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転生王女は推し活したい!~推しである婚約者になかなか会えなくても、グッズ作って活動します~  作者: 東風香


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23/67

23 取引

本日は2話投稿です。こちらは2話目になります。

「ほう、鉄道事業とな。それは如何なるものか。」


少女のお願いなどたかがしれていると思っていた皇帝は、メアリーの説明を聞いたとたん、その貼り付けたような笑顔をやめ、まるでこちらを値踏みするような表情を見せる。


「確かに実現できれば素晴らしいな、だがリスクを冒して投資するメリットは帝国にあるのか。」

「恐れながら、父上――。」

「今はメアリー嬢に聞いている。」


エルドレンの言葉を遮って、皇帝は冷たく言い放つ。皇帝はメアリーにも優しさを見せないが、裏返して

見れば、皇帝を商談のテーブルに載せることができたのだ。


推しにすぐ会いに行くために、そして婚姻した後も、きっと戦線のために国内を駆け回るはずのエルドレンのもとへいつでも駆け付けられるように、メアリーは閉じていた瞼を上げて、大きく口を開いた。


「シェレンディアは雪深い国、冬になれば道は残雪で轍が深くなり進みにくくなります。そもそも雪で馬車を走らせることすら難しい地域もあります。」


エルドレンと同じ色をした皇帝の青い瞳が鋭くこちらを見やる。


「先ほどお話しした鉄道事業では、金属製の作られた(わだち)に鉄の箱を滑らせるように移動させるため、道が進みにくいという心配はなく、動力は熱源を予定しておりますから、雪でも走らせることが可能になりますわ。」

「それは帝国に必要なのか?冬の民は家屋にこもり、職人として働いているのだぞ。」


皇帝の指摘を受け、エルドレンは心配そうにメアリーを見つめてくる。横にずらりと並ぶ大臣たちは興味深そうにしながらも、皇帝の指摘に同意しているようだ。メアリーは怯むことなく、話を続ける。


「いいえ、必要であることは陛下がよくご存じのはずです。皇帝陛下から帝国大学シモノフ教授に大雪でも進むことのできる、馬を必要としない馬車の開発を依頼されていたと聞いておりますわ。」

「……あのシモノフから聞き出したのか。大したものだな。」


シェレンディア帝国に到着した後、メアリーはジェフリーとともに帝国大学に向かったのだ。疲れた体を引きずってでも、シモノフ教授をお茶にお誘いしておいてよかった。もともと、鉄道の動力源を開発したのは陛下の依頼あってのことだったのだが、馬車の代わりにするには機関部が重く、大きすぎたのだ。


「突き詰めればまだ穴はある。だが、此度の礼として、メアリー嬢への投資として支援を引き受けてやろう。」


皇帝は満足したように目じりを下げて笑った。


「ありがとうございます。」


メアリーは胸に手を当て、礼を取った。


◇ ◇ ◇


大広間を退席して長い廊下をメアリーが進んでいると、後ろから小鳥のような美しい声が聞こえる。


「あなた本当にエルドレンと婚約していいのかしら?」

「どういうことでしょうか。」


メアリーが振り返ると、侍従やメイドを付けずに皇后が一人で立っていた。彼女は急ぎ足で追ってきたのか、少々息が上がっている。普段の皇后はこうした突飛な行動をされないのか、廊下にいる二人を見て使用人たちは驚いた後、顔を引っ込めて去っていく。


「王族同士の婚姻だから愛とか恋とかは言っていられないでしょうけど、大丈夫なの?」


皇后はメアリーに小声でささやいてくる。うちの息子に手を出してくれるなと言うことだろうか。

メアリーが押し黙っていると、彼女ははっとした顔をして、話を続ける。


「商人たちのことについては怖い思いをさせましたね。彼らを私に紹介した貴族は処分しておきましたから、もう心配しないでね。」

「いえ、むしろお気遣いいただいたのにお騒がせしてしまって……。」


確かに皇后が呼び寄せた商人ということで、メアリーも騎士たちも油断してしまったが、皇后にその責任を問うのは酷だろう。それに、未来のお義母様とは仲良くしておきたい。


「先ほどのエル様との婚約の件については、むしろ早く婚姻できればよいのにと思うばかりですわ。」

メアリーは頬を染めて、はにかんだ。

「大丈夫?脅されている訳ではないのよね。」


はて?何のことだろうか。メアリーはエルドレンに内緒で勝手にぬいを作ったり、姿絵を飾ったり、それをガラス板に描かせてスタンド型のアクスタもどきを制作しているが、バレていないはずだし、脅されてもいない。これもシェレンディアジョークなのだろうか。まだまだ、ポイントがわからない。


「たぶん、大丈夫だと思います。」


困ったメアリーは苦笑いした。


「私のようになる前に、今ならまだ間に合うからね。」


皇后はメアリーの両手を取ると力強く握り、銀の美しい髪の奥から見えるすみれのような瞳を向けてきた。


「それは―。」

「皇后様!そちらにいらしたのですか。」


いつの間にか近づいてきた侍従のセドリックの言葉に、メアリーの疑問の声は打ち消されてしまう。彼は皇后に耳打ちをすると、彼女は


「ごめんなさいね。もし何か困ったことがあったら私に手紙を頂戴ね。」


と言い残して、赤い絨毯の敷かれた廊下を去って行ってしまった。


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