ゴードフラウ街道
昼過ぎに俺達はフラウリング国に向かう街道を歩いていた。
この道はゴード国とフラウリング国とを繋ぐ重要な街道で、交易のために作られたものだ。道は馬車が通れるように整備されていて歩きやすが、周りには深い森がある。
さっきからコネクトスキルが何度も警告を出してくるのでモンスターが森の中にうじゃうじゃいるのが分かる。
「さあ、これからどうしようか? 奴らが出てくるのを待つか? 積極的に仕掛けるか?」
「我は先に行くぞ――!」
雄たけびを上げてミュウが森に突っ込んでいってしまった。
うん、大分溜まっていたんだね。
「ヴェルスは?・・ん?」
なんかヴェルスの顔が蒼いような・・・?
「ヴェルス、顔が蒼いけど大丈夫?」
「はい、余り大丈夫ではないかと・・・やっぱり私は魔物が怖いんです・・・。」
ああ、そういえば昨日も叫んでいたな・・・。
「大賢者並みの魔法が使えるんだから、Aランクモンスターだって目じゃないだろう。」
「でも、魔物と戦った経験は無いので・・・。それであのデビルモールの大群を見た時に・・・・。」
ヴェルスの顔がさらに蒼くなっていった。
「そうか、それじゃあ出てきた魔物から退治していこうか?」
「すみません、お願いします。」
(告:ミュウガファイアボーアヲ5匹、ラインウルフヲ12匹倒シマシタ。依然戦闘ヲ継続中デス。)
はは、頑張ってるね・・・。
「・・・・っ!」
(告:前方右カラCランクモンスターノゴブモンキー10匹、後方左カラ6匹が接近シテイマス。)
「ヴェルス、戦闘は俺がやるから、絶対シールドで防御しながらここで待ってて。」
「はい、すみません、お願いします。」
ゴブモンキーって食えるのかな?
(食用ニハ適シマセン。)
それじゃあ遠慮はいらないな。
俺は木刀に魔力を通して襲撃に備えた。
「いや――――!!!」
しまった、先に後から仕掛けてきたか!
ヴェルスの悲鳴を聞いて後ろを振り向くと、絶対シールドを張っているヴェルスに6匹のゴブモンキーが襲い掛かってきた。手に剣やこん棒等の武器を持っているが絶対シールドに簡単に弾かれていた。
絶対シールドを破るには不十分だよね、よし、前方に集中しよう。
「いや――――!!!」
何、また・・・。
振り返った俺は絶句した。絶対シールドの外側から目に見えない鋭利なものが飛び出しゴブモンキー6匹を一瞬で殲滅してしまった。
ヴェルスを絶対怒らせないようにしよう・・・・。
そんなことをしているうちに俺の目の前に10匹のゴブモンキーが迫っていた。
「おっと。」
俺は後ろに飛びのきながら木刀を水平に振り光の刃を放った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
死屍累々・・・ん―――いつもながらこの光景は少し引くな・・・。
よし、魔石と尻尾採取しよう。
俺が一匹のゴブモンキーの魔石をえぐり取ろうとしていると。
(告:何ヲサレテイルノデスカ?)
魔石を取ろうとしてるんだけど?何か変か?
(亜空間倉庫ヲ使用シナイノデスカ?)
切り取った後にしまうけど、何か?
(貴方ノスキルナラバ、無生物ヤ生命活動ノ停止シタ生物カラ任意ノ部分ヲ指定シテ亜空間倉庫ニ転送スルコトガデキマスが、使用シナイノデスカ?)
「なんですと――!!!」
「ゼ、ゼントさん一体どうしたんですか!!」
ヴェルスが大声を出した俺に怯えて聞いてきた。
「いや、コネクトスキルが魔石を採るのに亜空間倉庫を使用しろって言ってきたんだ。」
「そんなことが出来るんですか?」
「できるって言うんだから試しにやってみよう。」
俺はゴブモンキーの魔石をイメージして念じてみた。
「収納!」
ボコッという音と共にゴブモンキーの頭から魔石が飛び出し一瞬で消えた。
俺は空間倉庫を開けてみると、ゴブモンキーの魔石が入っていた。
「本当ですね。」
「ああ、本当だ・・・。」
「なんで昨日言わなかったんだ――!」
昨日の108匹のデビルモールの魔石収集は本当に地獄だったのだ。
(ヒュー、ヒュー・・・)
コネクトスキルが音にならない口笛を吹いて誤魔化そうとしていた。
こいつ・・・。
「まあ、いいか・・・。」
俺は死屍累々としているゴブモンキー達から尻尾と魔石を一瞬で亜空間倉庫に収納し、違う箇所にゴブモンキーの亡骸を収納した。
穴を掘っていちいち埋めるのは面倒だったのでね。
あ、そうだミュウにも言っておこう。
(ミュウ、そっちの様子はどうだ?)
俺はヴェルスにも聞こえるよう念話でミュウに話かけた。
(絶好調――――!)
(はは、それは良かった・・・。倒した魔物だけど魔石とかは採らなくても良いから、どこかにまとめておいて。)
(分かった!! オラオラ オラ――――)
「ミュウ張り切ってるね、俺達も先に行こうか?」
「は、はい・・。」
まだ顔が蒼いな・・・やっぱりヴェルスに魔物の討伐は向かないか?
しばらく歩くと木の上からゴブコング(Bランクモンスター、ゴブモンキーの上位種)が3匹飛び降りてきた。
「いや――――!!!」
俺が動き出す前にヴェルスの叫び声と共にゴブコングの顔が透明な壁に当たったように潰れたかと思うと3匹とも後ろ吹き飛んでいった。
いや、今の攻撃魔法は?
(今ノハ攻撃魔法デハアリマセン。絶対シールドノ一部ヲ変形サセテ超高速デ撃チダシタモノデス。)
もしかしてさっきのも?
(ハイ、先程ゴブモンキーヲ串刺シニシタノモ絶対シールドヲ槍状ニ変形サセタモノデス。)
はい、前言撤回します。ヴェルスは討伐に向いています。
俺やることないかも・・・。
(告:前方1000m程先ニ4名ノ冒険者ガ魔物達ニ包囲サレテ戦闘困難ナ状況ニアリマス。)
「ヴェルス!誰かが魔物に襲われている!」
「はい、私も気が付きました。直ぐに行きましょう。」
「ヴェルスは彼らの場所にムーブで転移して絶対シールド保護してくれ。俺は瞬歩で外側から魔物を倒す。」
「分かりました。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
遡ること数分前・・・Bランク冒険者パーティ「金の刃」。
「レックス~!なんか魔物が異常に多くない?」
魔剣士のレガータがパーティのリーダーレックス(同じく魔剣士)に話しかけてきた。
「ああ、だから討伐依頼が出ているってエーバさんが言ってたじゃあないか。」
「いや、それにしてもB、Cランクの魔物が異常に多いぞ。この辺の魔物は元々Dランクが多くて、たまにCランクがでるくらいなのにBランクが出没する時点で異常だ、俺の弓も残り少ない。」
魔弓使いのコンパーノが話に加わってきた。
「私のポーションも残り少ないんだけど。これが無くなったら魔力切れになっちゃって支援どころじゃないよ。」
魔法使いのグロリアも音を上げいる。
「ん~そうか・・・この依頼は討伐数で依頼料が出るから、上手くいけば借金が返せるんだけどな。」
「いや、借金の返済は無事ならいつでもできる。命あっての物種だから今日は帰ろう。また明日にすればいい。」
「「そうしようよー!」」
レガータとグロリアがハモって訴えてきた。
「あーもう分かった、今日はこのくらいにしておくか。」
レックスの言葉に一同安堵の表情を浮かべた。かくいうレックスもホッとしていたのだ。
彼らが来た道を引き返そうとした時。
「ちょっと待って!」
「グロリア、何だ!」
「魔物に囲まれている。」
グロリアの探知魔法が4匹の巨大な魔物を察知していた。
「ヤバい!なんかでかいよ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コネクト、魔物の種類は何だ?
(レッド・エル・スネーク ト イエロー・エル・スネークガ其々2匹イマス。イズレモAランクモンスターデス。)
レッドスネークとイエロースネークか・・。
(グリーン・エル・スネークハイマセン。)
いや、聞いてないから・・・。
(レッド・エル・スネークハ口カラ火炎ヲ、イエロー・エル・スネークハ毒液ヲ出シテ攻撃シマス。体表面ノ鱗ハ非常ニ硬ク、アイスランスデハ貫クコトハ出来マセン。サラニ電気ヲ表面ニ流ス特性ヲ持ッテオリ、雷撃モ通用シマセン。)
いや、それは面倒な奴だな。
光の刃で切り裂くしかないか?
(光ノ刃でも遠距離ノ攻撃デハ効果ガ期待出来マセン。魔剣ニ光ノ刃を纏ワセテ直接攻撃スルコトガ最良ト判断シマス。)
接近戦か?それはいいけど、蛇の輪切りはちょっと嫌かな・・・。
おっと、あいつらか。
コネクトスキルと話している間に、魔物の姿が木の間から見えてきた。
(ゼントさん、今良いですか?)
ヴェルスが念話で話しかけてきた。
(ああ良いよ。今、魔物の姿を確認したところだ。これから攻撃する。)
(魔物に襲われた冒険者ですが、一人はパーティの魔法使いにヒールで回復してもらっていますが、もう一人はかなりの重症で、エクストラヒールでないと回復できません。使ってもよろしいですか?)
エクストラヒールは人族では大賢者クラスの人しか使えないので、人前で使うのは止めようって話していたのだ。
(緊急なら仕方ないけど・・・そうだ、『ハイヒール』と言いながらエクストラヒールって使える?)
(もともと私に詠唱は必要ないので、大丈夫です!)
(よし、それなら後から聞かれてもハイヒールだって言い張ってね!)
(分かりました。)
(それじゃあ、俺は攻撃に移るから。)
よし、あの木だ!
俺は瞬歩と風魔法を使い近くの巨木を枝に登り、魔物達を一望した。
レッド・エル・スネークとイエロー・エル・スネークは炎と毒液で冒険者達を攻撃しているが、ヴェルスの絶対シールドに阻まれて攻撃は冒険者達に届かない。
よし、一発で決めよう。
俺は魔剣に魔力を込めて言い放った。
「アイスランス!」
(イヤ、ソレ効カナイッテサッキ説明シタデショウ!)
「ニードル!」
(エ?)
詠唱と共にアイスランスが・・・・飛んでいかなった。
その替わりに其々の蛇たちの頭上にアイスランスが1本出現したかと思うと、一瞬で針の様に細くなり全ての蛇の頭を貫通したのだ。
(説明ヲ求ム。)
通常のアイスランスでは貫通出来ないって言ったので、圧縮して氷の中の空気を追い出して密度を上げたんだ。細く鋭利になったので貫通し易くなったしね。
光の刃で血の海というのは嫌だったので、最小限の出血で最大の効果が得られる方法を選んだんだ。
(・・・・・・)
俺は木から降りてヴェルスがいる方向に向かって行った。
「ヴェルス、大丈夫かい?」
「ええ、丁度治療が終わった所です。」




