初めての依頼
・・・つ、朝か?夕べ乾杯した後の記憶が無い。また、二人に挟まれて寝ている・・・。今日は拘束されないように大人しくしていよう。
「ゼントさん、起きたんですか?」
ヴェルスが小声で話しかけてきた。
「ああ。」
「すみません、今日も一緒に寝かせていただきました。」
「まあ、良いけど。君みたいな若い娘が若い男と一緒に寝てていいのか?」
「私は若くありませんよ。女神として生まれてから2018年なので。」
いや、そういう意味では・・・。
「実は・・・私この地上の世界が怖いんです・・・。」
「え? だって女神の力は奪われてても大賢者並の魔法が使えるんだろ。」
「ええ、でも絶対に安全な天上界から、この世界に謹慎を言い渡された時は、本当に心細くなりました。神の力はなくなるし、天上界から見ていたたとはいえ、初めての世界に放り出されたのですから。どうしても一人になってしまうのが怖いんです。」
「確かにそうだろうな、俺もこの世界に落とされたときは、めちゃくちゃ心細かったもんな・・・。」
「お願いします、これからもゼントさんと一緒に寝させてください。」
「でも、俺の理性がいつまで耐えられるか・・・。」
「ゼントさんとならいつでも大丈夫ですよ・・・。」
ヴェルスは顔を赤らめながら、布団を被った。
「・・・・」
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俺達はワンモーメントで朝食を摂った後、ギルドに来ていた。
「さあ、どんな依頼を受けようか?」
さっきから依頼の掲示板の前で悩んでいた。
「魔物の素材採取って、魔物を倒しに行くってことだよね?」
「そうだ、強い相手を選ぼうよ。」
ミュウはやる気満々だ。
「いや、素材は手持ちがあるからな、わざわざ行くというのも何だし、素材の為に魔物を倒すというのはどうも・・・。」
「それなら、こんな依頼はどうですか?」
ヴェルスが選んだのは綿花畑の魔物駆除依頼だった。
「農家を助ける依頼ね。いいんじゃないかな? これCランク依頼だけど、報酬が金貨10枚は他の依頼に比べて良い報酬だね、なんでだろう?」
「それは、面倒くさい依頼だからだよ。」
後ろからの男の声に驚いて振り向いた。
「トニーさん!」
「ようっ!ゼント その依頼は面倒くさいので受け手がいなかった依頼だ。そんなの受ける気か?」
「どんな風に面倒くさいんですか?」
「駆除対象の魔物『デビルモール』は強さはCランクだけど地面の中にいるから倒しにくいんだ。地面の中に作ったトンネルの中を高速で動くんで捉えるのが非常に難しい。意外と狂暴で、数が増えるとAランク級の厄介な奴だ。」
「確かに、面倒な奴ですね。でも農家の方は困っているんでしょう?」
「そうだな作物は荒らされるし、収穫中に襲われることもある。以前はいなかったみたいだが、最近増えたらしいな。」
「それなら、受けてみようかな?皆はどうする?」
「デビルモールなら我に任せなさい!」
「私も農家の人たちに役立つなら良いですよ。」
「じゃあ、決まりだ!」
「はは、お前ら変わっているな。まあ、せいぜい頑張れよ!」
右手をあげながらトニーは入口の所で待っていたパートナーのアリソンの所に歩いて行った。
アリソンがこちらを見ながら笑顔で手を振ってくれていた。
「エーバさん、この依頼お願いします。」
「これですか? これは、1か月ぐらい受け手が無くて困っていた案件ですね。元々金貨5枚が報酬だったんですが、受け手がいないので報酬を上げたんですよ。これを受けていただけるなんて本当に助かります。」
エーバさんがにっこり笑いながら別の書類を出してきた。
「はい、これが依頼の場所と依頼者の家の地図とギルドの依頼証明書です。まずは依頼者と会っていただき、この依頼証明書をみせてください。詳しい状況は依頼者から伺っていただくことになります。いつ頃行かれますか?」
「今日行こうかと思います。」
「それでは依頼主の方に連絡を取ってみます。少々お待ちください。」
エーバさんは奥に入って木の箱に手をかざすと、木の箱の上に魔法陣が浮かびあがった。の魔法陣に向かってエーバさんは話始めたのだ。
電話もあるのか?インターホンがあるから当然か・・・。
「それでは今日の1時に依頼者のカーペンターさんの家まで行っていただけますか?」
「はい、わかりました。」
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・・・ゼント達が依頼を請け負った時のギルドの片隅で
「おい、あいつらデビルモールの依頼を受けたぞ。スミスさんに連絡しておくか?」
「いや、その必要はないだろう。ただのCランクパーティだ。」
「そうだな、あんな華奢な奴らだと一匹倒せるかどうかだろう。」
「数日で音を上げるさ、スミスさんの耳に入れる程の事もないな。」
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お昼にに近くなった頃、俺達は街を散策しながら地図の場所に向かっていた。
畑はオナシティの南側に面しており、街はずれの丘を超えると、そこに綿花畑が広がっていた。
「凄い!これが全部綿花畑か?」
丘の直ぐ下辺りから綿花の畑が彼方まで続いていた。綿花の畑は平らではなく緩やかな丘陵の上にあり、逆光気味のトップライトに綿花が光輝いており、所々に小さな森や小屋が点在している。綿花の白がまるで雪が降り積もったかのように見える。
「ザラス領の特産品の一つは綿を使った織物です。その織物に使うための綿花がこの辺り一帯で育てられているんですね。」
「本当に綺麗だ。よし、ここで昼食にしよう。」
俺は亜空間から麻布を取り出し地面に敷いた。それから宿に戻って作ってきたサンドイッチとスープを取り出して麻布の上に置き、麻布に腰を下ろして食べ始めた。
眼前に広がる綿花畑には時々風が渡るように吹き付け綿花を揺らしていた。
「この一帯の地下にいる魔物の退治か~。結構時間がかかりそうだな。」
「そうですね、依頼の期限は20日後ですので効率的に倒していかないと期日に間に合わないかもしれませんね。」
「それなら大丈夫!」
「何?ミュウに何かいいアイデアがあるのか?」
「相手はデビルモールでしょ? 3人でやれば半日で終わるよ!」
「本当か?」
「任せなさーい!」
ミュウがどや顔で胸を張っていた。
俺達は昼食を済ますと依頼人の家に行き、玄関で呼び鈴を鳴らして家の人が出てくるのを待っていた。
「はーい、少々お待ちください。」
家の中から返事が聞こえたかと思うと玄関に一人の初老の女性が現れた。
白髪の混じった茶色の髪を後ろで束ねており、白いエプロンをしていた。少々小太りで肝っ玉母さんという雰囲気である。
「え?あ、いらっしゃいませ・・・あなた方がギルドから派遣されたCランクパーティですか?」
女性は俺達を見て少し戸惑っだった。
「はい、そうです。こちらが依頼書で、これがパーティのカードです。」
女性は依頼書とカードを確認した。
「あ、はい確かにCランクパーティ『白銀の翼』の方々ですね。申し訳ありません、冒険者というとごっつい人達ばかりだと思っていましたので・・・申し遅れました、私はアン・カーペンター、主人と一緒にこの農園を営んでいます。ここで立ち話をするのも何ですので奥へどうぞ」
案内された居間には白髪の日に焼けた体格の良い男性が待っていた。
「やあ、いらっしゃい。私がこの農園を経営しているライアン・カーペンターです。今回は厄介な依頼を引き受けてくれてありがとう。」
俺達はライアンに挨拶をしてソフアーに腰かけた。
「早速ですが、魔物の状況を説明していただけますか?」
「ああ、分かった。魔物はデビルモールで半年ほど前から出没するようになったんだ。それまでは一匹もいなかったんだが、2か月もすると十数匹になり、今では何匹いるかわからないくらいだ。綿花の根はだめになるし、時々人間を襲うこともある。まだ死人は出ていないが、息子は右足を食いつかれて大怪我をしてしまった。儂も何度も食いつかれそうになった。
さらに奴らは土を耕してくれるビッグワームを食らいつくしてしまったので土が痩せるばかりだ。」
ライアンは忌々しそうに顔を顰めていた。
「急に増えたの言うのも妙ですね。近くの森にでも生息していたんですか?」
「いや、この近辺で見かけたという情報はないな。」
「どこかの森から追われた奴がビッグワーム目当てでここに来たんじゃないか?あいつ等はビッグワームが好物だから。」
「そうかもしれんな。この土地はビッグワームが沢山いたからな。」
「それでは、現在の生息状況を確認してから駆除方法を検討します。」
「ああ、頼む。」




