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転生王女は推し活したい!~推しである婚約者になかなか会えなくても、グッズ作って活動します~  作者: 東風香


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32 連邦での暮らし

メアリーの希望で、王妃教育を受けている3人の令嬢には事情を話しておくことにした。本当の結婚でもないのに、勘違いさせて、熱心に勉強をしている令嬢たちの意欲を削いではいけない。


外での公務の際にハルラムに付き添うこともあったが、彼が王宮内で執務をする時にはただ与えられた部屋でお茶を飲み、本を読むくらいしかすることがない。


それに、メアリーは居候の身であることも気が引けて、令嬢たちの王妃教育のお手伝いを申し出たのだ。


連邦の教育係たちは恐縮していたが、私も1人でずっと過ごすのは寂しいのよ、と彼女たちにラウスト王国語や歴史について勉強を深めさせる名目で、お茶会をセッティングしてもらった。今日はその記念すべき第1回目となる。


カラッと晴れた青空の下、涼し気なレースのドレスを纏ったメアリーは、石畳に足を取られぬよう慎重に歩を進める。


「あちらがメアリー王女かしら。」

「かわいらしい先生ね。」

「うちの末の弟と同じ年齢のように見えるわ。」


メアリーの姿を認めると、3人が次々に声を上げる。彼女たちを一瞥し、王宮の庭にある東屋にメアリーは足を踏み入れて、挨拶をする。


「ごきげんよう。私はメアリー・フォン・ラウスト、ラウスト王国の王女です。1か月の間、あなた達の教育をお手伝いさせていただきますわ。」


目の前にいる彼女たちは左から深緑、桃色、黄色のドレスを身に纏い、皆、似たような黒髪を結い上げている。黄色のドレスの彼女がおずおずと手を上げた。


「あの、メアリー王女様は10歳にもなりませんよね。」

「メアリーで結構です。もう13歳になりましたわ。」


彼女たちはメアリーの年齢を聞いて、目を点にする。濃い6つの瞳は、メアリーと互いを見て、視線が定まらない。


「本当に13歳?」

「私たちと2歳しか変わらないの?」


いくらメアリーが年下だからとは言え、王女教育の場で気軽に他国の王女に声をかけるわ、すぐに大口を開けて語り出すわで、ハルラムがまだ表に出せる状況ではないと語っていたことに納得する。


「みなさん、公式の場で淑女はそうした態度はいただけませんわ。」


メアリーは広げた扇子を口元に当てて、首を振る。その様子に4人の間にはピリリとした空気が流れる。


「初日ですし、まあよいでしょう。ラウスト王国の歴史を教えて差し上げます。ですが、今からラウスト語のみでお話しくださいね。」


◇ ◇ ◇


講義の後はしばしの休憩時間となる。メアリーは新しく入れなおしてもらったアイスティーを口に含む。添えられたミントの香りが鼻から抜けて、カラカラに乾いた喉に染み渡る。


「先ほどは失礼いたしました。王国の王女であるメアリー様にご講義いただけると、その背景も説明してくださるので理解が深まりますわ。」


深緑のドレスを纏った彼女は、エカ・リヒャインと言い、先ほどはメアリーの登場に興奮していたが、少し話をしてみれば18歳らしく言葉遣いの節々に知性を感じさせる。切っ先の長い目元に、厚い唇。妖艶さを兼ね備えたお姉さまと言ったところだろうか。


「えと…あの…、メアリー様、私に、私は、最後に教えていただいたところが、よくわかりません。」

「それなら、次回は復習してから進めますわね。」


メアリーが微笑みながらそう答えると、桃色のドレスを纏った彼女は座ったまま軽く礼をする。彼女はアイシャ・カミールと言い、15歳の愛らしい少女だが、ラウスト語はまだ不慣れだ。

ただ、王国の歴史に関わる英雄の話や戦略的な背景については誰よりも食いついていたので、勉学よりも運動の方が向いているタイプなのかもしれない。


「神話の時代のお話はあまり存じあげませんでしたわ。」


黄色のドレスを纏った彼女はラクシュミー・トロンドア、16歳で、家は手広く事業を広げているらしく、各国家間の事情にも詳しい。質問の内容は鋭く、ここ直近の歴史であれば彼女の方が詳しいかもしれない。


「振る舞いも勉強になりますわ。」

「あら、ありがとう、エカ。私はあなたのような艶のある振る舞いが羨ましいけれど。」


「私は、たくさん質問をしに行きます。体は動かすのは、得意なので、メアリー様を助けられます。呼んで、ください。」

「本当?何かあれば助けて頂戴ね、アイシャ。」


「急遽、連邦に1か月滞在されることになったとお伺いしておりますから、必要なものがあればうちで管理している商人を王宮に呼びつけてください。良いものを持ってこさせますわ。」

「抜け目がないわね、ラクシュミー。でも、その姿勢が素晴らしいわ。」


メアリーと令嬢たちが会話を楽しんでいると、遠くで鐘の音が聞こえる。驚いた鳥たちが、一斉に飛び立ち、少し柔らかくなった日差しに影を落とす。


「では、次回は1週間後にお会いしましょう。ご質問があれば、いつでも客間におりますからいらっしゃってね。」


こうして連邦での日々は穏やかに過ぎていくと思いきや、メアリーは事件に巻き込まれるのであった。

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