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転生王女は推し活したい!~推しである婚約者になかなか会えなくても、グッズ作って活動します~  作者: 東風香


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85 皇太子の推察①

スッツデール帝国がフィストラル王国を侵略したことは予想だにしていなかったとはいえ、エルドレン自身、浮かれていなかったかと言われると否定できない。メアリーをシェレンディア帝国に迎え入れる下準備に忙しく、結果的に後手に回ることになってしまった。


開戦の通達のためにスッツデール帝国へ訪れた際、メアリーに会えたが、彼女を連れて帰ることもできなかった。それは根本的な解決にならないことはわかりきっていたし、身内と王国を盾に取られた彼女には、亡命を拒否されてもそれ以上何も言えなかった。


ただ、メアリーはその状況を諦めきってはいないようで、彼女は2つのお願いをしてきた。

1つ目はカヴァリア連邦にいるステラテアをスッツデール帝国に連れてきてほしい。

2つ目はフィストラル王国前王妃スヴェンナを探してほしい。アンドルーの想い人なの、と。


前者はまだわかる。メアリーの滞在中、カヴァリア連邦に潜らせていた部下から色々な情報は得ていた。

だが、後者はよくわからなかった。こんな緊迫した場面で、人の恋路を応援するほど、彼女も呑気ではない。


そこで初めて、これが単なるスッツデール帝国とフィストラル王国の諍いではないのではないかと思いつく。


状況を俯瞰すれば、スッツデール帝国はフィストラル王国、ラウスト王国に喧嘩を売っている。シェレンディア帝国の婚約者を横から掻っ攫えば、この3国と敵対するのは自明だ。


フィストラル国王を殺め、復興中のラウスト王国だけなら1国でどうにか戦えたかもしれないが、シェレンディア帝国に喧嘩を売るならば、スッツデール帝国はカヴァリア連邦、ネイシタブ王国と徒党を組める算段があると取るのが筋だろう。


カヴァリア連邦とネイシタブ王国は兄弟のような関係だ。連邦が動かなければ、ネイシタブ王国も動かない。なら、少なくともスッツデール帝国はカヴァリア連邦と同盟を組める見込みがあるのだ。確かに、カヴァリア連邦とシェレンディア帝国は、過去の因縁もあり、善良な隣人同士とは言い難いが、それだけの理由で参戦するとは思えない。


それに、あの国の実質的中心、ハルラム第1王子はそんな短絡的な判断をしない。豪奢な身なりで、煌びやかにしていても、その中身は削ぎ落された合理性の塊なのだ。ただ、言葉数も一緒にそぎ落としてくれたら、もっとよかったのだが。


では、そんなハルラムや彼を慕う者たちが亡き者にされたらどうだろうか。例えば、誤ってメアリーを断罪した、第3王子ルドラ・カヴァリアはあの1件で御(ぎょ)しやすいことがバレている。彼を頂に据えるようにしてやれば、戦に参加する可能性は高い。ただ、彼は本質的には気の弱い男だ。決定打には欠けるだろう。


最後のピースが揃ったのは、アンドルーがのこのこと我が国(シェレンディア)に捕縛されたことだった。


まず、自分の長が行方不明になっても探しに来ない。クラウゲンで保護していることを伝えても、使者すら送ってこなかった。そして、皇帝の身を案じて、講和に持ち込もうともしないのだ。


加えて、新しく皇帝が即位するまでがあまりにも早い。前皇帝が城で息を引き取ったならばともかく、まだ行方不明になって数日なのだ。


まるで、アンドルーの死を望むかのようにお膳立てされすぎている。取材に来た新聞記者に皇帝を保護していることも伝えたが、スッツデール帝国内では情報統制されているのか、皇帝が生きているという情報が出ることはなく、シェレンディア帝国軍に殺されたという事実とは異なる報道ばかりだった。


そこで気が付いたのだ。シェレンディア帝国がアンドルー皇帝を殺したとなれば、次に殺されるのはお前だと。その言葉で、第3王子ルドラ・カヴァリアはその恐怖で参戦してくる。敵ながら、彼の気の弱さを上手く利用しようとしたと言える。


優秀な王子なら、第1王子たちを手に掛けて、内側から自分を玉座に導き、同盟を請う相手など警戒してしかるべきだ。しかし、『あなたに可能性を感じた』とでも嘯(うそぶ)かれれば、ルドラ第3王子なら簡単に乗せられてしまう。


それに、彼の母は数年前にシェレンディアと諍いのあった土地の領主一族出身だと聞く。当然、シェレンディアには良くない感情を持っており、息子の懐疑心を助長することも容易いだろう。


だから、アンドルーの写真を撮り、彼が生きていることを証明したのだ。それを、カヴァリア連邦、ネイシタブ王国のみならず、フィストラル王国、ラウスト王国に流布した。シェレンディア帝国の陳述だけでは、疑いは晴れないからだ。


帝国大学内でのメアリーとの1件から、写真機の開発者であるジェフリーに良い感情を持ってはいなかったが、これに関しては素直に彼に感謝している。


ハルラムからは先に送った手紙で、第3王子とスッツデール帝国の密書を発見し、牢に閉じ込めていると連絡があった。これで、カヴァリア連邦とネイシタブ王国が敵に回る心配はしなくて済むだろう。

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