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転生王女は推し活したい!~推しである婚約者になかなか会えなくても、グッズ作って活動します~  作者: 東風香


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79 玉座

アンドルーが離宮に閉じ込められたのはそのすぐ後だった。母、アンドルシアが急な病で倒れて、帰らぬ人となった。それは表向きの話で、本当は彼女は息子にめった刺しにされ殺されたのだ。


その場はあまりにも残酷で、戦場慣れしていない侍女たちは入り口で失神するほどだった。大陸一美しいと言われたその顔も確認できないほどで、侍医も首を振る。唯一、胸元に残されたロケットペンダント、その中に隠されたアンドルーの小さな姿絵だけが、彼女を特定する手がかりだった。


なぜ、こんなことをしたのか。それは母と仲の良かった、いや、密会を重ねていた男、バジール・アリューシャン公爵がアンドルーを唆し、彼は感情のまま、力の限りその刃を振るったのだ。


今となっては言い訳するつもりもない。それに、母も被害者だったのだ。フィストラル王国第一主義に洗脳され、古の大国の姿を羨望した。息子を王にすべく公爵を利用するつもりが、かえって息子ともども利用されてしまったのだ。きっと、母は公爵よりもよい後ろ盾を得て、彼を切ろうとでもしたのだろう。


流刑にされるだろうか。修道院送りだろうか。アンドルーの覚悟に反して離宮への隔離されるに留まった。それも、アリューシャン公爵の根回しの結果だったようで、彼には頭が上がらない日々が続く。


そんな絶望の中、離宮には時折大きくなった息子エーデルと回復した皇后の子シュレインが訪れる。それは束の間の休息で、心安らぐ時間だった。だが、彼らから話を聞いているうちに、気づいてしまったのだ。


「ねぇ、アンドルー叔父さん、ひどいと思わない?お兄ちゃんばっかり、いつも外で遊んでるんだよ!」


シュレインはお菓子をめいいっぱい頬張りながら、文句を言う。


「喉に詰まらせるなよ。」


エーデルは賢そうな顔をしながらも、手供らしく素直に菓子に手を伸ばす。


「へぇ、シュレインはどんなことを学んでいるの?」

「ていおうがく?とか、他の国の言葉とか。」


「きっと、シュレインの方が見込みがあるんだよ。誇りな。」


エーデルはその顔に影を落としながら、愛しい眼差しを弟に向け、キラキラ跳ねる金髪を撫でる。


「う~ん?お兄ちゃんは誰からも習ってないのに本で読むだけでいろんなこと知ってるよ。」

「そんなことはないよ。」


エーデルは真実を知らなくても、何か感づいているのだろう。その顔を見ると、いたたまれない気持ちになる。


アンドルー自身は別に息子に皇位を認めてほしいと思っていたわけではなかった。ただ、愛しき息子エーデルを私やスヴェンナから奪っておいて、いつかの人形の身代わりにするだけで、息子とは微塵も思っていなかったのだ。


枯れたと思った闘志が燃え上がる。エーデルに資質がなかったならこんなことをしようなど思わなかった。幸か不幸か、誰の目から見てもエーデルにはその資質があり、年齢以下の知能を披露し、極度に幼い振る舞いをするシュレインの姿を見かけるたび、自分の心に宿る炎に薪が足されていく。


あの公爵を利用してやろう。離宮の窓から、庭園を駆け回る2人子どもを眺めながら、アンドルーは1人頷く。彼の本質は武器商人であり、平和主義の現皇帝の下では得られる利益は少ない。共謀して、現皇帝を亡き者とし、アンドルーは離宮の古びた椅子から、煌びやかな玉座に君臨することとなった。


即位し、フィストラル王国に戦争をけしかけて、満足し、油断したアリューシャン公爵を殺害する。エーデルとシュレインが敵方に隠されてしまったのは誤算だったが、仇であるフィストラル国王を屠った今、もうやり残したことはない。自分が行方不明、できれば死亡すれば、即位のためにエーデルとシュレインは表舞台に出さざるを得ないだろう。


それを自然に演出するには、シェレンディア帝国皇太子の婚約者を人質として奪うのが好都合だった。かの国の皇族は嫁いだ人間を軟禁、監禁するという噂があり、それがただの噂だとしても、妻に対する熱の入れっぷりがすごいことは夜会の場の振る舞いを垣間見て知っていた。


シェレンディア帝国皇太子の婚約者メアリーに手を出せば、あの国はいつかこちらに戦を挑んでくるだろう。メアリーを嫁がせる方法は苦労したが、フィストラル国王のあの性癖に、シエナ王妃輿入れ時の噂。賭けではあったが、噂は本当だったようで数日足らずでメアリーは嫁いできた。


運はこちらに向いて来ている。敵方、前皇帝の意志を継ぐ者たちはシュレインを即位させようとするだろう。そこを、キリアンたち身内の人間の手はずによって、エーデルに皇位を継がせる予定だった。


だが、公爵が死してなお、息がかかった人間が動くとは予想していなかった。それも自分の1番心の許した人間から。キリアン、お前はいつから――。


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