ですよ。代金なんていりません。」
「いえ、お礼無しなんてあり得ないです。私はハイヒールなんて使えないし、それに匹敵するハイポーションなんか、金貨3枚もするんですよ。」
涙をぬぐいながら魔法使いの女の子が話しかけてきた。
「大丈夫ですよ、私はそんなに魔力を使ってないですし、皆さんが無事だったことだけで十分です。」
ヴェルスがそう言った瞬間4人が全員が泣き出してしまった。
「うっぐ、おがねじゃなぐでもいいでずがら、絶対おれいヲざせでぐざざい!」
涙で声出てないね・・・。
「分かりました。それではオナシティに戻ったらどこかで食事でもご馳走してもらえますか?」
ヴェルスが優しく答えていた。
「ばい、絶対ごちそうじまず。」
彼らが少し落ち着いた頃に俺は倒したエル・スネークの分配について話をしたが、彼らは「エル・スネークを倒したのは貴方だから全部貴方のものだ。助けてもらったのに分配なんてとんでもない。」と言われた。魔物を横取りしたみたいで気が引けたが、全て亜空間倉庫にしまっておいた。
彼らは戦意を完全に喪失しているおり、魔物に遭遇しても十分に対処できそうに無かった。そこで俺達も彼らと共に森の出口付近まで行くことにした。
「俺達はシキチ村の出身で、幼馴染でパーティを組んだんだ。」
レックスが身の上話を始めた。
「皆が16歳になった時に冒険者になり、今まで何とか頑張ってBランクまでになったんだがな・・・。何度か危ない目にはあったんだが、死を覚悟するような場面は今回が初めてだった。」
「ここで魔物の討伐は何度もやったことがあるんだ。今まではほとんどCランク以下のモンスターで稀にBランクが出るくらいだったんだが・・・今日の状態は本当に異常だ。狩っても狩ってもモンスターが出てくるし、出てくるモンスターはCランク以上ばかり、いい加減疲弊した時にAランクモンスター。本当にとんでもない一日だった・・・。」
「ところで君達はAランクパーティなのか?ヴェルスさんの魔法も凄いけど、エル・スネークを一瞬で全滅してしまうなんて凄い攻撃だったな。」
「俺達はまだCランクですよ。奴らがあなた方を夢中で攻撃してくれていたんで、隙を付けたんです。運が良かった。」
「いやCランクは嘘だろう!ハイヒールを使えることや、エル・スネークの鱗を一撃で貫通させる技は半端ないよ!」
「少し器用なスキルを持っているだけですよ。」
俺はギルドカードをレックスに見せた。
「本当だ、でもこれだけ強ければ直ぐにBランクになれるよ。」
しばらく話をしながら歩いていると森の出口に近づいた来た。
(ミュウ、そろそろ帰るから森の出口まで戻ってきてくれ。)
俺は念話でミュウに話しかけた。
(ウウ、グルルルル~グアー)
(おい、どうしたミュウ!)
(グルルルル~)
「ヴェルス!ミュウの様子がおかしい!」
思わず大声を出してしまった。
「はい!私も聞いていました!」
「すまないが、俺達は用事が出来たんでここで失礼する。」
「分かった、今日は本当に助かった。助けてくれたことはギルドに報告しておくよ。」
俺とヴェルスはレックス達に別れを告げて森の中に走り込んでいった。
(コネクト、ミュウの位置を特定してくれ!)
(ココカラ北西2500mmノ地点ニイマス。コノ地点ニ異常ニ濃イ魔素溜リガアリマス。)
「ミュウの所にムーブで移動するから、ヴェルスは俺の腕につかまって!」
ヴェルスの探知スキルよりコネクトスキルの方が位置の特定が正確なのだ。
ヴェルスが腕につかまったと同時にコネクトスキルのガイドでミュウの所にムーブで転移した。
「なんだ、ここは!!」
転移した場所は異常に濃い魔素と至る所にある魔物の死体でこの世とは思えない状況だった。
そう思った瞬間、俺は腹に激痛を感じた。




