表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せの在り処  作者: yukko
PR
80/87

土屋華蓮と寒川翔

華蓮は最高裁まで闘うつもりだった。

数馬の離婚を知って、まだ挽回のチャンスがあると思った。

ある日、面会に来た翔が「数馬が再婚した。」と聞いた時、絶望の淵に追いやられた気がした。


「誰と? 何処の令嬢と再婚したの!」

「忍さんだよ。」

「し!………あの女………あんなっ!」

「華蓮、もう無理だよ。

 数馬はね、忍さんを火事の中から救ったんだ。

 自分が大怪我しても……忍さんを守ることだけしか考えていなかったんだ。

 忍さんを愛していると気付いてからの数馬は変わったんだ。」

「嘘よ………嘘に決まってるわ!」

「華蓮、君はもうとっくに気付いてるんだろう。

 気付いたから忍さんを殺害しようとした。違うか?」

「翔! あんたも忍が好きなの?

 あの女、どんな風に!」

「僕は忍さんを愛してないし、会ってない……というか会う資格すらない。」

「愛してないって言うくせに、どうして擁護するの。」

「心が綺麗な人なのは変わってないから……。」

「なんで、そんなはず無いわ。誰もが闇を抱えているのよ。」

「忍さんには闇など無いよ。

 ただ、ひたすらに数馬を愛しただけなんだ。

 君は、そんな風に人を愛したことあるか?

 僕は無かったよ。」

「愛しても……愛されなかったわ。」

「うん、僕も愛しても愛されなかった。」

「……そう。」

「愛してるよ、華蓮。君だけを大学の頃から、ずっと愛してる。」

「嘘よ……だって、翔は私と数馬のこと応援してくれてたじゃないの。」

「愛してても愛されないと分かってたら、愛した人の恋の成就を願うしかない。

 それしか途が無かった。」

「………信じないわ。」

「信じて欲しくて言ったんじゃない!

 未来を見て欲しくて言ったんだ。

 数馬に執着していたら未来が開けない。

 このまま最高裁まで闘って、無駄に時間を過ぎさせて、それでいいのか?

 本当にそれでいいのか?」

「…………仕方ないから……。」

「数馬は諦めろ! 数馬は絶対に君を許さない。

 だから、無理なんだ。

 …………数馬は忍さんと未来に向けて歩き出したんだ。

 華蓮も未来に向けて歩んで欲しい。」

「誰にも分からないわ。」

「そうだね、誰にも分からない。」


面会室を出て行く華蓮に翔は声を掛けた。


「華蓮が出て来るまで何年でも待ってるから!

 僕は迎えに来るから!」


返事をせずに華蓮は面会室を出た。


◇◇◇◇

泣いてばかりいた華蓮が泣かなくなった頃、最高裁まで闘う意欲もいつの間にか無くなっていた。

二審である高裁の判決を経て、上告しないと決めたのだ。

結審した華蓮の裁判。

刑期が決まった。

塀の中で数年暮した。

刑務所に入ってからも翔は度々手紙を出した。

返事の有無に関わらず、数馬の子どもが生まれたことも書いた。


刑期を終えた日、門を出たら車が止まっていた。

車から翔が出て来た。


「華蓮、約束通り迎えに来た。」

「…………翔!」


翔が広げた腕の中に華蓮は飛び込んで行った。

翔と華蓮が結婚したことは陽への手紙で、新と数馬も知った。

翔の家族親族の反対は大きかったが、翔は「後悔したくない。」と言い、周囲の反対を押し切って結婚した。

華蓮からの忍への謝罪の手紙は翔から何度も届いたが、数馬が忍に「返事など出さなくてもいい。」と言った。

忍は読んでも、どうしても許すことが出来なかった。

許せなかったので、返事を出さなかった。


華蓮は妊娠出来なかった。

翔も華蓮も身体に問題は無かったが、恵まれなかった。

華蓮は「罪深いから……これが私への罰なのね。」と翔の腕の中で呟いた。

翔は優しく「二人で一生掛けて償おう。」と言った。

「うん。」と頷く華蓮に、あの鋭くて深い闇のような眼では無い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ