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ゼント・リポート

 依頼完了の翌日、俺達はギルド受付のリサさんの所に来ていた。


「いらっしゃい、ゼントさん今日は素材の買取ですか?」


 素材マニアのリサさんは目をランランと輝かせていた。


「それもあるけど、まずは依頼完了の報告ですね。」


 ゼントは依頼完了の書類をリサさんに渡した。


「え?これは昨日受けた依頼じゃないですか? もう終わったのですか?」


「難易度はCですけど、デビルモール達は土の中にいるので駆除は大変なはずです。最低でも一週間はかかるはずでが・・・確かに、カーペンター夫妻のサインが入っていますね、なんか字が震えているみたいですが。それでは一応討伐の証拠となる魔石と牙を見せてください。」


「出来れば他の部屋にしてもらえませんか?」


「どうしてですか?」


 リサさん俺の質問に首を傾げていた。


「余り他の人に見せたくないのですが・・・。」


 俺はリサさんに顔を近づけて小声で言った。


「そこまで言われるなら、こちらの部屋へどうぞ」


 怪訝そうな顔をしながらリサさんは俺達を解体を行っている部屋に案内してくれた。


 部屋の中ではガタイの良いおっさんが黙々とファイアボーアの解体をしていた。


 まあ、あのおっさんはギルドの職員だろうからこの場所なら良いか?


「その机の上において下さい。」


 俺は亜空間に手を突っ込み108個の魔石を取り出しテーブルの上に置いた。


「あ――え――!!!」


 リサさんが素っ頓狂な声を張り上げた。


「次に牙だけど。」


「ちょっ、ちょっと待ってください。牙はこちらの机に!」


 俺は別の指定された机の上に牙を216本置いた。


「ま、まさかデビルモールがこんなにいたんですか!!!」


「ええ、俺達も驚いたんですよ。」

 

「いえ、それ全然驚いていないでしょう!、せいぜい10匹ぐらいと思っていたのに・・・。」


 なんでリサさんテンションが高いんだろう?


「災害級に匹敵する数のデビルモールがあの畑にいたなんて・・・いえ、それよりこの数のデビルモールをたった半日で狩ってくる人達がいるなんて・・・よくカーペンター夫妻生きてましたね・・・オナシティも・・・。」


 今度は頭を抱えてぶつぶつ言いだした。


「おい、何があったんだ?」


 魔物を解体しているおっさんがリサさんに声をかけてきた。


「ああ、ドンさん。これ見て・・・。」


 リサさんは俺が置いた魔石と牙の山を指さした。


「お、凄いな牙はデビルモールだな、ということは魔石もデビルモールか? 凄い数だな、何か月かけて集めたんだ?」


「半日・・・。」


「リサ、冗談はやめろよ。」


「いえ、本当・・・」


「・・・っ、本当か? 一体誰がこんな数を半日で集めたんだ!」


 リサさんが半分固まった状態で俺達を指さした。


「まさかとは思ったが、あんちゃん達か?」

  

「はい、あ、俺達は『白銀の翼』というパーティで俺はゼントといいます。」


「我はミュウ!」


「私はヴェルスと申します。」


「あ、ああ俺はドンっていうんだ。ここで魔物の解体をやっている。」


「解体、それじゃあデビルモールの解体をお願いできますか?」


「ああ、構わない。そこの大きな机の上に持ってきてくれ。」


 指示された机を見ると大きさも、強度も不足しているように見える。


「この机、強度は十分ですか?」


「デビルモールぐらいなら・・・どういう意味だ?」


「7匹いるんですが・・・。」


「7匹・・・分かった、こっちの綺麗な床に置いてくれ。」


 俺は亜空間を開きデビルモール7匹を一気に放出した。


「ほう、亜空間持ちの冒険者か?珍しいな。」


 ドンさんは床のデビルモールを一匹づつ確認していった。


「5匹のデビルモールには傷一つないな、凄い極上品だぞ、どうやって狩ったんだ?」


「おびき寄せて出てきたところをミュウが拳で・・・。」


「え? 撲殺したってのか?こんなかわいい娘が?」


 ドンさんはどや顔しているミュウを見ながら真っ青な顔をしていた。


「7匹のうち傷の無い5匹は買取で、2匹は肉をいただけませんか?」


「ああ、構わない2匹の解体なら今日の夕方には終わるだろう。」


「分かりました、夕方6時頃に受け取りに来ますが大丈夫ですか?」


「ああ、その時間なら終わっている。」


「それとリサさん。素材の買取の件ですが・・。」


 「・・・・・・・」


 まだ固まっている・・・。


「リサさん!」


「あ、はい――っ!」


「リサさん、108匹のデビルモールの素材と5匹のデビルモールの買取、2匹のデビルモールの解体をお願いします。解体したデビルモールの魔石と牙は買取でお願いします。」


「はい、少し時間がかかりますが直ぐに計算します。」


「お願いします。それと、この件ですがあまりにも異常な数なので、他の人に話さないでいただけますか?ドンさんもお願いします。」


「あ、ああそうだな、分かった。」


 リンさんも頷いている。


「この件に関してギルマスに話がしたいのですが、今いますか?」


「はい、部屋にいると思いますので、直ぐに確認してきます。」


 リサさんは慌てて解体場を飛び出していった。


 少しして俺達はギルマスの部屋に通された。


「いやあゼント君、良くあの依頼を達成してくれたな。あれはアスモス領にとっては大切な依頼だったんだ、なにせ特産品の畑だからな。本当によくやってくれた。」


「そのことなんですが・・・これからお話することは大騒ぎになるといけないので他の冒険者の方達には知られないようにしてもらえますか。」


「それは115匹のデビルモールの事か?もちろんそんな話が知れ渡ったらオナシティがパニックになるからな。」


「それもあるのですが、もう少し面倒なことなんですが・・・。」


 怪訝そうな顔をしているギルマスの目の前に俺は亜空間から巨大な魔石を取り出して置いた。


「こっ、これは魔石か?」 


「魔石です。」


「いや、こんな魔石は見たことも聞いたこともない。SSクラスでも10cmがやっとだ。一体この魔石をどこで入手したんだ?」


「カーペンター夫妻の畑の中で・・・。」


「そんな馬鹿な・・・・いや、本当なのか?」


「はい、本当です。」


「おそらくデビルモールはこの魔石のせいだ大繁殖したのだと思います。」


 ヴェルスが補足説明してくれた。


「いや、こんな自然界に存在しないものが綿花畑にあっただと!」


 ギルマスは少し考え込んでしまった。


 しばらく沈黙した後、頭の中で整理がついたのか、ギルマスは俺達に質問し始めた。


「115匹のデビルモールの件はカーペンター夫妻は知っているのか?」


「はい、デビルモールの件は説明しました。」


「このでかい魔石の件は?」


「それは伏せておきました。カーペンター夫妻の物とは思えませんでしたから。」


「そうか、カーペンター夫妻には115匹のデビルモールの件は黙っていてもらうことにしよう。それと、君たちもデビルモールも魔石の件も他言無用としてくれ。」


「はい、分かりました。それとカーペンター夫妻にはデビルモールの数は他人には言わないようお願いしてあります。」


 ギルマスの真剣な表情に威圧されてしまい、少し畏まってしまった。


「そうかありがとう。それとこの魔石はカーペンター夫妻の所有物ではないのは間違いないから、所有権は君達にあることになるな。ただし、この魔石は預からせてもらう。流石に買取は無理だが、情報量は出すことが出来るのでそれで我慢してくれないか?」


「元々そんな怪しいものを持っているつもりはありませんので。預かっていただいた方が助かります。」


「この件は、領主様と相談をする。必要に応じてもう一度話を聞くことになるが、その時は頼む。」


「はい。」


「リン、念押しだが、カーペンター夫妻に連絡して昨日のデビルモールの数は誰にも話さないようこちらからもお願いしておいてくれ!」


「了解しました。えっとドンも115匹の件は知っているんですが・・・。」


「分かった。ドンにもしっかり口止めしておいてくれ。」

その後、俺達はギルドの受付に戻り、リンさんから依頼料の金貨10枚と115頭分の素材買取料、5頭分の肉の買取量として金貨14枚、小金貨4枚、銀貨3枚を受け取った。魔石の情報量は後日支払われるとのことだ。


 依頼料より素材買取量の方が高くついたな。これだけあればしばらく依頼は受ける必要が無いな。


「ゼント、せっかくギルドに来たんだから依頼を受けようよ?」


「いや、お金は十分あるから今日は受けなくても良いんじゃないか?」


「いや、昨日の依頼じゃ暴れたりないんだ。もう少し倒し甲斐のある魔物じゃないと運動不足になるよ。」


「そういうことなら依頼を見ていくか。」


「うん、そうしよう!」


 ミュウが意気盛んに掲示板の所に走っていった。

 

「なんか、やたらに討伐依頼が多くないか?」


「そうですね、昨日はこんなになかったのに。」


「それは、フラウリング国とを繋ぐ街道に大量の魔物が急に出没するようになったからなんですよ。」


 受付からエーバさんが出てきて説明してくれた。


「そうなんですか、なんでまた急に魔物が増えたんですか?」


「原因はまだわかっていません。まずは街道の安全確保のため、討伐依頼を沢山出しているんです。Cランクパーティから依頼を受けられますよ。」


「ゼント、依頼受けようよ!」


 ミュウはやる気満々だな・・・でも少し引っかかるな。


「依頼を受けるのは構わないけど、こういった重要な依頼はAランクパーティが主体でやるじゃないですか?」


「普段はそうなんですが・・・現在Aランクパーティの人達はアーシオ遺跡の探索の護衛に行ってしまっていてBランク以下のパーティの人しかいないんですよ。ゼントさん達はAランククラスの実力があるとギルマスから伺っていますので、是非お願いしたいんですが・・・。」


「うーん、仕方ないか、ヴェルスは受けても良い?」


「ゼントさんが良ければ・・・。」


「そう、ところで依頼料は書いてないけどどうなるの?」


「こういった依頼には依頼料はありません。倒した魔物の種類と数に応じて支払いが行われます。基本的には魔石や角なのど魔物の一部を採取していただいて提出していただき、それらに応じて討伐料と買取料を支払います。それと達成時のポイントは3になります。あっとゼントさんは亜空間倉庫を持ってらっしゃいましたね。それなら、魔物によってはお肉の買取も致しますよ。」


「それじゃあ、この依頼を受けます。」


「はい、ありがとうございます!」


 エーバさんがニコニコしながら、書類をもって受付に入っていった。


「はい、魔物の討伐が終わりましたらこの依頼書を買取の受付に提出してください。討伐期間は来週の水曜までの一週間になります。今日から行っていただいて問題ありません、というよりできれば今日からやっていただけると助かります。それと討伐した魔物ですが、そのまま放置すると腐敗して問題となりますので、地面に穴を掘って埋めてください。埋めた跡には何か目印を置いてください、後でギルドの職員が埋めた場所の魔物を焼却処分しますので。」


「分かった、直ぐ行こうゼント!」


 ミュウ、張り切りすぎ・・・尻尾がビンビン揺れているし。


「よし、今日はまずは様子見ということで行こうか?」


「あ・・・はい、そうしましょう。」


 うーん、ヴェルスとミュウの温度差が凄い・・・。

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