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転生王女は推し活したい!~推しである婚約者になかなか会えなくても、グッズ作って活動します~  作者: 東風香


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92 あなたはだあれ?

メアリーたち一行は、2つ目的があってここサザランカ領にやって来た。


1つ目はもちろん、マシュベリーがどこにいるかを探ることだ。ただ、こちらは並行してエルドレンも探ってくれているはずだ。


2つ目は、キリアンの妹、アンナを探すことだった。


確かにエルドレンの言っていた通り、アンドルーの影響が強かった軍部はシュレイン皇帝派閥がコントロールできていない。だが、その2番手であり、軍部を動かせる力も持つキリアンがアンドルーの意思を継がず、エーデルの即位を叶えられていないのも事実だ。


力関係から言えば、キリアンが裏切ったとみるのが妥当だろう。それに、ジャンがアンドルーを始末しようとした1件もある。だが、ここにきてマシュベリーが手を回していた可能性が出てきたのだ。


アンドルーは一度、酔ったキリアンから聞いたことがあるらしい。官僚になれそうなほど、聡明で知識もある彼に命の危険もある軍を志したのかと尋ねたのだそうだ。すると、キリアンは『妹が病気で、サザランカ領で治療を受けている。』と答えた。


ただ、当時のアンドルーは単に気候の良い場所で療養させているのかとしか思わなかったらしい。キリアンは北の出身であるらしく、妹をわざわざ南のサザランカ領に移動させていることになる。首都でもなく、大病院や名医いる訳でもないその地に移動させているのだ。そして、そのサザランカ領はマシュベリーのお膝元である。これを偶然だと思う人間はいないだろう。


もし、キリアンが弱みを握られているのだとしたら、そしてそれを取り除くことができたなら。エルドレンやアンドルーの助けになるはずだ。そして、その弱みは彼の妹に他ならない。


「うっ、流石に冷えるわね。」


メアリーは教会の壁面に右手を添え、左手は胸元まで垂れた大判のストールの端を掴む。


「まあ、こうでもしないと見つけられないでしょうから、仕方ないわね。」

「2人とも、幽霊の私がいるの忘れていない?」


田舎での治療は主に教会かその近くの救護院で行われることが多い。ここでも同じだろうと推測して、暗闇の中、メアリーとステラテアは彷徨い、その後ろからポリーがふよふよとついて来ていた。サラには休憩も兼ねて、部屋の門番をしてもらっている。


「ポリーの提案はありがたいけれど、会っても話せないでしょう?」


安全を取るなら、ポリーの指摘が正しいだろう。だが、メアリーは一刻も早く問題を解決する必要がある。それに、アンナと会えても交渉が必要かもしれない。だが、少なくとも彼女に会えば1つ進むことができるのだ。


キリアンが酔った際にしか彼女のことを漏らさなかったことを考えれば、教会の関係者たちに素直に話しても彼女に会えるとは思わない。それに、サラが司祭と挨拶を交わすついてに、教会や孤児院、その隣にある救護院まで案内してもらえたが、特徴の一致する女性はいなかったらしい。


メアリーはランプを頭上にかざす。目の前にうっすらと見えるあの塔、夕方に聞こえた声はあそこから聞こえたような気がするのだ。


ドアノブに手をかけ、教会の扉を開けると、ギーッという嫌な音が響く。重厚な石造りでできた建物に足を踏み入れれば、ヒンヤリとした空気が包み込む。なんだか肝試しの様で、メアリーは足が震えてしまう。


木々の揺れる音に、時折手を止めて隠れる。それでも、3人で捜索すると、2つの階段が見つかった。塔に続くと思われる階段にはメアリーが、地下室がありそうな階段にはステラテアとポリーが向かう。


ひたひたと階段を登る足音が響く。1人分しか通ることができなさそうなほど細い通路に右手を添えて進むが、あまりの狭さと急な階段に目が回りそうになる。


足元を照らすように暗がりに光が差す。メアリーは蜜に群がる蝶のように、引き寄せられていく。そこには、小さな椅子と児童書が置きっぱなしになっていた。


「まさか。」


口元を手で封じ、漏れる声を閉じ込めようとした。点と点が線で繋がり、メアリーは期待に胸の高鳴りを押さえられず、石でできた階段と足早に駆け上がる。その時だった。


「あなた、何しているの。」


しまった。背後からの冷たい声にメアリーは恐る恐る振り返る。黒い喪服に、顔には細かな模様のチュールがかかり、表情が読めない。それ以上に、瞳の色すらわからないのだ。それでもこの格好は、


「マ、マシュベリー様?」


メアリーは震えながらその名を口にする。だが、目の前の彼女は、それを見てせせら笑う。


「あら、そちらが名乗るのが筋ではなくて?」

「しっ、失礼しました。メアリー・サチュバエラと申します。」


メアリーは慣れない名前を口にする。


「サチュバエラ?珍しい名前ね。」

「あ、えっと、カヴァリア連邦の出身でして。」

「それにしては珍しい髪色ね。」

「ええ、母がラウスト王国出身でして。」

「なるほどね。」


矢継ぎ早の質問にメアリーは額に薄い汗をかく。


「で、答えてもらおうか。何しているの、メアリーちゃん?」

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