加害者達
忍を恐怖のどん底に陥れたあの事件の加害者達は、全員逮捕されて裁判を受けた。
全員が刑務所に入った。
あの日、忍の胸を小さなナイフで刺した男。
彼は別件で逮捕された。
また他の人を刺したのだ。
路上での行為だった。
ただ、前から歩いて来た女性を刺したのだ。
忍の時より刃渡りが長いナイフだった。
精神鑑定を被告側は要求したが、責任能力アリという精神鑑定結果だった。
自首した一人を除く全員が最高裁まで争ったが、刑期は短くならず、ましてや無実判決を勝ち取ることは出来なかった。
刑が決まって刑務所に入っている間だけが被害者が安心出来る時間だ。
いつ出て来たのか分からない。
出て来て住む場所を知る術がない。
忍は今でも不安だ。
街を歩くのが怖くて仕方ない。
それでも勇気を振り絞って歩く。
裁判中だけは安心出来た。
拘置所に入っているからだ。
恐怖が押し寄せる時、忍の傍に数馬が居て抱き締めてくれる。
それだけで忍は安心出来た。不思議だ。
加害者達が心から反省してくれたら、もう二度と人を殺めることに繋がるような行為をしないと心に決めてくれれば……それが被害者に分かれば……少しは安心して暮らせるのだろう。
――本当に死ぬのが怖い人は人を殺めることが出来ない――と言う。
何故、人を殺めてみたいと思う人間が居るのか忍には分からないが、一つだけ分かることがある。
人を殺めてみたいと思う人間は、自分の死を恐れることから逃げているのではないかと……。
だから、死刑と求刑されてから、急に死ぬのが怖くなるのではないかと……そう思う。
忍は普通に育つことの難しさを感じている。
そして、思う。
⦅あの人達が出て来たら……怖いなぁ……そう思うだけで怖い。⦆




